横浜DeNAベイスターズ(横浜市中区)は2020年8月11日の阪神戦でVR(仮想現実)球場のオンライン観戦を実施した。「バーチャルハマスタ」はCGで再現した横浜スタジアムにアバターを使って入場し、グラウンドの巨大スクリーンで試合を観戦するもので、当日は約3万人が参加したという。

2020年8月11日の無料トライアルで約3万人の観客を集めた「バーチャルハマスタ」。今後は「他視点」「双方向通信」といった機能も追加される予定だ
2020年8月11日の無料トライアルで約3万人の観客を集めた「バーチャルハマスタ」。今後は「他視点」「双方向通信」といった機能も追加される予定だ

球場観戦、中継観戦に続く第3の観戦スタイル

 バーチャルハマスタは、仮想空間のイベントを楽しめる「cluster(クラスター)」アプリを利用し、CGで再現された横浜スタジアムで試合を視聴するという新しい観戦スタイル。「cluster」アプリはスマートフォンおよびパソコン、VRデバイスに対応している(VRデバイスの場合は「SteamVR」のインストールも必要)。

 ユーザーはオリジナルのアバターでエントランスから球場に入り、コンコースからベンチを通ってグラウンドに出る。グラウンドには「センタービジョン」と呼ばれる巨大スクリーンがあり、そこに集まったファンと一緒に試合を観戦する流れだ。

アバターの“観客”は球場の外からエントランスを通って中に入る
アバターの“観客”は球場の外からエントランスを通って中に入る
コンコースにはサイネージやショップの演出も
コンコースにはサイネージやショップの演出も

 横浜DeNAベイスターズでは、球場での観戦、テレビやネットでの観戦に続く“第3の観戦スタイル”としてバーチャルハマスタを確立していく考え。同社ブランド統括本部長の林裕幸氏は「新型コロナウイルス感染症流行の影響で、球場の観客数は現状5000人を上限にしている。(バーチャルハマスタは)地方のファンなども含め、なかなか球場に来られない人の選択肢になる」と話す。

 バーチャルハマスタを開発したのは、2019年8月にベイスターズとパートナーシップを締結したKDDI。両社は5G(第5世代移動通信システム)を使った「スマートスタジアム」の実現を目指していたが、コロナ禍によってプロジェクトの見直しを余儀なくされ、バーチャルハマスタの開発に至ったという。

 バーチャルハマスタが面白いのは、エリアの制限はあるものの、オリジナルのアバターが球場内を動き回れること。球場に集まったファン同士でコミュニケーションが図れるチャット機能も搭載している。現実では関係者しか入れないベンチで"自撮り"ができたりするのもバーチャルならではだろう。もちろん、ホームランが出ると花火が打ち上げられたり、7回裏にはゴム風船が飛び交ったりと、実際の球場で見られる演出も用意されている。

ホームランが出たときに見られる花火の演出
ホームランが出たときに見られる花火の演出
ラッキーセブン(7回)のお約束、ゴム風船が飛び交う演出も
ラッキーセブン(7回)のお約束、ゴム風船が飛び交う演出も

 開発に携わったKDDI パーソナル事業本部 サービス統括本部 5G・xRサービス戦略部長の繁田光平氏は「みんなで応援している状態を可視化することが重要だった。巨大スターマン(ベイスターズのマスコット)など、バーチャルらしいド派手な演出を盛り込んだ」と語る。

 当面の間バーチャルハマスタの利用は無料だが、ベイスターズとしては観戦に訪れたファンの声などを取り入れながらサービスを改善し、なるべく早く有料化したいという。

 林氏によれば「バーチャルハマスタを持続可能なビジネスにするには収益化が欠かせない。入場料に加えてスポンサード、物販など、いくつか方法はあるが、運用については今後の話し合いで決めていく」とのことだ。

 開幕戦の遅れ、「セ・パ交流戦」や「オールスターゲーム」の中止など、プロ野球もコロナ禍で大きなダメージを受けている。しかし、バーチャルハマスタが軌道に乗れば、新しい収益源として期待できる。バーチャルハマスタで採用されている技術は演劇や音楽コンサートにも応用が利くので、収益の落ち込みに苦しむエンターテインメント業界からも注目を浴びそうだ。

(写真提供/横浜DeNAベイスターズ)