席に到達すると、ディスプレーの“目”がにこっとほほえむ表示に変わり、「〇〇テーブルのお客様、お料理が届きました、お受け取りください」と、音声が流れる。筆者が注文したサラダを取ると、「受け取り後、僕のおでこを撫でてください」と言われ、実際に撫でるように手をかざすと自分の持ち場であるサラダバーのカウンター付近に戻っていく。サラダバーは何度でも注文でき、筆者以外のテーブルからも盛んにオーダーが入り、2台のロボットはフル稼働に近い状態だった。それでも文句一つ言わず、せっせとサラダを運び一生懸命働く姿はロボットながら実にけなげだ。他の多くの客も運んできたロボットを満面に笑みで迎え、歓喜する客、「ありがとう」と礼を言う客さえもいた。拒否感を示す客は見当たらず、人の従業員が運ぶよりもかえって場が和む様子が印象的だった。

注文したサラダなどを受け取り、ロボットの上部に手をかざすと、所定の位置に戻る
注文したサラダなどを受け取り、ロボットの上部に手をかざすと、所定の位置に戻る

ロボットと人が協業する未来の光景を目撃

 搬送ロボットのシステムを開発し、提供するのは、これまで「ロボ酒場」や「ロボットカフェ」を展開してきた実績があるスタートアップ、QBIT Robotics(東京・千代田、以下QBIT)だ。中国製の搬送ロボットを使い、同社がTHE GALLEYのレイアウトに合わせて搬送ルートをプログラム。ロボットが話す音声の内容もアレンジした。

 同店は、本来は客自らがサラダバーのスペースまで行って、自分が好きな野菜やフルーツを取る従来通りのオペレーションを導入する予定だった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大により、客が密集する状況を避けなければならなくなり、従来と同じ運用が困難に。とはいえ、既にサラダバーの設置は決まっていたため、新たな仕組みが必要になった。

 そんなとき、三笠会館の谷辰哉社長が、QBITの発表した新型コロナ対策の自動搬送ロボットソリューションの情報をキャッチし、早速QBITのデモルームを訪問。約1カ月の開発期間で、オープンまでの導入にこぎ着けた。「数年前から人とロボット双方の価値を生かすため、ロボットとの協業を構想していたが、新型コロナはそのきっかけとなった。ロボットが得意なことはロボットに任せ、お客様が安心してお食事していただけることに加え、スタッフはサービスの質の向上に時間を使ってもらいたいと考えた」(三笠会館)という。

 ロボットの働く様子をじっくり観察して改めて驚いたのは、秒速1メートル(大人が大股で歩くスピード程度)で移動しながら、動きに無駄がなく、意外にも仕事が速いことだ。テキパキと配膳をこなす姿は、有能なホールスタッフをほうふつさせる。また、一緒にホールを回るスタッフが、ロボットが通る際にサッと身を引いて道を空けるなど、人とロボットが自然に共存する姿も随所に見られた。

 THE GALLEYの平均予算はディナーで4500円程度からと、一般的なファミリーレストランより価格帯は高い。そのなかで、対面接客というサービスを減らし、主に低価格帯の店によく見られるタブレットのオーダーシステム、セミオートキャッシャー、あるいはロボットを導入することを客がどう受け止めるか、三笠会館側は多少の不安があったという。だが、コロナ禍では、こうした対応はむしろ客側も歓迎してくれると考え、導入を進めた。結果、狙い通り、大半が納得してコンタクトレスなサービスを受け入れているという。

 QBITでは、他の飲食店からも搬送用ロボットの引き合いを多数受けているという。今は珍しいロボットと人が協業する店だが、withコロナを経て、様々な業態に広がりそうだ。

会計もコンタクトレス化。スーパーマーケットで見られるような、客が紙幣や硬貨を投入するセミオートキャッシャ―を導入している
会計もコンタクトレス化。スーパーマーケットで見られるような、客が紙幣や硬貨を投入するセミオートキャッシャ―を導入している

(写真/竹井 俊晴)