ミルクとコーヒーが混ざり合うしま模様のパッケージデザインと、「白黒つけない」のフレーズで知られる江崎グリコ「カフェオーレ」。同社は「白黒つける」と宣言し、2020年3月16日に味とパッケージを大刷新した。4月18日には早くも1000万本を突破。リニューアルで大人の女性を呼び戻す。

商品の顔となるパッケージも大変身。スタイリッシュな大人のイメージへと脱皮を図った新カフェオーレ(180ミリリットル)。2020年3月16日にリニューアル発売。希望小売価格105円(税別)
商品の顔となるパッケージも大変身。スタイリッシュな大人のイメージへと脱皮を図った新カフェオーレ(180ミリリットル)。2020年3月16日にリニューアル発売。希望小売価格105円(税別)

砂糖50%カットで“甘さ離れ”のトレンドに対応

 江崎グリコのコーヒー乳飲料「カフェオーレ」(ORIGINAL・コーヒー濃いめ・たっぷりミルク)が、大人向けに味とパッケージを大刷新した。甘さ離れが顕著な消費者の飲料トレンドを踏まえ砂糖を50%カットし、生乳本来の味を引き出す、すっきりした飲み口にした。さらにパッケージを長年親しまれた“ストライプ(しま模様)”から、シンプルなデザインに切り替えた。その結果、20年3月16日のリニューアル発売後約1カ月(3月14日~4月18日)で出荷本数は1000万本を突破し、前年同期比151%という大幅な伸びを示した。以降も19年を大きく上回るペースで推移しているという。

 本場のカフェオレのおいしさを手軽に提供することを目的に、1979年に誕生したカフェオーレ。発売以来、41年間にわたって幅広い世代に親しまれたロングセラー商品だ。支持を得た理由は「やさしい甘さ」。ミルク(白)とコーヒー(黒)が混ざり合うハーモニーを表現したストライプのパッケージデザインを発売当初から採用し、テレビCMでは「白黒つけないカフェオーレ」というフレーズでお茶の間に存在を印象づけてきた。

 今回打ち出したのは「白黒つける覚悟のリニューアル」。その背景にあるのは、主要顧客層である20~40代の女性の商品離れだ。飲料市場のトレンドが変化し、カフェオーレ自体も伸び悩んでいた。

 江崎グリコ乳業マーケティング部ブランドマネージャーの三浦啓吾氏は「2000年代前半をピークに横ばい傾向が続いていたが、ここ5年間は市場の変化を受け、シェアを落としていた。今の時代に合わせたカフェオーレはどうあるべきか。社内の議論で抱えていた課題が浮き彫りになった」と打ち明ける。さらに「カフェオーレはいつの間にか、子供の頃に飲んだ記憶で止まっている人が多い。大人になると飲む理由がなくなることが分かった」という。

 コーヒー飲料市場では、コンビニのカウンターコーヒーの本格的な味わいが顧客ニーズを満たし、需要を伸ばしている。またサントリー食品インターナショナルが17年に発売した「クラフトボス」が切り開いた「ちびだら飲み(少しずつ、長く飲み続ける)」の浸透で、コーヒーも再栓して持ち運べる500ミリリットルのペットボトル商品が急増。お茶や水の代わりに飲める軽い飲み口が、若年層と女性に支持を広げた。

 全国清涼飲料連合会の統計によると、コーヒー飲料等の生産量は増加傾向にあり、17年度313万7700キロリットルから19年度331万2400キロリットルと、2年間で17万キロリットル超も上昇。業界関係者は、その理由を「コーヒーをペットボトルで飲む機会が多くなり、商品の大容量化が進んでいるため」と話す。一方で「直近19年度のチルド(要冷蔵)コーヒーの市場規模は前年比で2~3%減少。カフェオーレブランドは1割減だった」(三浦氏)。

 飲用シーンと容器におけるニーズの変化に加え、健康意識の高まりを受け、飲み物の甘さ離れが広がっている。エスプレッソベースのカフェラテで、糖質含有量が100ミリリットル当たり1グラム台という商品も発売されている。

 甘くて「“子供向けの飲み物”というイメージを強く持たれるようになってしまった」(三浦氏)というカフェオーレ。そこでリニューアルでは砂糖50%カットと、生乳のおいしさを引き出すことで新しい甘さを目指した。キャッチフレーズは「砂糖の甘さから生乳の甘さへ」。生乳の風味全体を指すおいしさを「生乳の甘さ」と表現し、主要ターゲットである大人の女性に訴求した。

 味覚設計で最もこだわったのは、長年のファンに受け入れられる味の実現だという。「最も支持されている味わい、すなわち口に含んだ瞬間から心がほぐれていくような『カフェオーレのやさしい甘さ』をそのままに、新しいおいしさへ生まれ変わるための調整。これが一番難しかった」と三浦氏。

