新型コロナウイルス感染症の世界的な流行でインバウンド需要が見込めず、苦境に立たされているホテルや旅館は少なくない。そんな中、国内需要に切り替え、独自にキャンペーンを実施したところ、瞬く間に満室となり、活気を取り戻している宿泊施設がある。東京・浅草にある「茶室ryokan asakusa(ちゃしつりょかん あさくさ/以下、茶室ryokan)」だ。

客室で夕食をとる宿泊客。アールの入り口は、くぐるようにして入る茶室の「にじり口」がモチーフ
客室で夕食をとる宿泊客。アールの入り口は、くぐるようにして入る茶室の「にじり口」がモチーフ

 2019年9月開業の茶室ryokanのメインターゲットはインバウンド(訪日外国人)で、宿泊者の約8割が外国人旅行者だった。20年1月までは平均客室単価は3万2000円、稼働率は約70%。経営は順調だったが、新型コロナ禍で2月以降はキャンセルが続出し、3月の予約はゼロ。5月は1カ月間の休業を余儀なくされた。当面、インバウンド需要は見込めないと判断し、国内向けの新サービスを検討。感染状況が非常に厳しかった8月に、都民限定の全室半額キャンペーンを実施した。都民限定にしたのは、「GoToトラベルキャンペーン」で東京都が対象地域から除外されたからだ。

 何もせず黙っていては、予約は入らない。知名度を少しでも高めようと企画した、都民限定の全室半額キャンペーンをSNSで発信。これがホテル情報を発信しているインフルエンサーの目に留まり、コメント付きでリツイートされたことをきっかけに、「わずか2日間で5割の部屋の予約が埋まり、最終的に8月は満室となった」と、茶室ryokanのオーナーで不動産会社レッドテック(東京・中央)の石川裕芳社長は話す。狙い通り知名度を高め、9月の稼働率は約75%に達した。

 キャンペーンが成功した大きな要因は、国内客にとっても魅力的な価値があったからだ。茶室ryokanは約86平方メートルの狭小地に建てられた6階建て都市型のホテルで、最も狭い客室はわずか5畳。狭さが魅力となるように、茶の湯の精神や日本文化を体験できる「茶室」というコンセプトでブランディングを行っている。茶室を現代的に解釈した小さな空間で、非日常が味わえる──そんな茶室ryokan独自の魅力が評判となり、利用客の増加につながった。

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