ニューバランスジャパン(東京・千代田)が新たなコンセプトショップ「T-HOUSE New Balance(ティーハウス ニューバランス)」を2020年7月17日にオープンした。世界的なフットウエアブランドが同店に投影したイメージは茶室。ここを起点にどんな展開を考えているのか。

T-HOUSE New Balance店内。内装には埼玉県川越市の蔵で使われていた建材を使用
T-HOUSE New Balance店内。内装には埼玉県川越市の蔵で使われていた建材を使用

外観からはニューバランスの店とは分からない

 T-HOUSE New Balanceが開店したのは東京・日本橋浜町。「ニューバランス」のロゴも屋号も見当たらない、白壁が異彩を放つ外観は蔵をイメージしている。内部はそれほど広くはないが、吹き抜けやガラス張りの壁面からの採光もあり、圧迫感はない。2階建てで1階が店舗、2階がニューバランスの「TOKYO DESIGN STUDIO(東京デザインスタジオ)」となっている。同スタジオのブランド「TOKYO DESIGN STUDIO New Balance」として発売される製品は、今後はここで企画・デザインされるという。

 1階の店舗ではTOKYO DESIGN STUDIO New Balance製品と、この店舗でしか買えないコラボ商品が置かれている。トータルのアイテム数は決して多くはない。それがT-HOUSE New Balanceがコンセプトショップであることを雄弁に物語っている。

 建物の意匠監修と内装設計を担当したのはスキーマ建築計画(東京・渋谷)の長坂常氏。プロジェクト開始当初、新たな建物の中に古い蔵を移築するというコンセプトに同氏は「博物館での古民家展示のような、張りぼて状態になる」と懸念を抱いていた。古い蔵の骨組みを新築の建物で覆う計画を立てたが、それでも「やや落ち着かない感じ」が残る。そこで移築した骨組みにハンガーラックなどの機能を持たせることで、「張りぼて」でなくなるようにデザインしたという。

蔵をイメージした「T-HOUSE New Balance」。外側からはニューバランスの店舗とは全く分からない
蔵をイメージした「T-HOUSE New Balance」。外側からはニューバランスの店舗とは全く分からない
吹き抜けと2階部分まで続くガラス窓があるため、建物の大きさの割に圧迫感はない
吹き抜けと2階部分まで続くガラス窓があるため、建物の大きさの割に圧迫感はない

 あえてこの立地を選んだことについて、広報を担当するデイリープレスの竹形尚子氏は「当初から日本橋浜町に建てることが決まっていたわけではない。ただ、ものづくりの伝統や文化が歴史の中で培われてきた“東京の東側”に作ろうということだけは決まっていた」と説明する。

 その条件に当てはまる物件を見つけたのがこの場所だった。人の流れの多い中心地ではなく、わざわざ足を運んでもらう場所である点にも意味がある。ニューバランスを支持するファン層を狙いたいのだ。

 「通りがかりにふらりと訪れるのではなく、ここだけを目的として足を運んでくださるような、コアユーザーとの接点となる場を目指している。ニューバランスを熱心に応援する方々をおもてなしする“茶室”のような場所にしたい」(竹形氏)

築122年という蔵から移築された骨組みに横木を取り付け、ハンガーラックとしての役割を持たせた。骨組みが什器(じゅうき)の一部を担っている
築122年という蔵から移築された骨組みに横木を取り付け、ハンガーラックとしての役割を持たせた。骨組みが什器(じゅうき)の一部を担っている

ストアオリジナルアイテムが並ぶ店内

 T-HOUSEの「T」には、「Tea」「Tokyo」「Transcendent(超越)」という3つの意味が込められている。Teaについては前述の竹形氏のコメントにもあるように、日本文化におけるおもてなしの精神を象徴する、茶室にインスピレーションを得ているとのこと。

 実際、同店では抹茶も販売している。東京の蔵前に店を構える「NAKAMURA TEA LIFE STORE」とのコラボ商品、T-HOUSE× NAKAMURA TEA LIFE STORE「MATCHA STICK & POUCH SET」がそれだ。静岡県藤枝で100年続く茶農家を母体とした日本茶ブランド「NAKAMURA」とのコラボで生まれたこの商品は、3グラムの抹茶をスティック状にパッケージング。「スポーツ時やアウトドアなどでもカジュアルに飲めるように工夫をした」(竹形氏)。