守り続けたパッケージは財産、でも固執しない

 もう1つの課題はパッケージデザインの「ストライプ」との決別だった。カフェオーレは発売当初から、紙製の缶のような「Pキャン」(paper can)と呼ばれる容器を採用している。パッケージはコーヒー豆の見直しや増量といった商品の改良に伴う小さな変更はあるものの、ストライプの「白黒つけない」デザインを41年間、守り続けてきた。それにより店頭での視認性は高まったが、「代わり映えのしない商品というイメージを持たれたことも否めなかった」(江崎グリコ)。

「カフェオーレ」パッケージデザインの変遷。コーヒー豆の見直しや増量など商品の改良に伴い、少しずつ変更を重ねたが、ストライプを基調とする代わり映えしないデザインが41年間続いた。容器自体は紙でできている
「カフェオーレ」パッケージデザインの変遷。コーヒー豆の見直しや増量など商品の改良に伴い、少しずつ変更を重ねたが、ストライプを基調とする代わり映えしないデザインが41年間続いた。容器自体は紙でできている

 子供のときにカフェオーレを飲んでいた女性たちは、「大人になると、人前で子供じみたものを飲むのが恥ずかしい、と離れていく人が多いことが分かった」(三浦氏)。人前でとは「職場で」と言い換えていいだろう。

 ロングセラーブランドの“顔”を変えることに対する社内の抵抗は想像に難くない。だが、ストライプが子供のイメージを引きずるマイナス要因になっているなら、「白黒つける」しかない。ターゲットの女性層に再び手に取ってもらえるよう、味に続いて見た目も大人の雰囲気に変身させた。

「カフェオーレ ORIGINAL」。砂糖の甘さを減らし生乳のおいしさを引き出す。コーヒーの香りはそのままに、生乳のすっきりとした飲み口を実現した
「カフェオーレ ORIGINAL」。砂糖の甘さを減らし生乳のおいしさを引き出す。コーヒーの香りはそのままに、生乳のすっきりとした飲み口を実現した
「カフェオーレ コーヒー濃いめ」。砂糖を減らしておいしさを引き出した生乳に、従来の2倍の量のコーヒーを使用。香り高いアラビカ種コーヒー豆の味わいが一層楽しめる
「カフェオーレ コーヒー濃いめ」。砂糖を減らしておいしさを引き出した生乳に、従来の2倍の量のコーヒーを使用。香り高いアラビカ種コーヒー豆の味わいが一層楽しめる
「カフェオーレ たっぷりミルク」。砂糖を減らした上、ミルクは従来の2倍のコクを実現。生乳本来のおいしさは心がなごむ味わい
「カフェオーレ たっぷりミルク」。砂糖を減らした上、ミルクは従来の2倍のコクを実現。生乳本来のおいしさは心がなごむ味わい

 定番商品の再活性化を成功させるには、「現在支持してくれているお客さまの声を聞きながら商品として必要なものを見極め、残す価値と新しくする価値を融合させることが大事」と三浦氏は強調する。新しいカフェオーレでは砂糖を減らしながらも、長年のファンに愛されている味わいが感じられるように、ほっとした気持ちにさせるやさしい甘さを風味調整で進化させた。さらに見た目では分かりにくい中身の変化を、新しいパッケージで訴求した。

 事前のプロモーションでも“憎い演出”が目立つ。江崎グリコはリニューアル発売の1カ月以上前に、公式ツイッターで「カフェオーレがついに白黒つけます!」と宣言。本気で変わる意気込みをファンに伝え、発売前から“新カフェオーレを体験できる”ツイッターキャンペーン(2月17日応募終了)を実施した。そこで当選者1000人に旧パッケージのシールが貼られた状態でカフェオーレを届け、めくると新パッケージが現れるという趣向でファンを沸かせた。発売前からSNSを活用してファンとのコミュニケーションを図り、「カフェオーレ史上最大」と大胆にうたったリニューアルへの待望感を醸成することで、発売時の勢いが最大化するのを狙った。こうした工夫も、今回のリニューアル成功を後押しした要因と言えるだろう。

リニューアル発売前に行ったツイッターキャンペーンのプレゼントは、旧パッケージのシールが貼られた状態のカフェオーレ。めくると新パッケージが現れる。「旧から新への脱皮」を楽しませる、巧みな演出だった
リニューアル発売前に行ったツイッターキャンペーンのプレゼントは、旧パッケージのシールが貼られた状態のカフェオーレ。めくると新パッケージが現れる。「旧から新への脱皮」を楽しませる、巧みな演出だった

(写真提供/江崎グリコ)