新型コロナ禍で需要が急増したオンラインレッスン。Zoomを使い、国語や算数などの学習から習い事まで多様なレッスンを受けられる「スタコレ(Study Collect)」もその1つ。当初無料で始めたが、7月から月額制の有料サービスに移行。月額制オンラインレッスンへの潜在的需要とは。

Zoomを使って多様なレッスンが受けられるサブスクサービス「Study Collect」
Zoomを使って多様なレッスンが受けられるサブスクサービス「Study Collect」

期間限定で無料開放のはずが需要に押され有料化に

 スタコレは、自宅にいながらWeb会議システム「Zoom」を通じてライブでさまざまなレッスンが回数無制限で受けられる月額制(サブスクリプション)サービスだ。その内容は、国語、算数、英語など勉強科目に加えそろばん、書道、ダンス、バレエ、絵画など多岐にわたる。対象は3~12歳までと幅広い。講師は教員免許保持者やプロで活躍する熟練者ばかりだ。

 生徒は、時間割が設定されている各科目のチャンネルから自分の年齢や学びたいテーマに合ったものを選んで参加する。授業はライブで行われるため、その場で質問もできる。このほか、マンツーマンの授業を受けられるオプションもある。

 4月11日から6月末まで無料で受け放題にしたところ、全国で約1000人が受講した。子供にはタブレットやパソコンなどのデバイスを使って、学校とは違う雰囲気で自分の好きな授業を受けられる楽しさが、親には送り迎えの手間なく自宅で感染リスクを抑えながらさまざまな質の高いレッスンを受けさせられる安心感やお得感が受けた。

 スタコレを運営するPebyStyle(東京・板橋)は、未就学児から中学生までを対象としたスクール「PebyCollege(ペビーカレッジ)」を経営する。英語やバレエ、ピアノ、書道、そろばんなどの習い事はその内容ごとに専門の教室があるのが一般的だが、PebyCollegeはそれらを同一施設で総合的に運営。内容にかかわらず、受けるレッスンの回数で月謝を払う仕組みになっている。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため4月初旬に東京と福岡にある4カ所の教室をすべて休校にしたが、生徒たちの保護者からはこんな相談が相次いだ。「休校と外出自粛が続く中、一日中ゲームやYouTubeを見続け、夜になってやっと宿題を始めるというような生活をしている。生活習慣が乱れて制御できない」。

スタコレを運営するPebyStyleは、未就学児から中学生までを対象としたスクール「PebyCollege」を経営
スタコレを運営するPebyStyleは、未就学児から中学生までを対象としたスクール「PebyCollege」を経営

 そこで、緊急事態宣言発令直後の4月11日にスタートさせたのが、オンライン授業「PebyOnline」だった。以前から、教科書やノートなど紙ベースで進む教育分野に対し、IT化の遅れを問題視していたという同社は、オンライン化の構想をすでに練っていたという。「学校と同様、塾や習い事などのスクールも休校になり、教育分野はネガティブな雰囲気が充満していたが、前に進むしかないと考え、決断した。オンラインでの授業を通じて前向きな大人の姿勢を子供にも見せたいと思った。期間限定のつもりでスタートさせた」と、PebyStyle取締役の米倉久曜(ひさてる)氏は話す。

 当初はPebyCollegeの生徒向けに始めゴールデンウイーク前の4月28日で終える予定だった。だが、「反響があまりに大きかったのでゴールデンウイーク中も実施し、緊急事態宣言解除が見込まれていた5月7日まで延長することにした」(米倉氏)。当面の運営資金は文字コンテンツ配信サービス「note」で募り、目標額を上回る金額を調達。生徒も全国から集まった。

 その後も好評を受けての延長を繰り返した。緊急事態宣言解除が延期されたタイミングで、サービス名をPebyOnlineから「StudyCollect」(スタコレ)に改称。新たにホームページを立ち上げ、5月末までの無料配信を決めた。

 6月になると学校は再開されたが、分散登校になるエリアが多く、継続を望む声が相次いだため、さらに6月末まで無料配信を延長する。このときの資金は、クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で集めた。資金集めの場をnoteからクラウドファンディングに変更した理由について「5月には在校生以上の数の生徒が集まったため、スタコレの価値を調査するために選択した」と、米倉氏は話す。

