ユーザーは勝ち組にくみしたい
――「D4DJ」はゲームに先行してキャストによるライブを開催し、アニメの放送も決まりました。ブシロードのIPはメディアミックスが定石になっています。
木谷氏 アニメやゲーム、ライブなど何か1つをやってみて、それが成功したら次の展開へというのが一般的な流れかもしれません。ですが、そんな覚悟じゃもう成功しないと僕は思っているんですよ。当たったら次、それも当たったら次と進む企画も世の中にはありますが、全てが成功する確率は低いと思います。
僕が企画するときは、最初から全部やるつもりで始めます。ライブをやってみて受けなかったとしても、「はい、ここでやめます」ということはしません。
――最初から大規模なメディアミックスを仕掛けるのは、ユーザーに向けて多くのフックを用意する意味があるんでしょうか?
木谷氏 1つには、いろいろな楽しみ方を用意することで、お客さんになっていただく機会を増やすということがあります。
でもそれ以上に大きいのは、みんな勝ち組にくみしたいということです。なぜかというと、SNSが広がった現代では、1人で趣味を楽しむことがなかなかできないという面があるのだと思います。
昔は音楽にしろ本にしろ、仲間と楽しむのとは別に、こっそり1人で趣味を楽しむことも多かった。「みんながそっちを好きでも俺はこっちが好きだぜ」とあえて推すような熱量を持つ人も珍しくなかったと思います。でも今はSNSで仲間同士がつながるから、少数派になりたくないんですよ。そこそこの多数派でいたい。個人的には仕方がない傾向だと思います。
逆に言えば、ヒットしている原作があるものは別として、新規のアニメやゲームを楽しむのは難しい時代であるとも言えます。最初はどうしてもお客さんが少ないですから。もちろんその中には濃くて熱いファンもいますが、あくまでも少数派。大多数は「このコンテンツは盛り上がるな!」と思った時点で入ってくる。だから、ゼロからオリジナルコンテンツを仕掛けるときは、複数メディアの合わせ技で垂直立ち上げさせるしかないと思いますね。
「D4DJ」ならではのライブイベントを模索
――今回は、立ち上げ段階で新型コロナウイルスの感染拡大がありました。苦労もあったのでは?
木谷氏 20年7月にオンラインの無観客ライブ「MixChannel Presents D4DJ CONNECT LIVE」を行いましたが、本来はパシフィコ横浜を会場に、4000人規模のライブを2日間開催する予定でした。これがコロナ禍で延期になっています。
とはいえ、影響は多少あったという程度です。「D4DJ」については、DJというIPの特性上、ライブの規模を大きくする必要があるのか疑問もあるんです。
――クラブイベントのような小規模にするとか?
木谷氏 そこまでにするかは別として、比較的小さい会場でライブをし、配信で大勢の人に届ける。会場で濃く楽しむ人と、配信で薄く楽しむ人に分け、コンテンツが届く裾野を広げるのもいいのではないかと考えているんです。
配信も複数台のカメラでの配信は有料に、1台での配信は無料にといった取り組みができます。先日開催された「グルミク Presents D4DJ D4 FES. ~LOVE!HUG!GROOVY!!~」でもこの方式を採り入れていますが、ユーザーには評判がいいですね。定点カメラの映像で物足りなく思い、その場で有料課金をする人がいるのではないでしょうか。これは実は新しい配信の形なのではないかと自負しています。
※この記事は後編「ライブもプロレスも成功 ブシロード有観客イベント再開までの道」に続きます。
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(写真/酒井 康治)