ポケモン(東京・港)は2020年8月12~31日、バーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェスト」を開催する。VR(仮想現実)空間上にアトラクションやイベント、ショップなどを再現した大掛かりなもので、スマートフォンアプリで体験できる。

バーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェスト」
バーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェスト」

 withコロナ時代になり、イベントなどのエンターテインメントビジネスは大きな変化を迫られている。リアル空間に大勢の人が集まることが制限され、イベント開催そのものが難しくなったからだ。そんな中、多くの企業が注目しているのが、バーチャル空間でのイベント開催である。

 ゲーム産業も動きだした。「ポケットモンスター」の商品企画などを手掛けるポケモンは2020年8月12~31日、バーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェスト」を開催している。

 これはスマートフォンなどを使って「ポケットモンスター」の世界を楽しむオンラインのイベント空間だ。「ポケモン」シリーズの世界観をイメージした多様なアトラクションやイベント、ショップ、ショーなどを用意。ネットを介して大勢が集い、一緒に盛り上がれる空間になっている。

バーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェスト」のエントランス。他のユーザーとの待ち合わせなどに適した場所だ
バーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェスト」のエントランス。他のユーザーとの待ち合わせなどに適した場所だ
参加者はこれらのアバターを操作して、バーチャル空間内の遊園地を散策する
参加者はこれらのアバターを操作して、バーチャル空間内の遊園地を散策する

 ポケモンは、この遊園地をクラスター(東京・品川)が運営するバーチャルSNS「cluster」内に構築した。clusterは、バーチャルユーチューバー(VTuber)・輝夜月(カグヤルナ)のバーチャルライブ「輝夜 月 LIVE@Zepp VR」や、CyberZ(東京・渋谷)が運営する国内最大級のeスポーツイベント「RAGE」のVR版となる「V-RAGE」、渋谷区公認の配信プラットフォーム「バーチャル渋谷」などにも活用されたバーチャルイベントのプラットフォーム。参加者はスマホやPC、VRデバイスなどを使ってclusterにログインし、アバターを操作して仮想区間を移動、互いに交流することができる。

ポケモン尽くしの巨大テーマパーク

 遊園地内は大きく4つのエリアに分かれている。そのうちの1つ、アトラクションエリアには、モンスターボール型の「ポケモンキョダイ観覧車」、パーク内をぐるりと1周する「ガラルマタドガスのわくわくトレイン」など、様々なアトラクションが用意されている。

 ストアエリアは、いわゆるグッズコーナー。ここには土産物店やアイスクリーム店などの店舗が立ち並んでいる。ここで入手した商品はパーク内で持ち歩くことが可能だ。「インテレオンの射的屋さん」「ダグトリオの輪投げ屋さん」など、簡単なミニゲームを楽しめる場も用意されている。

 のんびりと過ごすなら、ビーチエリアも楽しい。みんなで海上アスレチックで遊んだり、浜辺で写真を撮ったりすることができる。友達と一緒に思い出づくりを楽しむための場所だ。

 遊園地の中央には、イベント開催用のイベントステージもある。ここでは『ポケットモンスター ソード・シールド』のポケモンバトルのパブリックビューイングなどを開催する。ラスト3日となる8月29~31日には、ピカチュウのダンスショーや打ち上げ花火大会なども開催予定だ。

 こうしたテーマパークの他に、「リアル脱出ゲーム」を手掛けるSCRAP(東京・渋谷)が製作した「ミッション」と呼ばれるコーナーもある。これは参加者同士が力を合わせて謎を解く、バーチャル空間での脱出ゲーム。チャット機能などを使って互いに会話しながら、様々な謎を解いていく。迷路を通り抜けながら謎を解く「迷宮ミッション」、文字を集めて答えを探す「ワードパズルミッション」、暗号を解いて正解を導き出す「謎解きミッション」が用意されている。

テーマパーク内のアトラクションエリア。正面に見えるのが「ポケモンキョダイ観覧車」
テーマパーク内のアトラクションエリア。正面に見えるのが「ポケモンキョダイ観覧車」
ストアエリア。さまざまな買い物やミニゲームが楽しめる場所だ
ストアエリア。さまざまな買い物やミニゲームが楽しめる場所だ
ビーチエリア。カフェテラスでのんびり過ごすのもいい
ビーチエリア。カフェテラスでのんびり過ごすのもいい

