コロナ禍が拡大して以降、小売店店頭での商品サンプリングや試食・試飲は、ほぼ実施できなくなった。だが、商品によっては、その良さを実際に体験してもらうマーケティングが必須なものもある。キリンビールは、「淡麗グリーンラベル」「キリン グリーンズフリー」の両商品で、来店客が新たな接触を伴わない店頭サンプリングを実施し、体験型マーケティングの新たな手法を見いだした。

キリンビールの商品が並ぶ売り場のイメージ。実際の小売店は他社商品も並んでいる。消費者は無料サンプリングクーポンで示された店頭サンプル商品を棚から取って、通常の買い物と一緒にレジに出すだけ(写真提供/キリンビール)
キリンビールの商品が並ぶ売り場のイメージ。実際の小売店は他社商品も並んでいる。消費者は無料サンプリングクーポンで示された店頭サンプル商品を棚から取って、通常の買い物と一緒にレジに出すだけ(写真提供/キリンビール)

 キリンビールは2020年3月に、糖質オフを売りにした発泡酒「淡麗グリーンラベル」のリニューアルに踏み切った。「従来の爽やかなおいしさはそのままに、ビールに近い満足感を強化した」(キリンビール マーケティング本部マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当 主務で淡麗グリーンラベルを担当する松村孝弘氏)のだ。また同年4月3日に、ノンアルコール飲料の新製品「キリン グリーンズフリー」も発売した。近年、市場が拡大している無糖炭酸水のユーザーの取り込みが狙いだ。

 糖質オフを売りにする淡麗グリーンラベルと、ノンアルコール飲料のグリーンズフリーには、実はマーケティング上の共通点がある。どちらも、一般的な消費者は、その味にマイナスイメージを持っているというのだ。

 松村氏は、「糖質をオフするのと一緒に味までオフしているのではという先入観が、消費者の間で想像以上に強い」と漏らす。グリーンズフリーを担当するキリンビール マーケティング本部マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当 主務の林卓也氏も、「ビール類を飲む消費者に選んでほしいが、多くの消費者にあまりおいしくないと思われている」と話す。

 だからこそ、どちらの商品も「まずは飲んでもらう」(林氏)ことが、マーケティング上、重要になる。飲んでさえもらえれば、「思ったよりもおいしい」という印象を消費者に与え、「もう一度飲んでみよう」という行動を呼び起こす可能性がある。このためこれまでは、スーパーやドラッグストアなどで店頭サンプリングを積極的に展開し、消費者に飲む体験を与えてきた。

 ところが、新しい商品をまさに消費者にアピールしなければならない時期に、新型コロナウイルス感染症が流行した。この結果、来店客との必要以上の接触を避けるため、従来、小売店の店頭で頻繁に実施していた商品サンプリングや試食・試飲はほぼできなくなった。店頭サンプリングによってその商品の良さを実際に体験してもらうという従来のマーケティング手法が使えなくなったのだ。代替手段としてウェブサイトでのサンプリング申し込み受け付けも考えたが、「商品の発送にかかるコストがばかにならず、キリンビール自身が消費者の個人情報を抱えるリスクもある」(林氏)。

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