キリンビールは旗艦ブランド「一番搾り」から、糖質ゼロのビールを酒税改正後の2020年10月6日に発売する。ビールジャンルで糖質ゼロは日本初。健康志向の高まりによる糖質オフニーズに応え、酒税改正による価格低下の好機を生かす狙いだ。

2020年10月6日発売「一番搾り 糖質0」。価格は未定だが、想定価格は現行価格とほぼ同じになるという。現行のコンビニ価格は350ミリリットルで税込み228円、500ミリリットルで同299円
2020年10月6日発売「一番搾り 糖質0」。価格は未定だが、想定価格は現行価格とほぼ同じになるという。現行のコンビニ価格は350ミリリットルで税込み228円、500ミリリットルで同299円

 「一番搾り 糖質0(ゼロ)」は日本初の糖質オフビール。これまで「糖質オフ」や「糖質ゼロ」は発泡酒や新ジャンルのフィールドだった。ビールは麦芽の使用率が50%以上と法律で定められており、麦芽量が増えるほどビールならではのおいしさが生まれる半面、糖質量も増える。そのためビールで糖質ゼロを実現するのは至難の業といわれてきた。しかしキリンは5年の開発期間をかけ、麦芽選びから始めた新しい糖質オフ製法と、一番搾り麦汁を使用する「一番搾り製法」とを掛け合わせ、糖質ゼロとおいしさの両立に成功したという。この新製品で、キリンは糖質オフやゼロ系の既存ユーザーに加え、健康意識の高いビール飲用者を狙う。

コロナ禍による健康意識の高まりから糖質オフ・ゼロ系の需要が伸びた(20年1~7月)
コロナ禍による健康意識の高まりから糖質オフ・ゼロ系の需要が伸びた(20年1~7月)

 糖質0の投入は、2020年10月に施行される酒税税率の改正も視野に入れている。同社の布施孝之社長は「おいしくすっきりとした味覚。培った技術力を駆使して酒税改正のタイミングに合わせて発売できる。ビール市場活性化につなげたい」と意気込む。発売後3カ月の販売目標は120万ケース。コロナ禍で試飲会などの販促が打てないなか、大々的なCM戦略やデジタルを駆使したプロモーション策を講じる。同じくコロナ禍で低価格商品への需要が増加し、単価アップを求める小売店側からも、非常に高い評価を得ていることから、逆境における連携策も模索するという。

キリンビールの布施孝之社長は、「ビール市場への新しい提案で、ビールカテゴリの活性化を図る」と意気込む
キリンビールの布施孝之社長は、「ビール市場への新しい提案で、ビールカテゴリの活性化を図る」と意気込む

絞ったマーケティングで好調の一番搾りに2本目の柱

 糖質0の開発に踏み切った背景には、健康意識の高まりからビール離れが進んでいる現状がある。「お酒の飲用者の健康意識は8割にも上り、特に近年は糖質を気にする人が5割強に上昇した」(常務執行役員マーケティング部長の山形光晴氏)。コロナ禍でさらに高まった健康意識は、今後も衰えることはないと考えている。

常務執行役員マーケティング部長の山形光晴氏は「世界に類を見ない製品」と手応えをにじませる
常務執行役員マーケティング部長の山形光晴氏は「世界に類を見ない製品」と手応えをにじませる
現状の糖質オフ・ゼロ市場の構成比が4:6で、ゼロのニーズは高いと見る
現状の糖質オフ・ゼロ市場の構成比が4:6で、ゼロのニーズは高いと見る

 「一番搾り」は17年にマーケティング戦略を見直し、分散していたマーケ投資を主力ブランドに絞ったことが奏功し、主に缶の売り上げが好調だという。17~19年は3年連続でプラス成長を果たし、20年はコロナ禍の影響もあり1~7月は前年比98%にとどまるものの、市場平均(同96%)を上回った(全国小売店パネル調査データ)。

 キリンビールによると、ビールや発泡酒・新ジャンルに対するユーザーニーズのトップは「おいしさ」で、一番搾りは「おいしさ」のイメージが競合と比べて最も高いという(19年キリンビール調べ)。同社は一番搾りをフラッグシップブランドとして「日本のビールの本流」とすべく今後も注力する。そこに糖質0を2本目の柱にすることで、新規ユーザーの獲得を狙う。

 実は「麦芽100%」が売りの一番搾りだが、糖質0は100%使用ではないという。ブランドイメージを毀損する懸念に対し、山形氏は「麦芽100%よりもおいしいというブランドイメージのほうが高い。おいしいビールを提供し続ければ、ブランドのDNAは守れる」と断言する。

 26年の酒税一本化に向けて段階的に酒税が変更される。第1弾の20年10月は、ビールの酒税が77円から70円に下がり、これまで低価格で訴求してきた新ジャンルは28円から37.8円に上がる。酒税改正とコロナ禍で加速する健康意識の高まりを、追い風としてうまく捉えられるか。酒税改正後も価格面では依然として新ジャンルが有利なだけに、キリンが掲げる「ビールのおいしさ」を十分訴求できるかどうかが、競合他社の参入もあり得る“糖質ゼロビール市場”の将来を占うカギにもなるだろう。

2026年までに段階的に酒税が改正される
2026年までに段階的に酒税が改正される
技術開発を担当した飲料未来研究所の廣政あい子氏。通常の製品開発では数十回程度の試験醸造を、350回以上繰り返したという
技術開発を担当した飲料未来研究所の廣政あい子氏。通常の製品開発では数十回程度の試験醸造を、350回以上繰り返したという

(写真提供/キリンビール)


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