女性向けアパレルブランドを展開するバロックジャパンリミテッドは、トータルコーディネートのみ購入できるECサイト「AUNE(アウネ)」を立ち上げた。アパレル業界で長年問題になっている余剰在庫や焼却処分の削減を目指すと同時に、シーン別で選ぶ新たなファッションの楽しみ方を提案する。

AUNEはデッドストック商品を、コーディネート提案型で販売する。ローンチから1カ月では、予算比110%以上と出だしは好調だ
AUNEはデッドストック商品を、コーディネート提案型で販売する。ローンチから1カ月では、予算比110%以上と出だしは好調だ

 「MOUSSY(マウジー)」や「SLY(スライ)」などのアパレルブランドを展開するバロックジャパンは、販売シーズンを過ぎてしまった「デッドストック」と呼ばれる商品を組み合わせたトータルコーディネートで販売するECサイト「AUNE(アウネ)」を2020年4月23日にオープンした。約300種類のコーディネートから選ぶことができ、20年6月末までで2~3シーズン前の商品約1万5000点を投入した。

ターゲットは「時短層」

 バロックジャパンリミテッド未来政策室長の神田麻衣氏が、新規事業の検討を進める中で、社内の若手と訪れた場所は同社の倉庫だった。中にはまだまだ着られる商品が山と積まれている。アパレル業界では長年にわたり在庫の超過が問題視されてきたが、改めて目の当たりにすると「なんとかしなければ」という思いが膨れ上がった。

 80~90年代のファッショントレンドが何十年も経て再度流行したように、トレンドは何度も繰り返される。「倉庫に眠っている在庫は、販売時期やターゲットがずれていて在庫に残ってしまったのではないか。時流に合ったコーディネートを提案することで、洋服たちをよみがえらせることができる」との神田氏の考えが、AUNE開始につながっていく。

 ターゲットはファッションに十分な時間をかけられないという悩みを抱える20~30代の「時短層」を想定。この時短には大きく2つのカテゴリーがあるという。1つ目が「主婦」。子供がいたり家事をしたり、「自分自身の優先順位が下がってしまう人が多い。洋服にかける時間もなければ、(自分へ使う)お金も後回しになりがちな人」(神田氏)。2つ目が「働く女性」。「最近は“オフィスカジュアル”といっても幅広い。実際何を着ていけばよいのか分からないという声があった」(神田氏)という。

 これらの層が買いやすいよう、価格は1980円(税込み、送料別)からとした。アウトレット商品など商品を値下げ販売する場合、元値に対して2割~3割引きといった価格設定をするのが一般的だ。AUNEでは使用している素材、もし新品として売るならいくらで消費者が購入するかをチームで考え、1つ1つ値付けをしている。商品の再評価を行い、時流に見合った価格を設定するため、値下げに関する明確なルールは設けていない。

 コーディネートは、実際に店舗の販売員や、販売員経験のある本社スタッフが考えている。「テレビや雑誌で見るプロのスタイリストが考えたコーディネートは、モデルが着ることを想定していることもあり、一般の人が服を身に着けるシーンには落とし込みきれない部分もある。こう着ると足が長く見える、この組み合わせは相性がいい、などとスタッフ同士で情報交換しながらコーデを決めている」(神田氏)。サイト上も一般的なモデルは起用せず、社員がコーディネートを身にまとい撮影している。「さまざまな人が着用することで、少しでも多くの人にファッションの楽しみ方を知ってほしい」と神田氏は期待する。

トップスとボトムスの2点で3960円(税込み)のコーディネート。コーディネートに合うアクセサリーや靴などを追加購入することもできる
トップスとボトムスの2点で3960円(税込み)のコーディネート。コーディネートに合うアクセサリーや靴などを追加購入することもできる

 取扱商品は同社が抱える複数のブランドから出たデッドストックを組み合わせるが、ブランド名でのコーデ検索はできない。その代わり価格別や「カジュアル」「ちょっとキュートに」「シンプル」といったテイスト別や、「女子会・ママ会」「デート」「ちょっとその辺」といったシーン別などで、コーディネートを探すことができる。「ターゲットとなる層は、(商品が)いいものだから、価格がマッチするからといった理由で服を選び、ブランドは後回しにする傾向がある」(神田氏)と考え、商品詳細ページのみにブランド名を記載している。実際コーディネートは、さまざまなブランドがミックスして構成されている。

コーディネートまるごと買いで付加価値を創出

 ユニクロなどファストファッションと呼ばれるブランドの登場により、安くても質の良い洋服を手に入れることができるようになった。テクノロジーの進化によって、可処分時間の奪い合いが起き、「洋服にかける時間やお金が、以前に比べて減ってきている」と神田氏は話す。「お金がないけれどファッションを楽しみたい、洋服を買いに行く時間やコーディネートを組む時間がない、そんな人の選択肢の1つになれれば」(神田氏)。

 緊急事態宣言下では、コーデ一式を休業となった店舗スタッフの自宅に郵送し、全身、正面、背面など複数枚の写真を撮ってもらうことでサイトに反映させた。今後、新型コロナの影響で再び店舗休業が強いられる状況になっても、同様の手順で商品点数を増やしていける仕組みを作りあげた。

 今後はリアルイベントとの連携も視野に入れる。「ECで運営するからこそ、五感で楽しめるアナログな価値を提供したい」と神田氏は話す。コロナ禍で外出の機会が減少する中、人々のファッションに対するマインドや生活様式は大きく変わりつつある。時代の変化を反映しつつ「消費者をびっくりさせるものを仕掛けたい」と神田氏は話す。

バロックジャパンリミテッド未来政策室長の神田麻衣氏。YouTuber「かんだま」としても活動。自身のチャンネル「かんだま劇場」のチャンネル登録者数は30万人を超える
バロックジャパンリミテッド未来政策室長の神田麻衣氏。YouTuber「かんだま」としても活動。自身のチャンネル「かんだま劇場」のチャンネル登録者数は30万人を超える

(写真提供/バロックジャパン)