横浜駅西口の新しいランドマーク「JR横浜タワー」。その中には、「NEWoMan(ニュウマン)」ブランドでは新宿に次ぐ2店舗目となる「ニュウマン横浜」がオープンした。特徴は地元・神奈川県に根差した素材や商品を集めた「2416 MARKET(マーケット)」や、ゆったりとした空間構成だ。新宿とは異なる戦略を取材した。

JR横浜タワーに「ニュウマン横浜」がオープン。同タワーには他にショッピングセンターの「CIAL(シァル)横浜」、横浜駅直結の映画館「T・ジョイ横浜」が入居している
JR横浜タワーに「ニュウマン横浜」がオープン。同タワーには他にショッピングセンターの「CIAL(シァル)横浜」、横浜駅直結の映画館「T・ジョイ横浜」が入居している

 JR横浜タワーがあるのはもともと、横浜ステーシヨンビルなどが建っていた場所。横浜駅商業施設の再開発に伴い、同ビルが2011年に閉館し、以来、建て替え工事が進められていた。そして20年5月30日にJR横浜タワーが開業。その1~10階にニュウマン横浜が入店し、6月24日にオープンした。

 ニュウマン横浜の開発コンセプトは「STORY…ING」。「新時代を自由に生きるヒトとともに、STORY(=物語)をクリエイションし続ける場所」だとしている。ターゲットは30代後半~40代で、20~30代が主な利用者の「ルミネ」ブランドのファッションビルを卒業してしまった大人の女性を狙う。

 同じニュウマンでも新宿店と異なるのは、テナントとなる店のチョイスだ。ルミネ(東京・渋谷)が運営するファッションビルとしては初めて、グッチやティファニー、サンローランなどのラグジュアリーブランドが出店。また同社が初めて総合プロデュースした「2416MARKET」は、神奈川県の物産に焦点を当てた地域密着型マーケットだ。これら初出店の店舗を含め、115店が並ぶ。

フロアごとにコンセプトを決め、テナントを厳選。6階は「Open relax 自然体になる」をテーマに、2416MARKETやニュウマン初となるアウトドアメーカーのSnow Peak、雑貨などを扱う無印良品などが入居している
フロアごとにコンセプトを決め、テナントを厳選。6階は「Open relax 自然体になる」をテーマに、2416MARKETやニュウマン初となるアウトドアメーカーのSnow Peak、雑貨などを扱う無印良品などが入居している

地元愛が強い神奈川人の心をつかむ

 この新しい試みの理由について、ルミネ取締役でニュウマン横浜店長の金子岳史氏は「新宿と横浜では客の質が全く違うため」と説明する。

 「新宿は人の出入りが激しく流動的で、広域的に集客できる場所。対して横浜は、都心でもあり郊外でもある土地柄。地元愛の強い人が多い場所でもあるので、新宿と同じ客数を稼げても、地元の人たちにきちんとご利用いただけるようにしなければ成り立たない」と続ける。

 そこで考えついたのが、神奈川県の品々を集めたルミネプロデュースの大型マーケット「2416MARKET」だった。神奈川県の総面積2416平方キロメートルに由来して名付けられたこのエリアは、「もっと地元が好きになる」をコンセプトに、直営飲食店「800°DEGREES」の2店舗、パスタ、雑貨、ベーカリー、ワイン・酒などを扱う5店舗の計7店舗で構成する。いずれも、地元の食材や地元に根付いた商品を求める顧客のニーズを満たし、繰り返し利用してもらうのが狙いだ。

6階にある「2416MARKET」には、神奈川県内にあるベーカリーの人気商品を集めた「2416MARKET BAKERY(2416 マーケット ベーカリー)」など、7店舗が集結している
6階にある「2416MARKET」には、神奈川県内にあるベーカリーの人気商品を集めた「2416MARKET BAKERY(2416 マーケット ベーカリー)」など、7店舗が集結している

 また、これまでのルミネにはないラグジュアリーブランドを誘致したのは、新規顧客獲得のため。ただ、横浜駅周辺には高島屋をはじめとした百貨店があり、ラグジュアリーブランドが入店している。それら店舗から新たな顧客を引き込めるのか。

 この疑問に金子氏は、「富裕層が購入するイメージの強いラグジュアリーブランドだが、バッグやサングラスだけなら持っている人の層はもっと広い。その人たちに、来店してもらえれば、顧客獲得のチャンスになる。また、ラグジュアリーブランドにも新規顧客を獲得したいという思いがあり、ニュウマン側と思いが一致した」と答えた。

店舗や通路の面積は新宿より広く

 ニュウマン新宿と違っているのは店舗ラインアップだけではない。店舗一つひとつの面積や通路などの広さも新宿より広くした。売り場面積は1万3000平方メートルと、新宿(7600平方メートル)の約1.7倍となっている。これには、顧客にゆっくり買い物をしてもらい、滞在時間を延ばしたいという思惑があるそうだ。

 「通常の百貨店はメンズやレディースといった顧客カテゴリーの他に、コスメや靴など業種ごとでもフロアを分けがちだ。だが、ルミネが運営するファッションビルでは、様々な店舗を見て新たな発見を誘発してもらえるよう、ファッションや雑貨、コスメ、レストラン、カフェなど、異なる業種をワンフロアに展開している。これはニュウマン新宿も同じだが、ニュウマン横浜ではコスメや飲食をより多めにした。コスメは好調な業種だからだが、飲食を増やしたのは、ゆっくり滞在して時間を消費してもらうためだ」(金子氏)

 他にも、百貨店ではよくあるVIP用のラウンジもルミネ運営のファッションビルで初めて導入した。これも、ニュウマン横浜でより多くの時間を消費してもらえるように期待してのものだ。

通路は広めに設計してある。4人が横並びで歩いても余裕がありそうなほど
通路は広めに設計してある。4人が横並びで歩いても余裕がありそうなほど
ラグジュアリーブランドで買い物をするような所得の高い顧客の利用を想定して用意した7階のラウンジ。年間購入額に応じてランクが変わり、VIPとSVIPが利用できる
ラグジュアリーブランドで買い物をするような所得の高い顧客の利用を想定して用意した7階のラウンジ。年間購入額に応じてランクが変わり、VIPとSVIPが利用できる

コロナ禍での開業に対する施策

 ニュウマン横浜はもともと、20年5月30日にオープンの予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で外出自粛明けの6月24日に延ばした。新型コロナが収束しない中、いまだ手探りでの営業が続く。

 現在は、店員のマスク着用や手洗い・うがいの徹底、体調管理、顧客と店員の距離の配慮、店舗ごとの消毒液の設置といった新型コロナ対策を各テナントに要請し、運営している。また、ビル全体として、換気や館内の消毒、来店者カウントシステムを使った来店者数の把握を実施。混雑時には、店舗ごとに入場規制するなどの措置も取っているという。

開業日の6月24~28日の5日間は、入り口に設置したサーモグラフィーカメラで検温を実施した
開業日の6月24~28日の5日間は、入り口に設置したサーモグラフィーカメラで検温を実施した

 「今は広域からの集客は考えず、地元の人にリピーターを増やしてじっくり売っていきたい。百貨店に限らず小売りは厳しい状況だ。お客様の街への出方はいっときに比べたら戻ってきているが、元の状態には届かない。今来ていただいている一定のお客様に対してできることを探っていくしかない」と金子氏は話す。

 それでも手応えは感じているようだ。「オープン当日は多くの顧客が来店することが見込まれたため入場規制を行ったが、その後は実施していない。新型コロナの影響は受けつつも、ターゲットとしていた年齢層を中心に、幅広い年齢の人たちが来店している」と語った。

ニュウマン横浜店長の金子岳史氏。東口のルミネ横浜で長年店長を務めた金子氏は「東口と西口では客層が違う。西口は年配の夫婦や若い男性のグループが多く来店していて、東口では見かけなかった人たちが来てくれている」と話す
ニュウマン横浜店長の金子岳史氏。東口のルミネ横浜で長年店長を務めた金子氏は「東口と西口では客層が違う。西口は年配の夫婦や若い男性のグループが多く来店していて、東口では見かけなかった人たちが来てくれている」と話す

 今後は、ルミネやニュウマンの利用者向けに発行しているポイントカード「LUMINE CARD(ルミネカード)」を活用したマーケティング施策も検討する。金子氏は「現状の分母としては、既存店の会員数の割合が大きいので、今後はニュウマン横浜の会員数も増やしていく。まだオープンしたばかりで分析できるほどのデータがたまっていないが、いずれはマーケティングなどに生かしていきたい」と結んだ。

(写真/吉成早紀)

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