電子チケットのplayground(プレイグラウンド、東京・渋谷)は、QRコードと顔認識を組み合わせた入場認証技術「MOALA QR」を開発した。スマートフォンがなくても入場でき、精度は99%以上。不正転売に悩まされてきたスポーツ、エンターテインメント業界のビジネスを大きく変える可能性がある。
電子チケット、紙チケットの弱点を克服
プレイグラウンドはこれまでスマートフォンを使った電子チケット「MOALA Ticket(旧名称はQuick Ticket)」を提供してきた。来場者のスマホに表示した電子チケットに、スタッフが専用のスタンプを画面に押し当てる。スマホ側で、スタンプと画面の接触点の座標を認識すると、入場手続きが完了するという仕組みだ。これまで西武ライオンズや吉本興業がMOALA Ticketを導入してきた。
電子チケットを使い、運用上で第三者にチケットの権利を譲渡できないという仕組みにすれば、ネット上で大量のチケットを売りさばくといった組織的なチケットの転売を抑止できる。ただ、会場を訪れる人すべてがスマホを所有しているわけではない。2019年にジャストシステムが実施した調査によると、スマホの普及率は85.1%。子供やシニア世代はスマホを所有していない比率が高い。また、同じ19年に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが発表した「オンラインチケットサービスの動向整理」からは、電子チケットの利用経験者は全体(N=520)の約50%にすぎず、50歳以上に至っては26.9%にとどまっている。
電子チケット以外は受け付けないことにすれば不正を防止できる半面、「スマホを持っていない人はお断りになってしまう。そのため、興行主も紙のチケットを捨て切れない」(プレイグラウンドの伊藤圭史社長)。
- 入場ゲートに専用アプリをインストールしたiPadを設置
- 来場者はiPadに顔を表示し、QRコードをかざす
- 認証されると画面が緑色に変わり、不正入場の疑いがあるときは赤色に変わる
その課題を解決するために開発した技術が、QRコードと顔認識を組み合わせた「MOALA QR」だ。MOALA QRでは、まずチケット購入時に自分の顔写真を登録し、顔の情報に基づいてQRコードを発行する。後は会場の入り口に設置したタブレット端末のカメラに向かって、自分の顔とQRコードを見せるだけだ。
タブレット端末がQRコードと来場者の顔を照合して、実際にチケットを購入した人物かどうかを検知する。QRコードはスマホ画面でも、紙に印刷したものでも構わない。
登録した顔の情報とQRコードがひも付けられているため、別の人がQRコードをコピーして入場しようとしてもはじかれる。顔の似ている人物が入場できてしまう可能性はあるが、伊藤氏によれば顔認識の精度は99%を超えるとのこと。
MOALA QRが転売を防止できるわけ
一度に複数枚を購入して家族や友人にチケットの権利を譲渡したい場合は、その人たちの顔写真を登録すればOKだ。悪質な転売業者、いわゆる転売ヤーがチケットを買い占めて「顔の情報を登録したい人をネットで募る」という不正利用も事実上は可能だが、「MOALA QRではチケット購入から顔情報の登録までの期間を興行主が設定できる。その期間を短く設定すれば不正を抑止できる」と伊藤氏は言う。
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