民間気象会社のウェザーニューズが天気アプリ「ウェザーニュース」で、ユーザーの現在地の気象状況に連動した広告配信を開始した。天気連動広告としては後発だが、独自の1kmメッシュによる精度の高い気象データが強みで、購買意欲向上などの効果が期待できるという。

 天気連動広告は、ユーザーの位置情報と気象データを掛け合わせたサービスだ。ユーザーがいる地域の天気に合わせて表示される広告が変化し、天候や気温などで売れ筋が変わる商品ジャンルのプロモーションに効果がある。例えば、気温によって冷たい飲料と温かい飲料の広告を出し分けたり、紫外線や乾燥などの状況に合わせて化粧品の広告を出し分けたりすることができる。

ユーザーの位置情報と気象データを掛け合わせ広告を出し分ける、ウェザーニューズの天気連動広告
ユーザーの位置情報と気象データを掛け合わせ広告を出し分ける、ウェザーニューズの天気連動広告
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 ウェザーニューズが2020年7月2日から始めた天気連動広告は、累計ダウンロード数2000万以上の人気アプリ「ウェザーニュース」のトップページに表示される。ウェザーニューズが広告を手掛けるようになったのは19年からと最近のことで、天気連動広告もすでに多くの企業が手掛けており、後発になる。

 ウェザーニューズが強みとするのは天気連動の精度。そのベースになっているのは17年7月より提供を開始した独自の1kmメッシュ(1km四方)の細かい気象データだ。これまでの天気連動広告は、気象庁の気象データをベースにしたものがほとんどで、ウェザーニューズによればメッシュにすると20kmメッシュになるという。天気はメッシュ内の平均で表示されるため、例えば「晴れ」と表示されたメッシュがあっても、その中の一部エリアでは雨が降っていたり、曇っていたりすることがあり、気象データに連動した広告を表示しても、ユーザーのいる地域の天気と食い違う可能性がある。ウェザーニューズの天気広告はメッシュを細かくすることで、表示される広告と実際の天気の食い違いを減らして精度を高めたところに特徴がある。

ウェザーニューズが以前に使用していた5kmメッシュの気象データ(左)と、17年7月より提供開始した1kmメッシュの気象データ(右)の比較。赤枠の部分は5kmメッシュだと晴れとされるが、1kmメッシュで見るとその中に雨や曇りのエリアもあることが分かる
ウェザーニューズが以前に使用していた5kmメッシュの気象データ(左)と、17年7月より提供開始した1kmメッシュの気象データ(右)の比較。赤枠の部分は5kmメッシュだと晴れとされるが、1kmメッシュで見るとその中に雨や曇りのエリアもあることが分かる
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 ウェザーニューズ トランスプラットフォーム事業部 上山亮佑チームリーダーは「これまでの天気連動広告は情報の解像度が粗く、それをベースにした広告では本当に天気と連動しているのかという疑問が払拭できない。ウェザーニューズは業界で一番細かい1kmメッシュで、5分ごとに更新される天気予報を行っており、それをベースにした精度の高い天気連動広告が提供できる」と強みを語る。

 広告は、天気、気温、湿度、消費者の体感から算出した独自の体感指数に基づいて出し分けている。現在は「晴れ」や「雨」といった大まかな天気に合わせて広告を出し分けたいというクライアントが多いが、気温、雨量、湿度などの変化に合わせて細かく出し分けることもできる。出稿金額は50万円からとなっている。

 主に気温、雨、湿度が売れ行きに関係する業種に向いており、小売り、飲料、クリーニング、化粧品、製薬など様々な業種から相当数の問い合わせがあるという。「通常のネットワーク広告の2倍以上のクリック率を出せると考えている。クライアントに“やってよかった”と思ってもらえる天気連動広告にしたい」(上山氏)。

売れ行きと気象データの関係が販売戦略に役立つ

 広告を出したあとは、データを積み重ねていくことで製品の人気が高まる気象条件が把握できる。例えば「晴れ」を気象要素にした広告で、気温が20度~24度のときのクリック率と26度~29度のときのクリック率を比較して後者の方が高い結果が出たら、その製品のターゲットとなる気温は26度~29度だと分かる。

出す広告を決める気象要素の例。「晴れ」「雨」など大まかに設定することも、気温や体感指数などを細かく組み合わせて設定することもできる
出す広告を決める気象要素の例。「晴れ」「雨」など大まかに設定することも、気温や体感指数などを細かく組み合わせて設定することもできる
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 製品が売れそうな気象条件が分かれば、あらかじめ広告をセットしておき、タイマーのようにその条件がそろったときに出すこともできる。例えば虫よけスプレーのこれまでの販売データと当時の気象データを突き合わせれば、売れ始める気象条件が推察できる。その条件をトリガーに設定しておけば、蚊が出て消費者が虫よけスプレーを買い求めるタイミングを狙い撃ちした広告が出せる。これまで大まかに決めていた広告を出すタイミングを、気象データの裏付けがある形で的確に設定できる。

 「これまでの販売データなどをいただければ、ウェザーニューズが持つ過去の気象データと突き合わせて、売れ行きと気象の関係性を見つけ出し、マーケティングの支援ができる」(上山氏)。

 ウェザーニューズは、ビジネスと気象データの関係を分析する「ウェザーテック」と呼ぶ取り組みを行っており、天気連動広告もそのひとつ。今後は気象データの活用を大きなビジネスにしていきたい考えだ。

 「天気連動広告を通じて、クライアントに消費者と天気の間に関係があることを分かってもらえれば。そうなれば、広告以外のビジネスにも気象データを生かしてもらえる」(上山氏)。

 上山氏によると、デジタルトランスフォーメーションが進んで販売データなどをデジタル化したのはいいものの、その活用方法に悩む企業は多いという。そうした企業にとって、気象データを掛け合わせることが、ビジネスを予測する鍵になりそうだ。

(写真提供/ウェザーニューズ)