メルカリと博報堂が共同研究した、フリマアプリにおける取引構造の実態について分析結果を発表した。リアルな交友関係では生まれにくくなったおさがり文化がフリマアプリで根付いていることや、年下から年上へ「逆おさがり型」になっているカテゴリーがあることも分かった。

2020年8月31日に共同研究の結果を発表したメルカリジャパンCEOの田面木(たものき)宏尚氏(左)、博報堂生活総合研究所上席研究員の酒井崇匡氏(右)
2020年8月31日に共同研究の結果を発表したメルカリジャパンCEOの田面木(たものき)宏尚氏(左)、博報堂生活総合研究所上席研究員の酒井崇匡氏(右)

コーヒーは逆おさがり型

 2019年のCtoC取引市場の規模は1兆7407億円と推計され、前年比9.5%の成長を見せている(経済産業省「令和元年度電子商取引に関する市場調査」)。調査によると、この市場規模の拡大にはフリマアプリの成長が寄与しており、同アプリの初期成長をけん引した10~30代女性ユーザーだけでなく、男性や高齢者ユーザーが増加傾向にあるという。

 そこで、フリマアプリのメルカリが運営するメルカリ総合研究所と、博報堂生活総合研究所は19年1~12月にメルカリ内で発生した取引をもとに取引構造の実態を年齢分布で分析した。

 対象となるデータは、全1199カテゴリーにおける出品者・購入者双方の性別や年齢・居住する都道府県が判別可能な取引とした。成年に満たないユーザーを「その他」と分類し、詳細な分析対象から外した。

 商品カテゴリーごとに出品者・購入者間の年齢の関係性を見てみると、①双方の平均年齢が一致する「年齢一致型」(38%)、②年下から年上への「逆おさがり型」(27%)、③年上から年下への「おさがり型」(20.5%)の順に多かった。

商品カテゴリーの27%が逆おさがり型
商品カテゴリーの27%が逆おさがり型

 カテゴリーとしては、「年齢一致型」はアニメやコミックグッズ、メンズスニーカーなど趣味性の高いもの、「逆おさがり型」はコーヒーなどの嗜好性飲料、ドライブレコーダー、防犯カメラ、レーダー探知機などの安心ツール、入浴剤や電子ヒーターなどの暖を取るもの、野球の練習機器、「おさがり型」は育児用品のほか、ダーツや美顔ローラー、フィルムカメラ、スケートボードが多かった。

 逆おさがり型が顕著なカテゴリーについて博報堂生活総合研究所によると、嗜好性飲料は出品者のピークである30代が家で消費しきれず余ったものを出品し、購入者のピーク40~50代が購入しており、安心ツールは技術に明るい年代からその上の年代へより新しい製品が広がる傾向があると分析する。

ドライブレコーダーは逆おさがり型
ドライブレコーダーは逆おさがり型

 また、暖が取れる製品の取引は女性が多く、年齢が上がるにつれ代謝が落ちるため、このようなグッズを必要とする年上世代が年下出品者から購入する傾向にあるという。

 さらに、同研究所上席研究員の酒井崇匡氏が「とりわけ興味深かった」カテゴリーとして挙げたのは野球の練習機器。ここでいう練習機器とは主に野球ボールのことで、出品者のピークは18歳前後と40~50代で購入者のピークは40代だった。「高校球児やその保護者が引退を機に出品し、野球を始める子どもを持つ親や指導者が購入しているのだろう」と同氏は見る。

おさがり文化はリアルからフリマアプリへ

 一方、おさがり型には育児用品の大多数が当てはまるという。生活スタイルの多様化で出産や子育てのライフイベントが周囲と重ならないことが多くなり、リアルな交友関係でのおさがり文化が減少しているため、「フリマアプリ内で“先輩ママ”から“後輩ママ”へ受け継がれている」(酒井氏)という。

 30代のミレニアル世代から20歳代のZ世代へ譲られるケースが多い商品カテゴリーもある。例えば美顔ローラーは購入者が最も多いのは大学生で、30~40歳女性からの購入が顕著だ。

 ただし、フィルムカメラは、購入者のピークである20歳前後でも、出品者は全世代となっており「アナログなものに興味を示すZ世代が全世代のフィルムカメラの所有者から購入している」と、酒井氏は分析する。

 年齢一致型で興味深いのは、スニーカーやブルゾンなどメンズファッションで2つのピークが出現したことだ。例えばスニーカーでは、20代同士、40代同士に加え、20代と40代での取引が顕著に行われている。「スニーカーは、昔のモデルがビンテージとして価値を持つため、若い世代が40代が持つスニーカーを購入することがある」と、自身もスニーカー愛好家のメルカリジャパンCEOの田面木宏尚氏は指摘した。

 酒井氏は今回の研究を通じて、「リアルなコミュニティーでのおさがり文化がなくなっている中で、シェアアプリで根付いていることに驚いた。中には、ウエディングドレスを『幸せバトン』として出品し、複数回にわたり取引がされている例もある。デジタルな環境において、情緒のやりとりが発生していることも興味深い」と話す。

 田面木氏は、「売ることを前提に物を大事に扱う人が増えている。物が循環することで経済そのものが活性化していくことをめざして、創業以来試行錯誤を繰り返してきた。循環型社会をメルカリが後押しできている」と自負する。

 CDをストックすることに価値を見いだすなど従来のように長く物を所持したい人も多くいる中で、フリマアプリやサブスク(定額制サービス)を通じて買わない、所有しないスタイルの人も増えてきている。

 「興味を持つ、購買する、使うという従来はまっすぐだったラインから、各人のライフスタイルや対象となるモノによって縦横無尽に柔軟に移動する時代になっている」(酒井氏)。こうした消費者の行動を前提とした商品企画やマーケティングが必要になってくるだろう。

(写真/北川 聖恵)