清酒メーカーの日本盛(兵庫県西宮市)は2020年11月2日、50代以上の女性に向けたメークブランド「Que serasera(ケセラセラ)」の商品販売を開始した。同社では1987年から基礎化粧品のブランドを展開しているが、メークブランドを加えることで3本目の事業の柱にしたい考えだ。

日本盛のメークブランド「ケセラセラ」には、清酒メーカーならではの美容成分が配合されている
日本盛のメークブランド「ケセラセラ」には、清酒メーカーならではの美容成分が配合されている

女性人口の半数を占める50代以上がターゲット

 1889年創業の日本盛は130年の歴史を誇る老舗清酒メーカーだが、一方でスキンケアブランド「米ぬか美人」で基礎化粧品を33年以上も販売している化粧品メーカーでもある。主幹事業である酒造りに使われる日本酒酵母はビール酵母やパン酵母と比べて保湿力が高いということで、同ブランドの基礎化粧品には日本酒酵母エキスなど清酒メーカーならでは美容成分が配合されている。

 日本盛 通販事業本部長の廣岡桂寿氏によれば、新たに立ち上げたメークブランド「Que serasera(ケセラセラ)」は、2020年の創業130周年事業として社内公募したアイデアの中で最優秀賞を取った提案だったとのこと。同ブランドには日本盛が「米ぬか美人」で培ってきたさまざまなノウハウが生かされているという。

 新型コロナウイルス感染症の影響で外出の機会が減り、化粧品が売れなくなったといわれる中、日本盛があえてメークブランドを立ち上げた理由は大きく3つある。1つは、20年には50代以上が日本の女性人口の約半数を占めるという国立社会保障・人口問題研究所のデータ(2017年推計)。もう1つは、若い女性のための化粧品は多いが、50代以上の女性に向けたものは少ない現状だ。日本盛 通販事業部課長の河村明子氏は「(メークブランドとして市場に参入する際に)50代以上の女性をターゲットにすれば、十分に商機があると考えた」と話す。

日本盛 通販事業本部長の廣岡桂寿氏(左)と通販事業部課長の河村明子氏
日本盛 通販事業本部長の廣岡桂寿氏(左)と通販事業部課長の河村明子氏

 そしてケセラセラの商品開発に生かされたのが3番目の理由だ。60~70代の女性が約60%を占める「米ぬか美人」の利用者から寄せられたメークについての悩みの上位は「眉が上手に描けない」「アイラインがうまく引けない」「シワに入り込んだファンデーションが目立つ」の3つだという。そこで日本盛では、有識者の研究などを参考に、年齢を重ねるにつれてメークがうまくいかなくなる理由を分析。加齢によって人の顔が平面的になる、肌につやがなくなるなど、老けて見える特徴を突き止めた。

 「驚いたのは、年を重ねると骨そのものが縮むということ。梅干しを想像すると分かるが、最初は張りのあった表皮が乾燥するとシワシワになり、そのとき中の種も縮んで小さくなる。それと同じことが人間にも起こる」と河村氏。その結果、余った皮膚がたるんだり、シワになったりするわけだ。

 ケセラセラの商品開発にあたっては、色を重ねるのではなく、光を拡散させてシワや毛穴を目立たなくするように工夫したという。またシニア・シルバー世代を専門にしているメークアップアーティストに監修を依頼し、太い線と細い線を描き分けられる楕円形の芯を採用したアイブロウや、柔らかい芯を採用したアイライナーなどを開発。プロのメークを自分で再現できるようにした。さらにブランドサイトでは、ケセラセラの利用者に向けて「ハッピーメイク術」と題したハウツー動画も公開している。

 日本盛が3本目の事業の柱となることを期待するメークブランド、ケセラセラのラインアップは、ベースメークからポイントメークまで全11品目27品種に及ぶ。ベースメークは、くすんだ肌色を明るく見せる「色つきUV下地クリーム」(税込み5500円)など全5品目13品種。またポイントメークは、平面的になった顔にメリハリを付ける「チーク」(税込み1100円)など6品目14品種となっている。

メークアップアーティストの船津有史氏(左)は、年間1000人以上のシニア・シルバー世代の女性を“美再生”させているリバイバルメークの第一人者だ
メークアップアーティストの船津有史氏(左)は、年間1000人以上のシニア・シルバー世代の女性を“美再生”させているリバイバルメークの第一人者だ

(写真提供/日本盛)

この記事をいいね!する