ブランディング事業を手掛ける米インターブランドは2020年10月20日、グローバルのブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2020」のトップ100を発表。1位はAppleで8年連続。コロナ禍がランキングにどのような影響を与えたのか。インターブランドジャパン(東京・渋谷)の並木将仁社長兼CEOに聞いた。
同ランキングはグローバルに事業展開を行うブランドを対象に、そのブランドが持つ価値を金額に換算してランキング化するもの。財務分析で算出された将来の経済的利益のうち、そのブランドによってもたらされた利益を抽出し、ブランド強度分析によって利益の確実性を評価しているという。2000年にスタートし、20年で21回目となる。
1位はAppleで8年連続。Amazonが2位、Microsoftが3位。Samsungが5位で初めてトップ5にランクインした一方、13年から2位だったGoogleは4位となった。
コロナ禍もランキングに大きな影響を与えている。ブランドの成長率ではAmazonがトップ(前年比プラス60%)で、Microsoft(同53%)、Spotify(同52%、70位)、Netflix(同41%、41位)、Adobe(同41%、27位)が続く。オンラインサービスブランドが伸び、2桁成長をしたブランドの6割がサブスクリプションのビジネスモデルを採用。また、PayPal(同38%、60位)、Mastercard(同17%、57位)、Visa (同15%、45位)は感染拡大の影響から電子決済への急速な移行が進んだことや、ロックダウンの中で地元のビジネスをサポートするプログラムを迅速に展開したことにより、家計や資本へのアクセスを提供する信頼できるブランドとして評価しているという。
ソーシャルメディアとコミュニケーションのブランドも躍進し、Instagram(19位)、YouTube(30位)、Zoom(100位)が初めてトップ100にランクイン。外出自粛下で生活により欠かせない存在となった物流も、UPS(24位)、FedEx(75位)、DHL(81位)といったブランドが価値を上げた。
新型コロナの影響を大きく受けているアパレル業界ではZara (35位) とH&M (37位) が前年比で10ポイントを超えるマイナスになっている一方、ラグジュアリー系は下がってはいるものの、それほど大きなマイナスにはなっていない。「ラグジュアリー系が数パーセントのマイナスにとどまっているのは、ブランドとつながっていたいという情緒的価値があるからではないか」(並木社長兼CEO)
新型コロナによる変化の影響について、並木社長兼CEOは「顧客」「社員」「ブランドに求められること」の3つを挙げる。「まず激変する環境下で不安を抱える顧客を理解しようとする企業姿勢が問われている。『カスタマー オブセッション(顧客中心主義)』を掲げるAmazonが成長率トップになったのはその象徴といえるだろう。また、テレワークの一般化で社員と会社のつながりが希薄になる中、自社のブランドが付いて行くに値するものになっているかどうか。ブランドは人がつくるものであり、ブランドが組織をドライブしていることが重要だ。さらに、ブランドに求められることとして、パーパス(存在目的)や、商品・サービスの質やスピードで顧客の期待値を超えられるかどうかもポイントになる」
日本のブランドではToyotaの7位がトップで、Honda(20位)、Sony(51位)、Nissan(59位)、Canon(71位)、Nintendo(76位)、Panasonic(85位)がトップ100に入った。成長率ではNintendoがトップ。「相次ぐヒット商品がけん引しているのはもちろんだが、コロナ下においてNintendoらしくないことをやらず、自分たちの領域に注力したことも大きい」(同)。また、Sonyも前年比プラスとなっている。「Sonyらしさが見えるようになり、さまざまな変革が収益に表れてきた」(同)
ちなみに同ランキングは「主要基盤地域以外での売上高比率が30%以上であること」「北米・欧州・アジア地域で相応のプレゼンスがあり、新興国も幅広くカバーしていること」「主要基盤地域のみならず、世界の主要な国々で、一般に広く認知されていること」などグローバルでの事業活動を基準しており、WalmartやAlibaba、UNIQLOといったブランドは対象外となっている。