アサヒビールは2020年9月29日、ニッカウヰスキー6年ぶりの新ブランド「ニッカ セッション」を発売した。原酒不足による出荷調整で低迷が続くプレミアム価格帯で新価値を提案し、中長期のファンを育てたい考え。原酒不足が解消するまでは出荷量を調整しながら販売する。初年度は5万箱限定となる。

2020年9月29日に発売した「ニッカ セッション」(700ミリリットル、参考小売価格3800円・税別)
2020年9月29日に発売した「ニッカ セッション」(700ミリリットル、参考小売価格3800円・税別)

唯一微減のプレミアム価格帯

 ニッカ セッションはニッカウヰスキーが保有するスコットランドのベン・ネヴィス蒸溜所などで製造された華やかな香りが特徴のスコットランドのモルト原酒と、日本の余市蒸溜所、宮城峡蒸留所で製造された、ふくよかな味わいとビターな余韻が特徴の日本のモルト原酒をブレンドしたウイスキー。互いの個性を発揮しながら奏でる音楽をイメージし、「セッション」と名付けた。

 既存のウイスキーに多く使われる、透明や茶色のボトルとは一線を画した青いボトルを採用。「新たな創造や潮流をイメージした、モダンアートをほうふつとさせる躍動感のあるラベルデザインにした」(アサヒビール)

 従来のウイスキーに対して新規性を強調した背景には、好調なウイスキー市場で唯一、微減傾向にあるプレミアム価格帯(2000円以上)で、将来に向けたファンづくりにつなげたいとの思いがある。アサヒビールによると、ウイスキー市場は2007年以降ほぼ右肩上がりに推移しているという。しかし、成長を支えているのはエコノミー価格帯(1000円未満)やスタンダード価格帯(1000円以上2000円未満)で、プレミアム価格帯は微減傾向が続いている(インテージSRI ウイスキー市場 累計販売量単位:キロリットル 16年1月~19年12月、各価格帯は700ミリリットル瓶の想定実勢価格で分別)。

07年以降ほぼ右肩上がりに成長するウイスキー市場
07年以降ほぼ右肩上がりに成長するウイスキー市場
好調なウイスキー市場で唯一、プレミアム価格帯が微減傾向
好調なウイスキー市場で唯一、プレミアム価格帯が微減傾向

 同社はその理由として、原酒不足のあおりを受けた出荷調整が大きく影響しているとみる。そこで100周年を迎える2034年を見据え、65億円を投じた設備投資を実施し、生産体制を増強する計画だ。原酒の貯蔵能力は20%増を目指し、原酒の製造能力は210%を見込む。

 それに加え、既存のプレミアム価格帯の価値探索と、将来に向けた同価格帯の新たな価値探索にも注力する。既存ブランドについては供給量増加に向けて中長期的に取り組む一方、新たなブランドでは保有原酒の有効活用による安定供給を図る。「2つの価値提案を通じてニッカウヰスキーファンを育てていきたい」(アサヒビール)。

 新ブランド開発に当たり、同社はウイスキーユーザー以外にも調査を実施した。18年6月に3万人を対象に実施したアンケートでは、「ウイスキーには重厚感や本格・伝統といったイメージはあるが、代わり映えのなさを感じる」「可能性が広がる、感性が磨かれるという感覚はない」とのインサイトが得られた。

 あえてネガティブな考えに迫ることで、これまでのウイスキーらしさを脱却し、新たな世界観を提案することにした。そこで上記のように、異なる2つの個性をもつモルトのブレンドで「ぶつかり合いながら高め合っていくイメージ」という音楽のセッションになぞらえるコンセプトに行きついた。

 ウイスキーへの好意や興味関心の高い飲用者に1対1のインタビューでコンセプトの受容性を調査したところ、ポジティブな回答が多く得られたという。

 中身の開発は、これまで同社でビールや焼酎を開発してきた女川裕司氏が、初めてウイスキーのブレンダーを務めるという挑戦に打って出た。「外からウイスキーの開発を見ていた時間が長かったため、こうあるべきやこの組み合わせはだめといった先入観はなかった」と女川氏。

 自由な発想が生み出した新たな味わいが新規顧客を開拓し、伸び悩むプレミアム価格帯で息の長いファンを育てられるか。新ブランドに課せられた役割は重い。

ニッカウヰスキーブレンダー室主席ブレンダーの女川裕司氏。「炭酸水と割ったセッションソーダもおすすめ。イタリアンやバルでも満足してもらえる」と話す
ニッカウヰスキーブレンダー室主席ブレンダーの女川裕司氏。「炭酸水と割ったセッションソーダもおすすめ。イタリアンやバルでも満足してもらえる」と話す

(画像提供/アサヒビール)


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