酒造大手の三和酒類(大分県宇佐市)が、割らずにそのまま飲める「いいちこ下町のハイボール」を発売した。本格焼酎市場の縮小が続くなか、需要が大きく伸びているRTD市場に参入することで、これまで十分取り込めていなかった若年層や焼酎になじみのない層に訴求したい考えだ。

三和酒類の「いいちこ下町のハイボール」。パッケージデザインも潜在層開拓を目指したもの
三和酒類の「いいちこ下町のハイボール」。パッケージデザインも潜在層開拓を目指したもの

 2020年9月8日に発売された「いいちこ下町のハイボール」は、三和酒類の看板商品である本格麦焼酎「いいちこ」を炭酸水で割ったもの。かぼすスピリッツを隠し味に加え、口当たりの良さ、くせのなさを重視した。同社初のRTD(Ready To Drink、そのまますぐ飲める缶入りのチューハイやカクテルなどのアルコール飲料のこと)商品で、アルコール度数は7%。容量350mlで希望小売価格は175円(税別)。主要コンビニエンスストアで先行発売し、発売から1年間で1000万本の販売を見込む。

 RTDを開発した背景には、炭酸であらかじめ割ってあり、自宅で手軽に飲めて後片付けも楽なこの商品を通じて本格焼酎の魅力を知ってもらい、新たなファンをつくりたいという狙いがある。

 三和酒類の下田雅彦社長は「いいちこは発売以来40年がたち、50代や60代がユーザーの中心になっている。本格焼酎になじみがない若年層や、焼酎は苦手という潜在ユーザー層にアピールしたい」と、発売の背景を述べた。

 アルコール度数を7%にしたのも、いいちこの魅力を伝えるためだ。「アルコール度数9%で早く酔える、いわゆる“ストロング系”の市場を狙っているわけではない。いいちこがもつ本来の味わい、やさしいおいしさをRTDで再現して伝えるための商品。香料や甘味料などもゼロで、体にやさしいハイボールに仕上げた」(下田社長)という。

 プロモーションには俳優のムロツヨシさんを起用し、テレビCMを含め積極的に仕掛ける。詳細は明かされなかったが、RTDの第2弾商品も控えているという。

 下田社長は「お酒を飲む楽しさを伝えたい。飲んだ人に焼酎の炭酸割りもおいしいよね、と言ってもらうことが目的。料理などに合わせてもらい、需要を作りたい」と述べた。

発表会で「いいちこ下町のハイボール」を手に乾杯する、俳優のムロツヨシさん(左)と、三和酒類の下田雅彦社長(右)
発表会で「いいちこ下町のハイボール」を手に乾杯する、俳優のムロツヨシさん(左)と、三和酒類の下田雅彦社長(右)

本格焼酎人気復活のきっかけとなるか

 RTD市場は大きく伸びている。サントリーの「RTDに関する消費者飲用実態調査 サントリーRTDレポート2020」によると、19年のRTD市場は対前年112%、2年連続2桁成長で、20年も対前年112%の見込み。消費税増税の影響で飲食店よりも自宅で飲む機会が増え、その中で特にRTDを飲む人が増えているという。今後は新型コロナウイルス感染拡大の影響で自宅飲みが増えたことも伸びを後押ししそうだ。

 一方で本格焼酎市場は不振が続いている。国税庁の酒税課税状況表によると、単式蒸留焼酎(本格焼酎、泡盛など)の課税数量は平成30年度(18年度)が前年度比93.9%、平成31~令和元年度(19年度)が前年度比97.2%と縮小が続いており、令和2年度(20年度)も4月、5月ともに前年度を下回っている。

 三和酒類は潜在ユーザー層の発掘を狙い、炭酸水で割って飲むことを想定した瓶入り本格麦焼酎「iichiko NEO」を20年7月に発売している。より手軽に飲めるRTDを投入することで、本格焼酎の新たなファンをさらに増やせるか。焼酎になじみのない層へのアピールが決め手になりそうだ。

(写真提供/三和酒類)


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