パンフォーユー(群馬県桐生市)が東京都北区にオープンした冷凍パンの専門店「パンフォーユー カジワラ」の販売が好調だ。パンのサブスクリプションサービスを事業の柱としている同社が実店舗を構えるのは初の試み。当初は2020年9月末までの期間限定だったが、1カ月の延長も決まった。

パンフォーユー カジワラでは、北海道から沖縄まで全国35店舗のベーカリーからえりすぐった人気のパンを購入できる
パンフォーユー カジワラでは、北海道から沖縄まで全国35店舗のベーカリーからえりすぐった人気のパンを購入できる

冷凍パン専門店の店舗展開に向けたモデルショップ

 パンフォーユー カジワラ(以下、カジワラ)が販売する冷凍パンは、パンフォーユーが提携する全国35店舗のベーカリーからえりすぐった人気のパンだ。個人経営のベーカリーは商圏が限られるため、評判のいいパンといえども、その地域でしか食べることができない。しかしカジワラに足を運べば、北海道から沖縄まで、さまざまなベーカリーで人気のパンが手に入る。パンフォーユー社長の矢野健太氏によれば「2020年8月末にオープンして以来、想定の1.5倍の勢いで売れている」とのこと。クロワッサンの食べ比べキャンペーンでは用意した3日分のクロワッサンを2日間で完売、続くベーグルの食べ比べキャンペーンも好評だったという。

パンフォーユー カジワラは都電荒川線「梶原駅」から徒歩3分の距離
パンフォーユー カジワラは都電荒川線「梶原駅」から徒歩3分の距離

 パンフォーユーがカジワラを出店したのは、将来に向けた冷凍パン専門店の店舗展開を見据えてのことだ。調査会社・矢野経済研究所(東京・中野)の予測によれば冷凍パン生地・冷凍パンの市場は年率2%程度の成長率で推移し、23年度には1959億円規模になるといわれている。

 パンフォーユーは現在、約3000人の利用者がいる個人向けのパンの宅配サービス「パンスク」と、三井不動産をはじめ150社以上が利用している法人向けの「オフィス・パンスク」、ホテルやレストランに冷凍パンを提供する「パンフォーユーBiz」の3事業を柱としている。カジワラでの販売が好調なら、パンフォーユーにとって“冷凍パン専門店の店舗展開”という4本目の柱になり得るわけだ。

パンフォーユーのビジネスモデル
パンフォーユーのビジネスモデル
パンフォーユーの事業の位置付けは、ベーカリーと販売店・消費者をつなぐBtoB、BtoCプラットフォームといえる

 「実店舗の展開は以前から考えていたが、新型コロナウイルス感染症の影響で計画が早まった」と矢野氏。「コロナ禍で『パンのテークアウトを始めたい』という飲食店などからの問い合わせが増え、そうした飲食店のためにも店舗運営のノウハウを学ぶ必要性を実感した」(矢野氏)。冷凍パンを仕入れて販売するというスタイルなら、店舗さえ持っていれば誰でもベーカリーを始められる。その意味でカジワラは、パンフォーユーにとって実証実験の場なのだ。

個人向けのサブスクリプションサービス「パンスク」は月額3990円(税込み、送料込み)で毎月違うベーカリーのパンの詰め合わせ(6~10種類)が届く
個人向けのサブスクリプションサービス「パンスク」は月額3990円(税込み、送料込み)で毎月違うベーカリーのパンの詰め合わせ(6~10種類)が届く

地方のベーカリーの活性化を促すビジネスモデル

 一方、既存のベーカリーが抱える課題は“商圏の狭さ”だ。近年は販売数を伸ばそうと、インターネットでの通信販売を始めるベーカリーも出てきているが、店舗経営の合間にサイトの更新や商品の梱包・発送を手掛けるのは大きな負担になる。

 その課題を解決するのが、パンフォーユーの各事業に共通するビジネスモデルだ。同社は独自の冷凍技術によって“焼きたて”に近いパンの提供を可能にしており、ベーカリーは焼いたパンを専用の袋に入れて冷凍するだけで“長期保存が可能な商品”に生まれ変わらせることができる。集荷は配送業者、販売はパンフォーユーが担当するため、極端な話、パンを焼く窯と保存用の冷蔵庫さえあれば販売する店舗がなくてもビジネスとして成り立つ。パンフォーユーとの提携は、ベーカリーにとって安定した受注を確保できるというメリットもある。

冷凍保存と常温保存の比較
冷凍保存と常温保存の比較
パンフォーユーの技術で冷凍後30日間保存したパンと、常温のまま1日が経過したパンとの比較では、糊(こ)化度、水分量で冷凍パンが勝る(調査機関:日本食品分析センター)

 パンフォーユーでは「新しいパン経済圏をつくり、地域経済に貢献する」を事業ミッションに、地方における雇用の創出やフードロスの削減を目指している。矢野氏が「大手企業と提携することでビジネスの拡大を図る」と話す通り、パンフォーユーは食品・飲料大手のネスレ、家電メーカーのシャープ、福岡に拠点を置く西日本鉄道などとの提携を次々と発表している。

(写真提供/パンフォーユー)


【新刊予約受付中】
専門レポート『マーケティングDX最新戦略』

顧客に適時に適切な方法で売り込み、顧客に寄り添ってカスタマーサクセスを実現するにはどうすべきか。マーケティング×DXの戦略立案、実行に必要な打ち手がここに。
日経クロストレンド編集部、日経BPシリコンバレー支局、20人以上の専門家が執筆。600ページ以上に、国内100社、海外50社、1234のマーケテックソリューション一覧、打ち手を見つけられるマーケティングDXマップなどを掲載。
日経BPのマーケティングDX最新戦略サイトへ