守り続けたパッケージは財産、でも固執しない

 もう1つの課題はパッケージデザインの「ストライプ」との決別だった。カフェオーレは発売当初から、紙製の缶のような「Pキャン」(paper can)と呼ばれる容器を採用している。パッケージはコーヒー豆の見直しや増量といった商品の改良に伴う小さな変更はあるものの、ストライプの「白黒つけない」デザインを41年間、守り続けてきた。それにより店頭での視認性は高まったが、「代わり映えのしない商品というイメージを持たれたことも否めなかった」(江崎グリコ)。

「カフェオーレ」パッケージデザインの変遷。コーヒー豆の見直しや増量など商品の改良に伴い、少しずつ変更を重ねたが、ストライプを基調とする代わり映えしないデザインが41年間続いた。容器自体は紙でできている
「カフェオーレ」パッケージデザインの変遷。コーヒー豆の見直しや増量など商品の改良に伴い、少しずつ変更を重ねたが、ストライプを基調とする代わり映えしないデザインが41年間続いた。容器自体は紙でできている

 子供のときにカフェオーレを飲んでいた女性たちは、「大人になると、人前で子供じみたものを飲むのが恥ずかしい、と離れていく人が多いことが分かった」(三浦氏)。人前でとは「職場で」と言い換えていいだろう。

 ロングセラーブランドの“顔”を変えることに対する社内の抵抗は想像に難くない。だが、ストライプが子供のイメージを引きずるマイナス要因になっているなら、「白黒つける」しかない。ターゲットの女性層に再び手に取ってもらえるよう、味に続いて見た目も大人の雰囲気に変身させた。

「カフェオーレ ORIGINAL」。砂糖の甘さを減らし生乳のおいしさを引き出す。コーヒーの香りはそのままに、生乳のすっきりとした飲み口を実現した
「カフェオーレ ORIGINAL」。砂糖の甘さを減らし生乳のおいしさを引き出す。コーヒーの香りはそのままに、生乳のすっきりとした飲み口を実現した
「カフェオーレ コーヒー濃いめ」。砂糖を減らしておいしさを引き出した生乳に、従来の2倍の量のコーヒーを使用。香り高いアラビカ種コーヒー豆の味わいが一層楽しめる
「カフェオーレ コーヒー濃いめ」。砂糖を減らしておいしさを引き出した生乳に、従来の2倍の量のコーヒーを使用。香り高いアラビカ種コーヒー豆の味わいが一層楽しめる
「カフェオーレ たっぷりミルク」。砂糖を減らした上、ミルクは従来の2倍のコクを実現。生乳本来のおいしさは心がなごむ味わい
「カフェオーレ たっぷりミルク」。砂糖を減らした上、ミルクは従来の2倍のコクを実現。生乳本来のおいしさは心がなごむ味わい

 定番商品の再活性化を成功させるには、「現在支持してくれているお客さまの声を聞きながら商品として必要なものを見極め、残す価値と新しくする価値を融合させることが大事」と三浦氏は強調する。新しいカフェオーレでは砂糖を減らしながらも、長年のファンに愛されている味わいが感じられるように、ほっとした気持ちにさせるやさしい甘さを風味調整で進化させた。さらに見た目では分かりにくい中身の変化を、新しいパッケージで訴求した。

 事前のプロモーションでも“憎い演出”が目立つ。江崎グリコはリニューアル発売の1カ月以上前に、公式ツイッターで「カフェオーレがついに白黒つけます!」と宣言。本気で変わる意気込みをファンに伝え、発売前から“新カフェオーレを体験できる”ツイッターキャンペーン(2月17日応募終了)を実施した。そこで当選者1000人に旧パッケージのシールが貼られた状態でカフェオーレを届け、めくると新パッケージが現れるという趣向でファンを沸かせた。発売前からSNSを活用してファンとのコミュニケーションを図り、「カフェオーレ史上最大」と大胆にうたったリニューアルへの待望感を醸成することで、発売時の勢いが最大化するのを狙った。こうした工夫も、今回のリニューアル成功を後押しした要因と言えるだろう。

リニューアル発売前に行ったツイッターキャンペーンのプレゼントは、旧パッケージのシールが貼られた状態のカフェオーレ。めくると新パッケージが現れる。「旧から新への脱皮」を楽しませる、巧みな演出だった
リニューアル発売前に行ったツイッターキャンペーンのプレゼントは、旧パッケージのシールが貼られた状態のカフェオーレ。めくると新パッケージが現れる。「旧から新への脱皮」を楽しませる、巧みな演出だった

(写真提供/江崎グリコ)


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