世界で巻き起こるフードイノベーションに日本の大手企業が本格的に参戦する。米サンフランシスコを拠点とするスクラムベンチャーズが2020年9月30日に発表した、世界中のスタートアップとのオープンイノベーションを進める「Food Tech Studio-Bites!」が、その舞台だ。日本でも食の新産業が本格的に始動する。

Food Tech Studio-Bites!には、食分野の大手企業6社が参集した
Food Tech Studio-Bites!には、食分野の大手企業6社が参集した

 Food Tech Studio-Bites!には、日清食品ホールディングス、大塚ホールディングス、伊藤園、不二製油グループ本社、ニチレイ、洋菓子のユーハイムの6社が参画する。世界に先駆けてインスタントヌードルやレトルトカレー、大豆を用いた代替肉などを製品化し、“元祖”フードテック企業といっても過言ではない食品・飲料業界の大手企業が出そろった。

 プロジェクトでは、参画した6社と国内外のスタートアップとのマッチングを進める他、参加企業同士の協業機会も検討していく。2020年11月30日までスタートアップを募り、そこから具体的な協業の方向性を詰め、21年3月をめどに成果を発表する計画だ。

Food Tech Studio-Bites!のプロジェクト構成。パートナー企業6社と国内外スタートアップの協業を進める
Food Tech Studio-Bites!のプロジェクト構成。パートナー企業6社と国内外スタートアップの協業を進める

 スタートアップは、主に5つの切り口で募集する。栄養&健康系アプリやメンタルヘルスなどの「栄養&健康分野」、植物性代替肉や培養肉に代表される「次世代フード&機能性フード分野」、ラストマイル配送やフードロボットといった「サプライチェーン&物流分野」、ミールキットやレシピアプリなどの「消費者向けテクノロジー分野」、フードロスや次世代食品パッケージなどの「サステナビリティ分野」だ。これらの領域で先進的な技術、アイデアを持つスタートアップと日本の大手企業をつなげ、食のイノベーションを推進していこうというわけだ。

 参加企業の1つ、日清食品ホールディングス新規事業推進室室長の吉田洋一氏は、「インスタントラーメンのように、世界に届けられる次の食文化をつくり出したい。開発におけるセンシング、生産におけるロボティクス、先端的な調理器具など、我々が培ってきた食感や風味、香りといったおいしさ技術との融合を目指していく」と、プログラム参加の狙いを話した。

 本プログラムをバックアップする戦略パートナー企業としては、アカデミック分野から辻調理師専門学校、不動産業界からはフードテック施設「トーキョーフードラボ」(東京・中央)を開設した東京建物、その他、博報堂やフードテックに力を入れるコンサルティング会社のシグマクシスが協力する。

 また、事業共創の助言を行うメンターには、世界最速でミシュラン三つ星を獲得した有名レストラン「HAJIME」のオーナーシェフ、米田肇氏、分子調理学を研究する宮城大学食産業学群教授の石川伸一氏、予防医学研究者の石川善樹氏などが参加。海外からも、食のイノベーションを推進するグローバルネットワーク、The Future Food InstituteのSara Roversi(サラ・ロバーシ)氏などが参画しており、強力な布陣で日本の食産業をアップデートする構えだ。

 Food Tech Studio-Bites!を主導するスクラムベンチャーズは、世界のフードテック市場に造詣の深いパートナーの外村仁氏に加え、マネージングダイレクターとして早嶋諒氏がプロジェクトの取りまとめを行う。なぜ今フードテックなのか、世界との差はどこにあるのか、2人に詳しく話を聞いた。

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