誰もが参加できるバーチャル空間

 筆者はメディア向け体験会で一足先に体験してみたが、そこで感じたのは、ポケモンバーチャルフェスト全体が「ひと夏の思い出」というテーマで貫かれているということだった。

 バーチャル空間と聞くと私たちは「仮想現実」という言葉を連想し、現実と見まがうような精緻なCGでつくられた世界こそ優れていると思いがちだが、それは厳密には間違いだ。「バーチャル」という言葉は本来、「仮想の」ではなく「実質的な」という意味を持っている。

 とすると、ポケモンバーチャルフェストは、実に正しいバーチャル遊園地の姿と言える。決して実写のようにリアルなCG空間ではないが、遊園地そのものを表しているからだ。

 大人になった今、思い出してみよう。遊園地とは、誰と一緒に行ったか、 どんな会話をしたか、 みんな一緒にアトラクションに乗ってどんな気持ちを共有したか、さらには1人はぐれて迷子になったとき、どれほど不安だったかといった体験さえも、楽しい思い出として心に刻まれる場所だ。

 バーチャルな遊園地においても、そんな体験ができる環境を整えることが何よりも大切になる。だからこそ、ポケモンバーチャルフェストは専用のVR機器ではなく、手元のスマホで簡単にアクセスできるclusterをプラットフォームに選んだのだろう。人々がリアル空間に集まれず、共通の思い出をつくりづらいこの夏休み。誰もが気軽に集まり、思い出を共有できる、ひと夏限定の「実質的な遊園地」をつくったのである。

 同時にこの試みは、ポケモンという人気IP(キャラクターなどの知的財産)の力を借りて、まだまだ敷居が高いと思われていたバーチャルのエンターテインメントを老若男女が楽しめるものに変えていくきっかけにもなり得るだろう。

イベントステージでは全員が同じショーを見て盛り上がる体験ができる。これも貴重な夏の思い出になるだろう
イベントステージでは全員が同じショーを見て盛り上がる体験ができる。これも貴重な夏の思い出になるだろう

withコロナ時代の新しい体験会

 最後に余談だが、ポケモンバーチャルフェストは、メディア向け発表会の在り方にも新たな提案を行ったと筆者は感じている。

 ポケモンバーチャルフェストの発表会は現状に適応するように、ビデオ会議サービス「Zoom」で実施された。これ自体は他の発表会でもあること。だが、今回はこれにバーチャル空間の体験が加わった。メディア関係者はZoomを介してスタッフの説明を聞きながら、手元のスマートフォンやPCででclusterにログイン。ポケモンバーチャルフェストに入ってからは、スタッフが操作するアバターに先導されながら、自らのアバターでバーチャル空間を歩き、様々なアトラクションを体験する、という方式だったのである。

体験会の様子。リアル空間で行うのではなく、取材者はポケモンバーチャルフェストのエントランスに集合する
体験会の様子。リアル空間で行うのではなく、取材者はポケモンバーチャルフェストのエントランスに集合する
スタッフに先導され、参加者みんなでテーマパーク内を歩く
スタッフに先導され、参加者みんなでテーマパーク内を歩く

 これまでは、テレビゲームというデジタルなエンターテインメントの体験会であっても、リアル空間に人々が集まって開催されることが多かった。だが今回、Zoomとclusterを併用した完全リモート環境の体験会に参加してみると、こちらのほうがはるかにストレスが小さいことを実感した。Zoomで説明を聞きながら、実際にゲーム内(今回はclusterのポケモンバーチャルフェスト内)に入り、その世界を体験できるため、内容が理解しやすいのだ。分からないことがあれば、Zoomで質問できるし、発表会だけでは体験が不十分と感じたら、発表会後にバーチャル空間に残って、細部を確認することもできた。

 今後はこうした発表会ももっと開催されるようになるかもしれない。自宅やオフィスから参加できるリモートの発表会ならば、Zoomで話を聞きながら、手元の機器でサービスを体験することもできるからだ。抽選で選ばれた一般ユーザーを参加させることも容易になるだろう。withコロナ時代には、発表会や体験会のやり方も変わるかもしれないと予感させる発表会だった。


(c)2020 Pokémon. (c)1995-2020 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc. ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。
(c)2017 Cluster, Inc.
※画面は開発中のものです。
この記事をいいね!する