日本のコンテンツを世界へ――中華圏では、日本の音楽であるJ-POPやアニメソングなどの認知度も高く、現地ライブを実施するアーティストもここ数年増えている。コロナ禍の今、海外に実際に行くことはできないが、前編「日本のアーティストを海外へ 目指せ『BTS』、ネットに活路」のように海外に向けた配信も増えてきた。ソニー・ミュージックエンタテインメントから現在ライブエグザムに出向中で、長く、アーティストの海外展開を手掛ける関根直樹氏に、中華圏での展開について寄稿してもらった。

<前編「日本のアーティストを海外へ 目指せ『BTS』、ネットに活路」はこちらから>

 日本人アーティストの海外公演のブッキングエージェントを始めてかれこれ10年になる。アジアに特化して考えると、トレンドの国・地域は台湾から中国へと移ってきた。転機が訪れたのは、1990年代に入ってからだ。日本のトレンディードラマが視聴され主題歌が認知されていった。海賊盤で聴かれ、カラオケで歌われていったのだ。

 だが、それも長くは続かなかった。日本の音楽業界が積極的に中国へ仕掛けていかなかったことに加え、新たな潮流である韓国のドラマ、映画、そしてK-POPが台頭してきたのだ。K-POPの華やかな曲調とビジュアルの勢いは瞬く間に中国大陸でも人気になった。そして追い詰められるかのようにJ-POPのシェアがじわじわと減っていった。ところが2016年、韓国が米国製のTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)の配備を決めたことがきっかけとなった経済制裁で、K-POPアーティストの中国での興行が禁止されてしまった。中国でのJ-POP市場にはこれが追い風となった。

 台湾は日本の音楽、いわゆるJ-POPの海外市場では10年代半ばまで最大だったのだが、日本の音楽業界による中国への積極的なプロモーション、中国の経済成長とそれに伴う国民の所得増により、10年代後半から日本人アーティストの興行では中国が取って代わるようになった。台湾と中国でそれぞれ最も日本人アーティストの公演数が多い都市は、台北と上海。その年間公演数は、それまで台北に軍配が上がっていたのだが、18年についに逆転し上海が海外における日本人アーティストの公演数が最大の都市となった。

台湾と中国の音楽ライブ市場の違い
台湾と中国の音楽ライブ市場の違い

 私はこれまでアニソン、アイドル、J-ROCK、J-POP、ビジュアル系、ジャズなどジャンルにかかわらず30組以上の日本人アーティストをアジアに送り込んできた。出張は年間10回以上、ひと月に1回程度は出張してきた計算になる。それが20年の新型コロナウイルスの災厄で、初めて出張ゼロという年になりそうだ。コロナ禍で日本の音楽業界は深刻な打撃を受けてきたが、6月ごろから徐々に無観客配信ライブが行われ、最近では配信と実動員を組み合わせたハイブリッドな公演が頻繁に実施されている。会場収容人数の100%が認可されず、主催者にとって収支面では不本意な状況ではあるが、公演が回復基調にあることは望ましい。

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