ストアオリジナル商品のT-HOUSE× NAKAMURA TEA LIFE STORE「MATCHA STICK & POUCH SET」(2000円・税別)。いろいろな用途で重宝しそうなサイズのポーチに、分包されたスティックタイプの抹茶が入っている
ストアオリジナル商品のT-HOUSE× NAKAMURA TEA LIFE STORE「MATCHA STICK & POUCH SET」(2000円・税別)。いろいろな用途で重宝しそうなサイズのポーチに、分包されたスティックタイプの抹茶が入っている

 ひときわ目を引いたのが「New Balance M1300JPJ」だ。矯正用のインソールや靴などに端を発している同社の主力商品は何といってもスニーカー。中でも「M1300」は、米国の職人技と日本の技術を組み合わせて1985年に誕生した経緯を持つ。従来は「Made in USA」と「Made in UK」が存在したが、発売35周年を記念し、初の「Made in Japan」として世に送り出されたのがこの「M1300JPJ」だ。

アクリルケース内に鎮座している「M1300JPJ」(6万8000円・税別)。既に抽選販売は終了。限定仕様のシューズBOXに木製のシューツリーが付属する
アクリルケース内に鎮座している「M1300JPJ」(6万8000円・税別)。既に抽選販売は終了。限定仕様のシューズBOXに木製のシューツリーが付属する

 製造に当たっては、アスリート向けにランニングシューズを製造しているM.lab(ミムラボ)の職人たちがフルハンドメイドで仕上げた。残念ながら「M1300JPJ」は限定生産かつ抽選販売で、既に完売している。「TOKYO DESIGN STUDIO New Balance」を象徴するアイテムとして展示したそうだ。

 店舗奥にはT-HOUSE× SHIHO TAKADA「CERAMICS」を展示。陶芸家の高田志保氏とT-HOUSE New Balanceのコラボによって生まれた陶器シリーズで、こちらもT-HOUSE New Balanceオリジナルの商品だ。やや大きめの貫入(ひび模様)は高田氏の作品の特徴。高台の裏には「M1300」のソールを図案化したパターンがスタンプされており、ファンの物欲を刺激しそうだ。

T-HOUSE× SHIHO TAKADA「CERAMICS」。墨入リカップ(小)3500円(税別)や墨入リ水差し7000円(税別)など全8種類
T-HOUSE× SHIHO TAKADA「CERAMICS」。墨入リカップ(小)3500円(税別)や墨入リ水差し7000円(税別)など全8種類

 今後、店頭では「TOKYO DESIGN STUDIO New Balance」のフットウエアやアパレル、アクセサリーをはじめ、T-HOUSE New Balanceのストアオリジナル商品の販売を続け、アイテム数を増やしていく計画だ。新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえつつ、状況が整えば、さまざまなジャンルで活躍するアーティストやクリエイターとのワークショップといったイベントの開催も視野に入れている。

欧州や日本で活躍するロンドン在住のイラストレーター、秋山貴世氏とTOKYO DESIGN STUDIO New Balanceとのコラボで生まれたTシャツ、TOKYO DESIGN STUDIO New Balance × TAKAYO AKIYAMA。価格は1万3000円(税別)
欧州や日本で活躍するロンドン在住のイラストレーター、秋山貴世氏とTOKYO DESIGN STUDIO New Balanceとのコラボで生まれたTシャツ、TOKYO DESIGN STUDIO New Balance × TAKAYO AKIYAMA。価格は1万3000円(税別)
ハンガーには「t-house new balance」の刻印
ハンガーには「t-house new balance」の刻印
TOKYO DESIGN STUDIO New Balanceのチームが共感したり刺激を受けたりしたモノやコトを、第三者の視点を通じて編集したフリーマガジン「NOT FAR」。T-HOUSE New Balanceの他、一部の書店でも配布されるとのこと
TOKYO DESIGN STUDIO New Balanceのチームが共感したり刺激を受けたりしたモノやコトを、第三者の視点を通じて編集したフリーマガジン「NOT FAR」。T-HOUSE New Balanceの他、一部の書店でも配布されるとのこと

(写真/稲垣宗彦)

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