「天使のはね」で知られるランドセルメーカーのセイバン(兵庫県たつの市)は、市場の縮小に伴う事業多角化の1つとして、ビジネスバッグ市場に参入。ランドセルでノウハウの蓄積がある革バッグではなく、あえてナイロンバッグ市場に挑んだ理由は。

新ブランド「モノリス」のラインアップはバックパック、2WAYバッグ、トートバッグ、ショルダーバッグの4タイプ
新ブランド「モノリス」のラインアップはバックパック、2WAYバッグ、トートバッグ、ショルダーバッグの4タイプ

 少子化による子供向け商品市場縮小を見据え、「大人のピアニカ」(ヤマハ)、「大人の上履き」(ムーンスター)など、大人向け市場の開拓に挑戦するメーカーは多い。ランドセルメーカーのセイバンは2020年11月1日、大人向けバッグの新ブランド「モノリス」の展開をスタート。19年に創業100周年を迎えた同社だが、ランドセル以外の商品は今回が初挑戦となる。

「モノリス」のデイパックを手に持つセイバンの泉貴章社長(右)と、ブランド開発を担当した中室太輔ディレクター(左)
「モノリス」のデイパックを手に持つセイバンの泉貴章社長(右)と、ブランド開発を担当した中室太輔ディレクター(左)

 「26年の小学校入学児童数は20年と比べてさらに1割ほど減少することが予測され、ランドセル業界は大きな変革期に差し掛かっている。『モノリス』は国内の多角化事業の1つで、弊社にとって大きな挑戦。21年から22年にかけて認知拡大をしていき、23年から24年に向けて収益化を実現して、今後はモノリス事業をランドセル事業に次ぐ柱として育てていきたい」と、セイバンの泉貴章社長。

 製品ラインアップは、バックパック、2WAYバッグ、トートバッグ、ショルダーバッグの4タイプ。各タイプは「スタンダード」を基本に、オフィスワーク用の「オフィス」、出張にも使える「プロ」で容量や機能、素材がグレードアップしていく。サイズやカラー違いも含めると合計31種類を展開し、価格は最も手ごろなのがショルダーバッグのサコッシュで税別1万2000円、最も高額なのは2WAYバッグ(プロ、Lサイズ)で同4万4000円となっている。

 ブランド開発を担当した中室太輔ディレクターは、「ランドセルの『背負う』という特徴を大切にしたかったので、モノリスのラインアップはバックパックが起点。ランドセルの重要なポイントである合理性、機能性、耐久性を追求し、開発に取り組んだ」と語る。

「バックパック」(スタンダードが2万2000円、オフィスが2万8000円~、プロが3万6000円~。税別、以下同)
「バックパック」(スタンダードが2万2000円、オフィスが2万8000円~、プロが3万6000円~。税別、以下同)
「2WAYバッグ」(スタンダードが3万円、オフィスが3万4000円~、プロが4万円~)
「2WAYバッグ」(スタンダードが3万円、オフィスが3万4000円~、プロが4万円~)
「トートバッグ」(スタンダードが2万円、オフィスが2万6000円、プロが3万8000円)
「トートバッグ」(スタンダードが2万円、オフィスが2万6000円、プロが3万8000円)
「ショルダーバッグ」(スタンダード/サコッシュが1万2000円、オフィス/PCが1万6000円~)
「ショルダーバッグ」(スタンダード/サコッシュが1万2000円、オフィス/PCが1万6000円~)

売りはオーバースペックなほど機能を搭載した“内部”

 モノリスのデザインは非常にシンプルで、一見しただけでは既存のデイパックと違いが分からない。「デイパックの形は使いやすさやジャケットスタイルにもシャツスタイルにもマッチすることなども含めて、ほぼ完成されている。だからそこから大きく変えたくないと考えた」(中室ディレクター)。

 訴求要素は内部にあるという。「バッグは内部にも触れることが多く、縫い目や端材が見えないような仕上げにするなど、見えない部分のディテールも美しく仕上げている。現代はちょうどいい程度の機能よりも、ちょっとオーバースペックが求められていると思うので、日常使いには過剰かなと思うほどの機能を内部に詰め込んでいる」(中室ディレクター)。

バックパックの内部。さまざまな所にポケットがある
バックパックの内部。さまざまな所にポケットがある
全商品に充電コードを通せるホール付きのマグネットポケットがあり、スマートフォンなどのモバイル機器への親和性も重視
全商品に充電コードを通せるホール付きのマグネットポケットがあり、スマートフォンなどのモバイル機器への親和性も重視

 また、なぜランドセルで扱い慣れている革ではなく、ナイロンバッグに挑戦したのか。中室ディレクターは、ナイロンバッグは本革ほど思い入れが強い消費者が少なく、「強いて言えばこれ」と消去法で選んでいる人が多いと見ている。「シンプルなデザインを求めているビジネスパーソンは多いが、そういうバッグは現在のビジネスバッグに求められるPCやガジェットをうまく収納する機能がないことが多い。だからシンプルなデザインで内部の収納機能を高めれば、必ず成功すると考えた」(中室ディレクター)。

小さくて“濃い”セレクトショップから、口コミで広げていく

 販売開始後は、自社ECサイト、オンラインストアでの販売からスタートし、順次取扱店舗を増やしていく予定。将来的には直営店も視野に入れているが、当面はセレクトショップでの販売を重視する。これまでは発信者であるブランドと購入者の間に媒体があり、媒体によって製品の情報が広がるパターンが多かったが、今はセレクトショップのバイヤーやディレクターなどがSNSで大きな影響力を持っているという。そうした人たちに商品の魅力を理解してもらい、お客に直接情報を届けてもらう方法を探っている。

サコッシュがビジネスバッグに?

 4タイプの中では商品開発の軸であるデイパックが本命と言えるが、より新しさを感じたのは、ショルダーバッグのサコッシュタイプ。ノートPCと紙資料など必要最低限のものが入るミニマムな収納容量だが、肩に斜め掛けしてコートやジャケットの中に使用でき、ショルダーストラップを外せばクラッチバッグやバッグインバッグとしても使用できる使い勝手の良さが重宝されそうだ。

ノートPCと紙資料など必要最低限のものが入るミニマムな収納容量で携帯性が高いサコッシュ
ノートPCと紙資料など必要最低限のものが入るミニマムな収納容量で携帯性が高いサコッシュ