ソニーが開発した炭素素材「トリポーラス」を使った繊維が、アパレル大手の三陽商会が2020年5月に発売した男性用衣類に採用された。高い消臭・抗菌効果を発揮するこの素材の原料は「もみ殻」。当初はリチウムイオン電池の電極用素材として開発された。ソニーがトリポーラスを開発した背景を探った。
消臭と抗菌に高い効果を発揮するソニーの新素材「トリポーラス」
三陽商会は20年5月上旬、英国の老舗ブランドであるマッキントッシュのセカンドライン「マッキントッシュ フィロソフィー」から、Tシャツとカーディガンを発売した。実はこの2製品に使用された繊維は、「Triporous FIBER(トリポーラス ファイバー)」というソニーの新素材「トリポーラス」を配合した素材だった。
トリポーラス ファイバーとは、レーヨンにソニーが開発した多孔質炭素材料「トリポーラス(Triporous)」を練り込み繊維化したもの。微細で複雑な“穴”を持つトリポーラスは、汗の臭いの3大成分であるアンモニア、酢酸、イソ吉草酸を吸着し、消臭効果を発揮する。さらに生乾き臭の原因となるモラクセラ菌、黄色ブドウ球菌に対し、繊維表面での増殖を抑える効果もあるという。三陽商会が採用したのも、この優れた消臭・抗菌効果が目当てだ。
こうした特性をソニーはスポーツウエアやアウトドア製品に活用できると判断。そこでトリポーラス製品を展開してくれるパートナーを探すべく、20年1月26~29日、独ミュンヘンで開催された世界最大級のスポーツ・アウトドア用品展示会「ISPO Munich 2020」に初参加した。ザ・ノース・フェイスやコロンビアなど、名だたるアウトドアメーカーと同じホールに並んだブースで、ソニーはトリポーラスを用いた様々な製品を展示。アウトドアとソニーという“意外な組み合わせ”は、多くの来場者や企業から注目を浴びた。既にこの出展をきっかけに、いくつかの企画が製品化に向けて動き出しているという。
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