複数チャンネル化で多様な目的に対応

 さらに言えば、情報発信を公式チャンネルに集約すべきかどうかも、次回以降、議論の余地がある。「e-Sports X」や「日本ゲーム大賞」といったイベントを除き、チャンネルを1つに絞ったのは、視聴者の混乱や拡散を防ぐためということもあるだろう。ただ、先に述べたように、TGSはすでにゲームに関する情報発信以外の要素も持っている。複数のチャンネルを活用することで、参加目的が違う人にも対応できたのではないだろうか。

 例えば、今回、主催者はTikTokに公式アカウントを作り、スタジオのオフショット動画を投稿していた。これをTGSのコスプレイベントとして位置付けるというのはどうか。TikTokやTwitterなどのSNSで、コスプレイヤーに「#TGS2020cos」のようなハッシュタグを付けてコスプレ動画を投稿してもらう。主催者はそれらをイベントの公式アカウントでシェアしたり、公式サイトにまとめとして掲載したりすることで、コスプレイヤーも家にいながらTGSに参加している気持ちになれるだろう。

 e-Sports Xもせっかく別にチャンネルを作ったのに、3大会(番組としては4つ)しか配信されていなかった。空いている枠を、eスポーツイベントを主催する企業や団体などに開放し、いつでも何らかの大会が視聴できる状態にすることもありだろう。午前中や昼すぎの時間帯は、学生やゲームコミュニティーなどに無料開放して、ユーザー参加型のイベントをアピールしてもいいかもしれない。

 子供向けのチャンネルを用意することで、ファミリーエリアも代替できる。9月27日10時から配信していた主催者番組「Nintendo Switchでゲームを作って『ゲームクリエイターになろう!』」のような子供向け番組を配信する。午前10時~午後6時に配信時間を限定し、3日間とも同じ番組をローテーションしても十分だと思う。

TGS2019のファミリーエリアのステージの様子。会期後半の2日間、一般デイのみの開催だったが、一般会場に負けない盛り上がりだった(写真/岡安学)
TGS2019のファミリーエリアのステージの様子。会期後半の2日間、一般デイのみの開催だったが、一般会場に負けない盛り上がりだった(写真/岡安学)

 番組外では物販にも改善を期待したい。例年のTGSにおいて、物販は大手メーカーブースの試遊コーナーに負けないくらい混む人気エリアだ。それは、TGSでしか購入できない限定品があるからだ。TGS2020 ONLINEでもアマゾンのサイト内に特設サイトを作り、物販も行っていたが、ゲームソフトやアパレル系が多く、どれも会期以外でも購入できるものだった。毎年恒例の公式グッズも販売しておらず、TGS感が薄れていたのは本当に残念だった。

例年のゲームショウでは物販コーナーも人気。写真はTGS2019の様子
例年のゲームショウでは物販コーナーも人気。写真はTGS2019の様子

 同様の思いを持っていた人は、TGS2020 ONLINEの視聴者にも多かったはずだ。会期中、TwitterなどのSNS、動画配信のコメント欄を見ていると、今回のオンライン化を評価しつつも、TGS特有のお祭り感が薄まったことを指摘している視聴者が散見された。これらの人も特別な4日間であることは感じていたはずだ。ゲームに関わる人がこれだけ集まり、ひっきりなしにゲームの情報を発信、ゲームの話ばかりしているのは、日常にはない光景だからだ。それでもリアルイベントに比べると物足りなさを感じる部分はどうしてもあった。上記のような取り組みがあれば、音楽フェスのようなお祭り感をもう少し出せたのでは、と筆者は考える。

体験イベントの充実を

 加えて、今後の改善策として、視聴者が参加、体験できる施策も用意してほしい。例えば、TGSに合わせて会期中のみプレーできる期間限定の体験版を配信したり、VR会場を用意してバーチャルTGSを開催したりするのはどうだろう。公式番組を見ながらのオンライン投票などもできる。どれも、オンライン上ではすでに行われているものばかりだ。

TGS2019の試遊の様子。例年人気の試遊もオンラインでは実現は難しかった
TGS2019の試遊の様子。例年人気の試遊もオンラインでは実現は難しかった

 期間限定の体験版については、『スプラトゥーン2』や『機動戦士ガンダム EXTREME VS. マキシブーストON』などが実施済みだ。発売前に特別体験会、先行体験会として、期間限定で遊ばせている。

 バーチャルイベントについては、CyberZ(東京・渋谷)が実施したeスポーツイベント「V-RAGE」や、KDDI、渋谷区観光協会などで組成する「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」がオープンした「バーチャル渋谷」、東京大学のオープンキャンパス「バーチャル東大」などがある(関連記事「RAGEのeスポーツ大会 初の完全オンライン開催で見た成果と課題」) 。

CyberZのV-RAGEの様子。アバターを使ってバーチャルな会場内を自由に移動、大型ディスプレーで試合の様子を見られる
CyberZのV-RAGEの様子。アバターを使ってバーチャルな会場内を自由に移動、大型ディスプレーで試合の様子を見られる

 オンライン投票は、ミクシィが開催する「モンストプロツアー」などがeスポーツの勝敗予想を実施した。これをTGSに置き換えるなら、日本ゲーム大賞の各賞予想などもできるのではないだろうか。

 もっとシンプルに、公式番組の配信途中で出てくるキーワードを全部集めて応募するとグッズがもらえるキャンペーンをやったり、飲食店や出前業者とコラボして、全国の人が同じ番組を視聴しながら、同じものを食べる「東京ゲームショウ公式オンラインめし」企画をやったりしても現場感が出せそうだ。

 TGS2020 ONLINEの概要が20年9月に発表されたとき、「動画配信だけ?」というのが率直な感想だった。実際に開催されてみると、動画自体は主催者も出展企業各社も趣向を凝らし、予想以上に見応えのある配信だったと思う。

 それでもオンライン=動画配信と考えてしまったのはちょっと早計だったと感じる。もちろん、いろいろなことに手を出すとそれだけコストも時間もかさむのは重々承知だ。それでも世界3大ゲームショウの1つとして開催するのであれば、このくらいのボリュームとコンテンツの豊富さがあってほしいと願う。

 コロナ禍収束の見通しはまだつかないものの、すでに21年のTGSは9月30日~10月3日まで幕張メッセで開催予定と発表された。せっかく今回オンラインイベントのノウハウを得たのだから、21年はリアルイベントと同時にパワーアップしたオンラインイベントの開催にも期待したい。

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