EGGS'N THINGS JAPAN(東京・港、以下エッグスンシングス)は、アフターコロナの接客システムとして、アバターを使った非接触型「AIアバターレジ」の実証実験を2020年10月に開始する。同社店舗で既に導入しているオンラインでの事前注文システムなどを強化する考えだ。
非接触とホスピタリティーの両立
「AIアバターレジ」の実証実験は、エッグスンシングスが進める、「Customer Along Service(カスタマー・アロング・サービス、以下CAS)」構想の一環だ。CAS構想とは「お客様一人ひとりに対する価値を提供できるITサービス」のこと。ITを活用して作業を効率化することで時間の余裕をつくり、客の趣味嗜好を把握した最適なサービス、ホスピタリティーの向上に充てるという。
現状、CAS構想は4つのシステムで構成されている。
このうち事前注文システムは、エッグスンシングスが運営するカジュアルレストラン「Eggs'n Things」および「Eggs'n Things Coffee」の一部を除く店舗で導入済み。テーブルオーダーシステムはEggs'n Things Coffeeの御殿場プレミアム・アウトレット店およびイーアス沖縄豊崎店で、カスタマートラッキングシステムは御殿場プレミアム・アウトレット店で実証実験が済んでいる。これら3つについては、近く販売を開始する見込みで、利用料は事前注文システムとテーブルオーダーシステムが月額2万~3万円程度、カスタマートラッキングシステムについては検討中とのこと。
実用化に向けた実証実験を20年10月に開始するAIアバターレジは、モニターに映った店員のアバターと会話することで、タッチパネルやスマートフォンを操作することなく注文を済ませることができる最新のシステムだ。次世代デバイスやAIなどの技術開発を手掛けるウェルヴィル(東京・港)が開発した対話エンジンを搭載しており、「ホウレンソウとベーコンのやつ(オムレツ)」といった曖昧な表現や、「(AとBは)どう違うのですか?」といった主語を省略した表現にも対応できるという。現状は日本語のみだが、将来的には外国語にも対応する予定。時期は未定だが、年内の販売開始を目標にしている。
EGGS'N THINGS JAPAN代表の松田公太氏は、リモートワークを導入する企業が増えるアフターコロナ/withコロナ時代には、東京都内の飲食店が減り、郊外の店が増えるとみている。郊外店の場合、ランチ難民が出るほどの都内に比べて売り上げが減るのは明らかで、接客スタッフを雇うほどの余裕はないかもしれない。「飲食店を始めたいが“ワンオペ”では(事業の継続に必要な客の数を)回せないという人は多い。しかし、注文・決済をITで無人化できれば、オーナーは料理を作ることに専念できる」(松田氏)。
また、4つのシステムを別々に販売する理由について松田氏は「CASのシステムは飲食業だけでなく、ホームセンターなどの小売りやホテルにも応用が利く。店舗や業態によっては事前注文システムだけでいい、テーブルオーダーシステムだけでいいというところもある」と説明する。
CASのシステムに共通する特徴は“非接触”だが、それが客と店舗スタッフとのコミュニケーション、つまりホスピタリティーの低下につながる心配はないか。この点について松田氏は「例えばカスタマートラッキングシステムの次のバージョンとして開発してるタグ付きのマイボトルは、購入履歴などが分かるようになっている。その履歴から店員がお薦めを提案するといったコミュニケーションも取れる。これはレジではできないサービスだ」と語った。
アフターコロナでは、飲食店に限らず“非接触”が大きなアドバンテージになる。そこに“ホスピタリティー”をどう加味していくかが接客業全般に共通するテーマとなりそうだ。
(写真提供/EGGS 'N THINGS JAPAN)