日本コカ・コーラが2020年9月に発売した「ミニッツメイド ごろっと果実」。そのパッケージには、店頭で見かけると思わず目を疑ってしまうようなインパクトがある。商品名が上下逆さまに書いてあり、印刷ミスではないかと思う人もいるかもしれない。しかし、これには深いわけがあった。

パインとピーチの2つの味があり、裏と表では表示内容もデザインも少しだけ違う。全体に四角いドットをちりばめ、1センチメートル角の果肉を表現している。関東地区の一部店舗だけの限定販売で、今後の展開は未定
パインとピーチの2つの味があり、裏と表では表示内容もデザインも少しだけ違う。全体に四角いドットをちりばめ、1センチメートル角の果肉を表現している。関東地区の一部店舗だけの限定販売で、今後の展開は未定

 この商品には1センチメートル角の「ザク切り果実」が入っており、果実の食感をしっかりと楽しめるのが大きな特徴だ。同社にはここまで大きな果肉を入れた商品は過去にない。2013年ごろに開発がスタートし、新しい技術と製造機械を開発しテストを繰り返しながら、並行してパッケージの開発も行った。ボトルの形状も、この商品のために開発したオリジナルで、口径の大きなキャップを採用し、大きな果肉が出やすいようにした。しかし、問題は別のところにあった。今までにないくらい大きな果肉を入れたため、軽く振った程度では果肉がボトル口まで上がってこず、食べられないのだ。

 「よく振って飲んでくださいと小さい字で書いてあっても、それに気づかずに飲んでしまい、後からあれっと思うことはよくあるなと、一消費者として日ごろから感じていた」と、開発を担当した日本コカ・コーラマーケティング本部シニアマネージャーの高木正子氏は語る。

 「商品の特徴である大きな果肉が入っていることと、おいしく飲むためによく混ぜるということの2点を、どうやって店頭で瞬時に伝えられるか。ボトルをひっくり返すぐらいの勢いで大きく混ぜなければいけないという点を逆手にとって、文字を逆向きにするというコンセプトにたどり着いた」(高木氏)

好き嫌いがはっきり分かれる

 開発の途中で社内ヒアリングをしてみると、好き嫌いがはっきり分かれる商品で、「どちらでもない」が非常に少なかった。高木氏はこれにも手応えを感じたという。

 「最初から『好き』と反応した人の好感度が高かった。一方で『分かりにくい』などネガティブな反応をした場合も、粒を浮き上がらせるために逆にしてから飲むというコンセプトを伝えると、一気にポジティブな印象に変わることが多く、コンセプトに確信が持てた。今までにない中身の商品だから、今までにないデザイン上のトライアルをしようと社内を説得した」(高木氏)

 もう一つ、デザインで重視したのが売り場での見え方だ。この商品は270ミリリットルで実売価格が200円前後。清涼飲料としてはやや高めで、スーパーなどでは乳製品や果汁製品が並ぶ「チルド飲料棚」に並ぶ。この棚は紙パック製品が主流で、色とりどりの果物が描かれているパッケージが多い。当初は高級感を打ち出した正統派のラベルをデザインしたが、それでは棚の中で埋もれてしまうという指摘を受けて方針転換。ゼロからデザインし直したのが今の“逆さまパッケージ”だ。

初期段階のデザイン案。果物のイラストをメインビジュアルとし、高級感を打ち出したデザインだった
初期段階のデザイン案。果物のイラストをメインビジュアルとし、高級感を打ち出したデザインだった

どっちを上にするのが正解?

 ラベルの細かい部分を見ると、いろいろな遊びがちりばめられていることに気づく。ごろっと果実の「ご」の字が、ひっくり返すことを表現する矢印になっていたり、文中の「さかさま」の文字だけが逆さまになっていたりする。売り場に埋没しない、ユニークなパッケージが出来上がった。

 ところで、この商品はどうやって棚に並べればいいのだろうか。キャップを上にする? それとも文字を正しく読めるようにする? メーカーとしては、倒れたりせず安定して陳列できるよう、キャップを上にすることを推奨している。ただ、それが唯一の正解ではない。

 都内のあるコンビニでは、ボトルを果物かごに入れ、パイナップルのサンプルと一緒に展示することで、読みやすく、しかも果実がごろっと入っている商品特徴をアピールする陳列をしているところもある。それぞれの現場で熱心にVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の工夫に取り組んでいるようだ。この商品のパッケージデザインそのものに、「これを使って面白い見せ方をしてやろう」と、人を動かす力があるに違いない。

都内のあるコンビニの商品陳列の様子。果物かごに入れ、パイナップルのサンプルと一緒に展示したり、果物そのもののように人工芝の上に置いたりと、工夫はさまざま
都内のあるコンビニの商品陳列の様子。果物かごに入れ、パイナップルのサンプルと一緒に展示したり、果物そのもののように人工芝の上に置いたりと、工夫はさまざま

(写真提供/日本コカ・コーラ)


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