東京ゲームショウ2020 オンライン(TGS2020 ONLINE)が2020年9月23~27日の5日間にわたって開催される(23日は商談のみ)。今回は初のオンライン開催。そこで長年TGSを取材してきたゲームライターの野安ゆきお氏にオンラインならではの楽しみ方を解説してもらおう。
全世界が「強制リセット」された状態
完全オンラインで開催されるTGS2020 ONLINE。このイベントの楽しみ方は、ずばり「手探り感」を堪能することだ。もともと4日間で30万人近くの来場者を集める巨大イベントだ。これをオンラインで開催するのは、恐らく世界的にも例のない挑戦となる。どうすればイベントが成功するのか、そしてゲームファンに喜んでもらえるのか……ゲーム産業に関わるすべての人が、手探り状態のままこのイベントは開催される。
ならばゲームファンは、その手探り感を堪能しようではないか。実は過去を振り返ると、手探り状態のときこそTGSは面白いものになっているのだから。
新しい家庭用ゲーム機が初めてお目見えするときのことを思い出してほしい。家庭用ゲーム機は7~8年サイクルで次世代機が投入され、それまで積み上げてきた実績は“消滅”する。ゲーム的に言うなら「強制的なリセット」がかかった状態になり、すべてが手探り状態になる。すべてのクリエイターが同じスタートラインに立ち、新しい勝負がスタートする。
すると、その年のTGSはどうなるか。新しいゲーム機に適応するため、そこではさまざまなチャレンジが行われる。多様なゲームが登場するのだ。過去にしがみついたままの古いブランドが消え、代わりに新しいブランドが注目を浴びるという、新陳代謝が行われる瞬間を目の当たりにすることもできる。だからこそ、新ハード登場直後TGSはいつも魅力的なのだ。
翻ってみれば、TGS2020 ONLINEはこれと全く同じ状況と言える。新型コロナウイルスの感染拡大により、世の中は大きく変化した。これまでと同じやり方が通用しない時代が無理やりに訪れた格好だ。ゲーム業界に限らず、いわば全世界のビジネスが「強制リセット」された状態にある。
現在、すべてのクリエイターが新しい時代に適応するため、手探りをしている状態にある。ならば私たちはそれぞれの出展社が、どんなアイデアを提供してくるか、どんな未来のビジョンを見せてくれるのか、そんなことに注目しながらTGS2020 ONLINEの開催を待てばいいのである。
では、完全オンライン開催となったTGS2020 ONLINEを楽しむための方法をレクチャーしよう。
まずは公式サイトにアクセスしてほしい。ここで最初にチェックすべきは公式番組のタイムテーブルだ。これは例年の会場マップに相当するものだと考えていい。9月24日午後9時を皮切りに、9月28日の午前0時から始まるエンディング番組まで、さまざまな出展社の番組が用意され、そこで最新ソフト・サービスの情報が発信される。この一つひとつの番組が、例年のTGSにおける各出展社のブースに相当する。
例年ならば来場者はマップを片手に「まずはこことここはチェックして、時間が余ったらこっちにも足を伸ばして……」とスケジュールを立てるだろう。しかしTGS2020 ONLINEでは、番組表の中から見たい番組をチェックするという形になる。
ずらりと並んだ全番組をチェックするのはあまりに大変だという人は、午後8時~午前0時の「ゴールデン枠」と呼ばれる時間帯の配信を中心に見るといいだろう。この時間帯に流れる番組は、例年のTGSにおける「巨大ブース」のようなもの。ここをチェックするだけでも、TGS2020 ONLINE全体の傾向を感じ取れるはずだ。
公式番組だけでは物足りない、もっとたくさん情報が欲しい、という方は、独自の番組を用意している出展社もあるので、各自チェックしてほしい。なお、こちらではWeb会議システムのZoom(ズーム)などを使って配信する企業もあるようなので、必要なソフト・アプリを事前にダウンロードしておこう。
また、TGSといえば現地でしか買えないグッズ類の購入を楽しみにしているファンも多いはずだ。そのような人は、Amazonの特設会場にアクセスするといい。こちらでは、上記の番組やeスポーツ大会の配信のみならず、商品や関連グッズの販売も行われる。
最大の注目はPlayStation 5になる、はず
最後に「TGS2020 ONLINEの見どころ」を紹介してゲームファンの期待を高めたいところだが、この記事の執筆時点では、それぞれの出展社がどのような発表をするのか、その多くはベールに包まれている。
本来ならTGS2020 ONLINEの主役は、ついに発売となるソニー・インタラクティブエンタテインメントの「PlayStation 5」で決まりだった。もし幕張メッセで開催されていたなら、「●●台の試遊台が用意され、▲▲本のタイトルがプレイアブル出展。そこには初日から長蛇の列ができて……」と、取材陣は数字の部分だけを空けた予定稿を書いておくことも可能だっただろう。しかしオンライン開催となった2020年は不可能だ。
9月17日午前5時(日本時間)には、PlayStation 5の映像イベントが全世界に同時配信された(関連記事:PlayStation 5は11月12日発売 価格は3万9980円から)。とはいえ、そこで明らかにされたソフトや各種の情報が、どのような形でTGS2020 ONLINEの番組に反映されるのかは、蓋を開けてみるまで不明なのだ。2020年のTGSは、これから数年にわたってゲーム産業をけん引していく新ハードの姿すら、どのタイミングで出てくるのか分からないという、まさしく前代未聞の状態なのである。
つまりゲームファンも手探り状態のまま、あれこれと予想を巡らせるしかないのだ。こうなったら開き直って、ひたすらどきどきに包まれながら、実際に開催されるのを待つしかない。
(写真/酒井 康治)
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