オフィスビルなどの空きスペースとフードトラックのマッチングを手掛けるMellow(メロウ、東京・渋谷)。新型コロナウイルス禍に際して、タワーマンションにフードトラックを展開するマンション向けパッケージの提供を開始し、フードトラックのサブスクリプションプランや開業支援サービスなど、矢継ぎ早に新たな取り組みをスタートした。
メロウは、オフィスビルや大学、物流倉庫などの空きスペースとフードトラックをマッチングするプラットフォーム「TLUNCH(トランチ)」を提供。首都圏、関西、福岡で約240カ所に展開し、約850店のフードトラックと提携している。
また、コロナ禍の外出自粛で、フードトラックの主な展開エリアだったオフィス立地の需要が下がる中、20年4月にいち早くマンション向けサービスの「おうちでTLUNCH」を展開し、開始から2カ月弱で3万食の提供を突破。モビリティサービスならではの機動力を経営面でも発揮している。
そんなメロウは、20年6月19日、フードトラックのサブスクリプションサービス「フードトラックONE」で、トヨタ自動車グループで愛車のサブスクを手掛けるKINTO(名古屋市)と連携することを発表。メロウは20年2月にトヨタファイナンシャルサービス(名古屋市)などから5億円の資金調達を行っており、ベース車両やリーススキームの面で連携していく。
フードトラックONEは、新車フードトラックの5年間のリース契約や各種保険、営業場所の支援までを含めたパッケージだ。開業者はメロウのフルサポートの下、初期投資を抑えながらフードトラック事業に参入できる。価格は頭金が税込み96万円で、月額は8万1000円(各種保険、車検込み)。5年の契約完了後は、22万円と諸経費を支払えばフードトラックの買い取りも可能だ。
メロウ代表取締役の森口拓也氏は、「フードトラックを新車ベースで購入しようと思うと500万円前後かかるが、フードトラックONEを利用すれば開業リスクを最小限に抑えられる。さらにフードトラックの経営が軌道に乗るまで、メロウがしっかりサポートしていく」とパッケージのメリットを強調する。
フードに限らない新ブランド「SHOP STOP」
メロウはフードトラックだけでなく、より幅広い業態への進出も狙っている。それが新ブランドの「SHOP STOP(ショップストップ)」だ。従来展開してきたTLUNCHは、あくまでランチ営業に絞ったブランドだった。メロウと契約しているオフィスビルなどでは、ランチの時間帯はフードトラックが来ているが、その他の時間帯はただの空きスペースとなる。そこを移動型のアパレル店やリラクセーション店など、フードトラック以外の業態で有効活用しながら、新たな価値を生み出そうというアイデアだ。モビリティサービスと異業種の連携による価値創造の方向性「Beyond MaaS」を推進する。
SHOP STOPはバス停をイメージした、いわば移動販売車のための停留所。「あの場所に行けば、いろいろな店が来ている」という、場所にひも付くブランドとして認知してもらうことを目指す。ショップモビリティとユーザーの接点となるSHOP STOPアプリも用意し、配車されるショップモビリティの情報が確認でき、QRコード決済も可能になる。
SHOP STOPの展開としては、清水建設が21年秋の開業を目指して進めている東京・豊洲のスマートシティ計画の中で、日本初の“都市型道の駅”とうたう「豊洲MiCHiの駅」に導入される他、現在TLUNCHが展開されている場所も、順次SHOP STOPブランドに切り替えていくという。
スマートシティの流れや、人口動態の変化に伴って、都市も地方も街の機能の見直し、再構築が進む中で、SHOP STOPのスペースを加えることで、人々のニーズや時間帯に応じたモビリティが代わる代わる訪れ、様々なサービスが展開されることで場所の価値がふくらむ世界。そんなフレキシブルで、持続可能なまちづくりの1つのピースとしてSHOP STOPが機能することを目指している、と森口氏は説明する。
さらに、SHOP STOPに通信や電力供給機能、そしてコミュニケーションのためのサイネージなどを備え、防災、災害対応機能を持たせることまで視野に入れている。すでにメロウは、20年6月にさいたま市、豊中市と相次いで包括連携協定を締結。公共スペースの有効活用や地域の活性化、災害・緊急時の支援といった分野で自治体と協力しながら進めていく。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー