新型コロナウイルスの感染拡大でリアルの展示会の開催が難しい状況下、ゲームや広告、Webサービスなどを手がけるカヤックが、新たなオンラインイベントのプラットフォーム「Remobiz(リモビズ)」を発表した。最大の特徴は、VR(仮想現実)などを駆使したはやりの3Dイベントではなく、あえて「2D」にしたこと。その狙いを、カヤックのプロデューサー・唐沢浩介氏に聞いた。

「リモビズ」のオンラインイベントのトップ画面イメージ
「リモビズ」のオンラインイベントのトップ画面イメージ

 「こんなイベントツールを探していた」「これでいいんだよ」——。

 2020年7月7日にカヤックがWebベースのオンラインイベントツール「Remobiz(リモビズ)」を発表すると、そんな反響が多く寄せられた。開発を主導したプロデューサーの唐沢浩介氏は、会心の笑みを浮かべる。「出展者や参加者はシンプルで使いやすいオンラインイベントツールを求めているはず」という読みがピタリと当たったからだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大が勢いを増し、20年4月に緊急事態宣言が発令されると、多くの人が集まる展示会、商談会は軒並み中止を余儀なくされた。そんな中、オンラインで展示会を開催しようという動きも増えている。ところが、既存のオンラインイベント向けツールの大部分は、VR(仮想現実)空間の中で展示会を再現するものばかり。例えば米6Connexや米vFairsなどが代表例といえるが、現実の展示会に近い体験を提供できる半面、3Dのコンテンツを作るのはハードルが高く、イベントの主催者や出展者の負担が大きい。

唐沢浩介氏。鎌倉生まれ、鎌倉育ち。ティー・ワイ・オーでプロデューサーとして数多くの広告プロジェクトに参画。スウェーデン発のクリエイティブエージェンシーであるGreat Works China 移籍後、同社CEOを経て、現在、地元の鎌倉に本社がある、面白法人カヤックのプロデューサーとして、体験デザイン/コミュニケーションを主軸に活動。昨今のデジタルシフトに対応する体験を、自社の技術で提案・実装するチーム[BOOST]を発足
唐沢浩介氏。鎌倉生まれ、鎌倉育ち。ティー・ワイ・オーでプロデューサーとして数多くの広告プロジェクトに参画。スウェーデン発のクリエイティブエージェンシーであるGreat Works China 移籍後、同社CEOを経て、現在、地元の鎌倉に本社がある、面白法人カヤックのプロデューサーとして、体験デザイン/コミュニケーションを主軸に活動。昨今のデジタルシフトに対応する体験を、自社の技術で提案・実装するチーム[BOOST]を発足

 唐沢氏は、そこに目を付けた。展示会を「対話機会の最大化」と捉えれば、3Dのリッチなコンテンツは不要だと考えた。本当に必要なのは、例えば誰でも簡単に参加・運営でき、かつ出展者を一覧しながら興味があるブースを見つけやすいこと。そして各社の展示内容を動画や画像、テキストで詳しく見られることだ。

 あとは出展担当者とビデオチャットで商談ができれば、「対話の場」としての展示会は成立するはず。参加者にとっても3D空間を自在に使いこなすにはある程度のスキルが求められるが、使い慣れたWebページ形式であれば、デジタルリテラシーに左右されることなく利用できる。利用者が求める本質を捉えた「引き算」の発想だ。

 そうして唐沢氏は、コロナ禍が本格化した20年4月にリモビズを企画し、需要があると見るや、すぐさま開発をスタート。7月7日の発表と同時に予約受け付けを開始し、10月にリリース予定というスピード感でサービスを作り上げた。リモビズは、オンライン展示会の他、オンラインで行う採用イベントやライブeコマースといった利用例も提案している。

ブースを訪れ、ビデオチャットで商談

リモビズの出展者ブース画面のイメージ。待機している展示ブースの担当者とビデオチャットで商談可能
リモビズの出展者ブース画面のイメージ。待機している展示ブースの担当者とビデオチャットで商談可能

 では、リモビズの機能について詳しく見ていこう。まず、参加者はWebブラウザーを使って展示会を見て回ることができる。最初にニックネームとアイコンの設定こそあるが、アカウント登録やログインは不要だ。展示会のトップページには、まるでスマホの画面のようにバナーやアイコンが並び、基調講演など動画のライブ配信も表示できる。一つ一つのアイコンが、いわゆる「展示ブース」の役割を果たす。面白いのは、各ブースなどの下には現在ブースを訪れているユーザーのアイコンがリアルタイムで表示されること。他の参加者の存在を可視化することで、展示会のにぎわいを演出する工夫だ。

 出展者のアイコンをクリックすると、その出展者ブースのページが開く。出展者はこのページを自由に作り込むことができ、YouTubeやSlideShareなど外部サービスとの連携を含め、動画や画像、プレゼンテーション資料など、さまざまなコンテンツを使って製品やサービスを紹介可能だ。

 さらに、出展者はページ上に待機している担当者の顔写真入りアイコンを表示できる。ページを訪れた参加者がそのアイコンをクリックすると、待機している担当者とビデオチャットで話すことが可能。実際の展示会で展示ブースの担当者に詳細な説明を聞いたり商談したりするのと同様の体験を、ビデオチャットで再現しているわけだ。出展者は最大で10人までの担当者を登録でき、参加者側は最大5人まで担当者との商談に参加可能だ。

特徴的な画面共有機能。ブラウザーやPDF、パワーポイント資料を共有しながら、書き込むことが可能
特徴的な画面共有機能。ブラウザーやPDF、パワーポイント資料を共有しながら、書き込むことが可能

 商談のためのビデオチャット機能も、カヤックの独自開発だ。追加アプリケーションをインストールすることなく、Webブラウザー上でそのままビデオチャットに移行できる。名刺の画像ファイルをドラッグ&ドロップで送れる名刺交換機能や、URLを送るときに便利なテキストチャット機能も用意されている。また、画面を共有して同じ資料を見ながら説明することも可能で、資料に手書きで文字や線を書き込む機能もある。お互いの距離を感じやすいリモートコミュニケーションだからこそ、「リアルタイムの書き込み機能は必須だと考えている」と唐沢氏は説明する。

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