人材会社の異例の協力で講師を確保

 こうしたオンライン授業への高いニーズを受けて、7月からは有料化に踏み切った。各種学科やダンス・バレエ、英会話、そろばんなど5科目のチャンネルが受け放題の「ベーシックプラン」(月額税別6000円)、英検や応用学習を含む全科目のチャンネルが受け放題の「プレミアムプラン」(同1万2000円)の2つを用意した。ほかにマンツーマンで受けられる科目もある。今後、オンライン発表会やイベントなど新たな企画を始める予定だという。

 新型コロナ禍でオンラインレッスンの需要が急増する中、オンライン化に舵(かじ)を切る教育事業は多い。だが、大手学習塾が行うような講義動画の配信や、各地のオンライン教室と生徒をつなぐプラットフォームサービスとは異なり、双方向のライブ授業、かつ好きなレッスンを組み合わせられる“ビュッフェ形式”がスタコレの特徴だ。

講師には教員免許保持者などプロがそろう
講師には教員免許保持者などプロがそろう

 スタコレでは、平日15~21時に全8チャンネルで授業が開かれる。同じ科目でも曜日によって講師や内容を変えることで、毎日受けても飽きないよう設計した。PebyOnlineではPebyCollegeの講師がそのままオンラインで授業をしていたが、スタコレに転身してからは外部の講師を起用した。ただ、その講師たちは、教員資格を持っていたり、講師経験が長かったり、プロとして活躍していたりといずれも熟練者ばかり。どのようにして短期間で専門性の高い人材を多数採用したのか。

 「趣旨に賛同してくれた人材派遣各社に協力いただいた。職を探している応募者がそれら企業の求人サイトで職を検索する際、通常は専用のチェックボックスを選択しないとオンライン業務の求人が検索結果に表示されない。ところが、講師としての働き口を探している人たちは、ほとんどが居住地近辺の都道府県での仕事を想定しているため、このチェックは入れていない。オンライン人材の求人が対象者にリーチしづらいのはこのためだ。そこで今回は、オンライン専用のチェックボックスを選択しなくても検索結果に出るよう特別に設定してもらったところ、想定を上回る応募があった。約300人のオンライン面接に追われた」(米倉氏)

 現役の小学校教諭などの応募もあったが、採用基準で最も重視したのが、「子供たちに他人の価値観を認め、多角的にものが見られる人になってもらいたいと本気で考えているか。その具体的な方法を持っているかどうか」だという。「その習い事をしているからといって、将来その道の職業に就くとは限らない。習い事を通じてどんな分野にも生かせるような人間力を高めていってほしい」と考えるためだ。記事執筆のため、許可をもらって試しに記者の子どもも授業を受けたが、どの講師も生徒一人ひとりに声をかけながら、互いの意見を尊重できるよう丁寧に進めていた。米倉氏によると生徒が授業の途中で離脱することはこれまでほとんどないという。

休校明けも需要は続く

 これまで教室で行っていた指導をオンラインで置き換えることにデメリットはないのだろうか。米倉氏は、「オンライン授業をスタートする前は生徒の成長や集中への懸念があった」と明かす。しかし、ふたを開けてみれば通常授業と同様かそれ以上に集中できている。これには、オンラインでもオフライン同様、目の前の先生にいつでも質問できる双方向性を実現していることもあるだろう。「『うちの子はオンライン向きでした』という保護者もいる。授業で仲良くなった子同士が別の授業を一緒に取る約束をするなど、スタコレ内でのつながりもできつつある」。

 休校が明けた今も、需要は継続しているそうだ。「週1回の通いレッスンでかかる月額料金と同価格でオンラインならば毎日受け放題という金銭的なメリットは大きく、需要は相変わらずある。さらに今後は不登校児童対策やシングルペアレントへの支援なども充実させていく」。

休校が明けてもオンラインレッスンの需要は継続している
休校が明けてもオンラインレッスンの需要は継続している

 また、スタコレをコミュニティー化することで継続利用を促す考えもある。「保護者とスクールがチームになって、共に子供を育てていく場にしたい。レッスン以外のつながりをつくれれば退会を防ぐことにもつながる」からだ。

(写真提供/PebyStyle)


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