コオロギやイモムシを食べる“昆虫食”。ゲテモノ扱いされがちだが、世界の食糧危機を救う食材として注目されている。日本では昆虫食の自動販売機が出現。ちょっとした観光スポットとして、食事会などの場を盛り上げるツールとしての需要が多い。女子向けに特化して商品展開するものもある。

食用の昆虫を販売する自販機が都内5カ所に設置されている。写真はアメ横センタービルで稼働中のもの。昆虫の姿そのままの商品やコオロギ粉末を練り込んだせんべい、うどんなど食品が多数。飲料はタガメサイダーがあった。価格は450~2700円
食用の昆虫を販売する自販機が都内5カ所に設置されている。写真はアメ横センタービルで稼働中のもの。昆虫の姿そのままの商品やコオロギ粉末を練り込んだせんべい、うどんなど食品が多数。飲料はタガメサイダーがあった。価格は450~2700円

 コオロギ、タガメ、タランチュラ、イモムシ、サソリ、カブトムシ――昆虫食を売る自販機には、これら食用昆虫を詰めた容器が整然と並ぶ。

 「バッタやコオロギは、素揚げし、塩を振ってパッケージに詰める。この手順はポテトチップスと同じ。香りは居酒屋で食べる川エビの唐揚げに近い。昆虫もエビも硬い殻を高温で揚げるのでどちらも香ばしい。とはいえ、味は虫の種類によって異なる」

 こう話すのは、コインロッカーや自販機、ATMなどの設置・管理を手掛けるティ・アイ・エス(東京・台東)の営業開発主任の近藤俊一氏。2020年に入ってから、同社は都内3カ所に昆虫食の自販機を新しく設置し、運営を始めた。アメ横センタービルとアメ横プラザ(20年3月設置)に加え、直近では中野ブロードウェイ(同6月30日)でも稼働開始。設置するそばから購入し、SNSに投稿する人もいるという。

2020年6月30日に中野ブロードウェイに設置された昆虫食の自動販売機。ゲームセンターの入り口に近く、若者がよく通りかかる場所だ
2020年6月30日に中野ブロードウェイに設置された昆虫食の自動販売機。ゲームセンターの入り口に近く、若者がよく通りかかる場所だ
2020年3月に設置されたアメ横センタービル1階、入り口正面の昆虫食自販機
2020年3月に設置されたアメ横センタービル1階、入り口正面の昆虫食自販機

2013年の国連機関の報告書がきっかけ

 昆虫食が注目を集め始めたのは、国際連合食糧農業機関(FAO)が13年に公表した報告書がきっかけだ。同報告書では、食糧・飼料問題対策として昆虫に注目した。これをきっかけに、昆虫食は栄養価が高く、牛や豚に比べて養殖する際に地球環境に与える負荷が少ないという認識が広まり、欧米を中心にコオロギの養殖場やメーカーなど昆虫食関連のビジネスが生まれた。

 ティ・アイ・エスの仕入れ先の1つで、昆虫食専門の通販サイト「バグズファーム」を運営するアールオーエヌ(埼玉県戸田市)の辻ひろあき氏によると、広く一般の人が目を向けるようになったのは、もう少し後。18年1月にEU(欧州連合)加盟国で昆虫を「Novel Food」(ノベルフード=新食品)と認可したことが大きいという。

 「虫も食べ物だという“お墨付き”が与えられたことで、コオロギ食材のお菓子やメニューが増えた。『なんだこれ、食べられるじゃん』という感じで少しずつ売れ始めた」(辻氏)。同社では18年11月、主事業であるダーツ用品の卸と小売りに加え、昆虫食の取り扱いを開始した。現在扱う昆虫の種類は約30種、95%をタイから輸入している。それらは、ティ・アイ・エスなどが設置する自販機ほか、飲食店、量販店にも納品している。

バグズファームで販売しているヨーロッパイエコオロギ。15グラムで1000円(税別)
バグズファームで販売しているヨーロッパイエコオロギ。15グラムで1000円(税別)

 製品化のための加工方法は、虫の種類によって異なる。コオロギやバッタは素揚げするのが一般的。幼虫系は水分が多く、そのまま揚げるとはじけるので一度ボイルして乾燥させる。大きな昆虫は塩漬けにすることもあるという。

 味付けは塩味だけではない。姿はそのまま、キャラメルやバーベキューのフレーバーを使って、虫だということを忘れさせるような味付けにしたり、姿を見ながら食べるのは苦手という向きには、コオロギ粉末を練り込んだうどんやせんべい、プロテインバーなどに加工したり。形すら残さず、抽出したエキスを入れた「タガメサイダー」もある。これらはいずれも自販機で販売しており、物珍しさに試してみる“初心者”から、昆虫を自分で調理して食べる“上級者”まで対応できるラインアップを心掛けたという。

 賞味期限は飲料より短い。揚げて塩を振った“姿”タイプは長くて1年、しかも輸入品なので届いた時点で10カ月を切っていることが多い。

「タガメサイダー」も自販機に並ぶ。「抽出したエキスは青リンゴみたいな香り。おいしいですよ」(近藤氏)
「タガメサイダー」も自販機に並ぶ。「抽出したエキスは青リンゴみたいな香り。おいしいですよ」(近藤氏)