楽天と東急は2020年9月1日、共同で新会社・楽天東急プランニング(東京・世田谷)を設立した。楽天、東急がそれぞれ蓄積してきたオンラインとオフラインのデータを活用し、新しいデータソリューションを提供するという。新会社の社長は楽天の笠原和彦氏が、副社長は東急の日野健氏が務める。
事業の柱はデータマーケティング、広告、OMO
楽天東急プランニング設立の狙いは3つある。楽天、東急両社のマーケティングソリューションの強化、および広告効果の最大化、オンライン(インターネット)とオフライン(実店舗)の垣根をなくした利便性の高い購入体験の提供だ。
EC(電子商取引)サイト「楽天市場」をはじめとした70以上のネットサービスを提供する楽天の強みは、1億超の会員基盤に基づくデータマーケティング力。一方、東急には交通、不動産、小売り、ホテルなどオフラインにおける顧客との“つながり”という基盤がある。楽天と東急、それぞれが持つオンラインとオフラインの消費行動データを統合・分析してデータマーケティング、広告、OMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)に活用する考えだ。楽天の三木谷浩史会長兼社長は「オンラインとオフラインの垣根はほぼなくなる。相互に送客し、顧客に新しい体験を提供する」と語る。
データマーケティング事業では、顧客層別の情報配信方法と情報配信による消費行動の変化を検証し、販促手法、品ぞろえ、価格設定などを見直す。東急ストアの商圏見込み客と潜在需要を把握した上で、楽天のアプリなどを通じで顧客に情報を配信。2020年10月から21年3月にかけて東急ストアでの効果を検証するという。
なお楽天のQRコード決済「楽天ペイ」は、「プレッセ」「フードステーション」を含む東急ストア全86店舗で導入済み(20年4月)。年間約3200億円分が発行される「楽天ポイント」についても東急ストア全店舗が20年9月1日から対応している。楽天のキャッシュレス決済、ポイントサービスについては、東急百貨店や東急系列の各ホテルなどでも順次対応する予定だ。
広告事業では、Webによる広告効果の最大化を図るとともに、商品の認知から購入までをトラッキングするデジタルサイネージなど、広告商品の開発に取り組む。20年11月から12月にかけては楽天本社のある二子玉川駅(東京・世田谷)および東急ストア二子玉川ライズ店内にデジタルサイネージを設置する計画だ。駅から商品棚までの顧客動線に沿って接触データを計測し、購入データと照らし合わせて広告効果を検証するという。
OMO事業については検討段階だが、例えば東急のバイヤーによる“目利き”と楽天の会員データから算出した“トレンド”を組み合わせ、商圏の顧客ニーズに沿った品ぞろえも実現可能とのこと。楽天での購入履歴などからレコメンドされた商品を東急の実店舗で試用・試着するといったことができるのもOMO体験の1つだ。
キャッシュレス決済の普及やECの拡大、新型コロナウイルス感染症拡大によって生まれた“新しい生活様式”など、環境の変化により人々の消費行動にも変化が生じている。OMO事業では、多様化する顧客ニーズに合わせたサービスの提供で生活価値の向上を目指す。
(写真提供/楽天東急プランニング)