クルマのトランクにスタッフが野菜セットを積み込んでくれる「ドライブスルー八百屋」が全国に拡大。手掛けるのは飲食店向けの青果卸会社だ。新型コロナウイルス感染拡大で飲食店からの野菜の注文が大幅に減り、BtoCへとかじを切った。ECも開始し、消費者向けのビジネスをもう一つの軸に育てる考えだ。

「ドライブスルー八百屋」で販売する野菜セット
「ドライブスルー八百屋」で販売する野菜セット

 駐車場にクルマを止めると、後部トランクのフタが開く。駆け寄ったスタッフが野菜の入った段ボールを手慣れた様子でトランクに積み込む――。飲食店向け青果卸会社フードサプライ(東京・大田)が運営する野菜販売所「ドライブスルー八百屋」だ。同サービスは、広い駐車場などがある施設の一角で野菜セットを販売するもので、客はクルマに乗ったままで購入から代金の支払いまで終えられる。その間わずか1分足らず。販売するのは、同社の仕入れ担当者が選んだ旬の野菜や果物二十数種類のセット(価格は税込み3500円、以下同)と、これに国産米5kgを加えたセット(5000円)の2種類。

スタッフが野菜をクルマのトランクに積み込む
スタッフが野菜をクルマのトランクに積み込む

 新型コロナウイルス感染拡大以降、スーパーには生活必需品を求める客が殺到し、感染リスクが高まっていた。それに対して、ドライブスルー八百屋は、人との接触を避けて新鮮な野菜を購入できる点が消費者から支持されている。2020年4月9日、同社の野菜倉庫がある京浜島物流センター(東京・大田)と千葉物流センター(千葉・野田)の2カ所でサービスを開始。それから3カ月足らずで、札幌市や甲府市、大阪市など全国14カ所の施設で販売するまでになった。

 施設によっても異なるが京浜島物流センターの場合、週末に200~300セットを販売するという。同社の竹川敦史社長は「物流費がかからない分、スーパーよりも2割ほど安価に販売している。目利きが選んだ野菜の味と価格に満足したお客さんがリピートしてくれている」と話す。

東京都大田区にある京浜島物流センターの前には野菜を求めてクルマが列をつくる
東京都大田区にある京浜島物流センターの前には野菜を求めてクルマが列をつくる

 同社が消費者向け販売に参入したきっかけは、コロナ禍によって飲食店向けの販売が大幅に縮小したからだ。20年2月後半から飲食店からの野菜の注文が減少し始めた。「4月には通常の売り上げの3割程度に落ち込んだ」(竹川社長)。こうした状況を受けて、竹川社長は3月後半に、自社の物流センターを活用して野菜を販売することを決断。サービスの初日には、用意した200の国産米付きセットが、たちまち売り切れた。遠方から来る客も多く、ゴールデンウイーク期間中には、入場待ちのクルマの長い列ができた。こうした様子は新しい形の販売方式としてテレビなどでも取り上げられた。

 外食需要の減少の影響を受けた食材卸会社は多く、ドライブスルー八百屋の評判を聞きつけた卸会社から同社へ協業の相談が舞い込むようになった。ドライブスルー八百屋を全国に拡大することで多くの農家を下支えできると考え、竹川社長は協業を広げていった。「今後、飲食店にかつてのように客が戻ってくるかは未知数。契約農家を守り、我々の事業を継続するには一本足では危うい。早急に消費者向け事業を全体の6割程度に拡大したい」と竹川社長は語る。

フードサプライの竹川敦史社長
フードサプライの竹川敦史社長
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