スノーピークは2020年6月12日、東京・原宿駅前に新たな直営店「Snow Peak LAND STATION HARAJUKU」をオープンした。自社商品に加え、同社が厳選した全国各地の特産品を並べる新業態。「原宿という地の利を生かしたコンセプトショップとして成長させたい」と意気込む。オープン前日のオープニングレセプションを取材した。
スノーピークの新たな直営店「Snow Peak LAND STATION HARAJUKU(スノーピークランドステーション原宿)」があるのは、JR山手線・原宿駅前に開業したウィズ原宿の地下1階。ウィズ原宿は「未来を紡ぐ“たまり場”」をコンセプトに2020年6月5日にオープンしたばかりの商業施設で、イケア初の都市型店舗「IKEA原宿」やユニクロなどが入居している。
Snow Peak LAND STATION HARAJUKUのガラス張りの入り口を抜けると、左手の壁一面にはスノーピークのロゴをあしらった金属のパネルが設置されていた。中央には注目商品が並べられ、その脇には店舗からのメッセージが文章でしたためられている。
テークアウト専門カフェを中心とした店づくり
店内に視線を移すとまず目に入るのは、店内中央に作られたテークアウト専門のカフェカウンターだ。「原宿駅前という土地柄、飲み歩きの需要も考え、カフェを備えた」とスノーピーク営業本部拠点開発課マネージャーの田中貞安氏。コーヒーやエスプレッソドリンク、ユズ・リンゴなどのフレーバーを楽しめる抹茶ドリンクに加え、クラフトビールやスノーピークと朝日酒造が共同開発した日本酒「久保田 雪峰」「爽醸 久保田 雪峰」などのアルコール飲料も提供する。
その両側には、商品の売り場が設けられている。左手前には、同社のアパレル製品が、左手奥にはキャンピング用品がずらり。その中で、この店舗ならではの“個性”になっているのが、全国各地から集めた食品や飲料などの名産品を並べた右手の陳列棚だ。
「スノーピークのスタッフが全国を旅する中で見つけたお薦めの商品だけを並べている」と田中氏。その言葉通り、それぞれの商品には選定したスタッフの写真と名前、推薦文章が添えられ、ちょっとしたストーリーを演出している。
新業態としては白馬に次ぐ2店目
実は、「LAND STATION」という名前を持つ直営店は原宿店が2店舗目。先行する店舗としては、20年5月に長野県在住者限定でオープンした「Snow Peak LAND STATION HAKUBA」がある。
白馬という地の利を生かし、広い敷地内にキャンプフィールドなども設けた総合アウトドアレジャー施設として開業したLAND STATION HAKUBAと比べると、LAND STATION HARAJUKUはかなり小ぶりだ。
それでも両店が同じ名前を掲げているのは、共通したコンセプトを貫いているからだ。それが「通り過ぎるだけの観光でなく、そこで生活するかのように、土地の魅力を感じる旅の楽しみ」(田中氏)。これに店舗の所在地ならではの役割を付与した。
LAND STATION HAKUBAは、白馬エリアのローカルな魅力を伝える施設。一方、観光客が多く、インバウンドにおける日本の玄関口としての役割が期待できる原宿は、日本全国の魅力を伝える発信地だ。田中氏は、「自分たちがいいと感じる日本各地の“お土産品”を並べることで、来店者と土地とのつながりを生む店にしたいと思ってこの店をつくっている」と語る。
LAND STATIONとしては今後、近畿圏への出店も計画中だそうで、「そちらは近畿を中心とした西日本の魅力を伝える役割を担う」(田中氏)見込みだ。
同店限定のオリジナルアウトドアグッズも
日本各地の魅力を発信するという役目を持つというLAND STATION HARAJUKUだが、スノーピークの商品ももちろん販売する。
小ぶりな店舗の限られたスペースとはいえ、同社が厳選した売れ筋商品を効果的に陳列。アウトドアグッズやアパレルなどを中心に同店限定の商品も用意した。アパレルコーナーには試着室もあり、キャンピング用品は手に取って重さなどを実感することが可能だ。
また、店舗奥はウッドデッキになっていて、窓際の一角にはアウトドア用家具のディスプレーコーナーがあった。当日はローテーブルや椅子などが置かれていたが、オープン前にはテントを張っていたこともあったという。同社製品を体感できるスペースと位置づけ、時期によって展示商品の入れ替えを行う予定だ。
「テーブルウエアやアパレルだけでなく、ローテーブルや椅子などの家具も取りそろえているのがスノーピークの強み。椅子を並べることで、一息ついてもらうスペースとして役立ててもらうことも、商品の魅力を実感してもらうこともできる。テントを張って、居住性を確認してもらう場にすることなども考えている」と、店舗のデザインに携わった役員室未来創造チームの⼭井隆介⽒は話す。
なお、店舗手前の踊り場部分もスノーピークが使用できるとのこと。取材当日は雨のため見送られたが、タープやテントを張る考えもあったという。限られたスペースを有効に活用しつつ、同社商品が持つ魅力をアピールしていく考えだ。
LAND STATION HARAJUKUは、専門店や郊外型店舗と比べると、アウトドア関連商品の数が少なく、「なんでもそろう店」ではない。しかし、原宿の駅前という利便性や直営店である点は大きな魅力。同社のファンにとっては、品そろえの物足りなさを十二分に補える店と言えよう。
(写真/稲垣 宗彦)