新型コロナウイルス感染症流行の影響で利用が拡大する料理の宅配。「Uber Eats」などの海外勢のほかに、国内からも参入が相次いでいる。こうした競合に対抗するため、出前館はダウンタウンの浜田雅功を起用し、総額1300万円分のクーポンを配布するキャンペーンを展開。その効果を検証した。

出前館はダウンタウンの浜田雅功を起用し、Twitterを活用した「浜田のおごりキャンペーン」を展開した
出前館はダウンタウンの浜田雅功を起用し、Twitterを活用した「浜田のおごりキャンペーン」を展開した

 出前館が運営する料理の宅配サービス「出前館」の利用が急増している。「注文数は2020年4月から19年比で5割以上増加し、加盟店は、新型コロナの影響が出る前の4~5倍のペースで増えている」と同社広報チームの末本直太氏は話す。これはもちろん、緊急事態宣言にともなう外出自粛によって需要が高まったことが追い風になっているが、それだけではない。同社が宅配サービスに注目が集まるタイミングに合わせて大キャンペーンを展開したのだ。

 料理の宅配サービスは、19年あたりから日本では一般に浸透し始めたことから参入が相次ぎ、競争が激しくなっている。楽天が運営する「楽天デリバリー」やNTTドコモが運営する「dデリバリー」のほか、海外資本の「Uber Eats」や「DiDi Food」がシェアを争っている。出前館は、00年にサービスを立ち上げて一定のユーザーを抱えてきた。しかしこうした状況を受け、広告宣伝を強化する経営方針を打ち出し、露出を増やしてきた。19年末にはダウンタウンの浜田雅功を「CDO(チーフ出前オフィサー)」に起用して、CMを放映した。さらに全国に緊急事態宣言が出され、かつてないほど料理の宅配が注目されている時期にキャンペーンを打ったのは、競争で優位に立つ狙いがある。

 「出前館でご飯をおごったるわ!」。浜田が力を込めて語るのは、料理の宅配サービス「出前館」のキャンペーンを告知する動画だ。出前館は、20年4月27日から浜田を起用した「浜田のおごりキャンペーン」をTwitter上で実施した。

 これは、見た人が出前を取りたくなる内容のツイートをした吉本興業(大阪市)の所属タレントに、浜田が出前館で使える3000円分のクーポンを配布するというもの。タレントは、まず「#浜田のおごり」「#出前館」のハッシュタグを付けてリツイートする。さらにクーポンを受け取ったら「#浜田のおごり」「#出前館」「#PR」「#吉本自宅劇場」のハッシュタグを付け、料理の画像や動画を交えて投稿することが条件。タレントによるツイートに記載されたページにアクセスした一般のユーザーにも500円分のクーポンを配布した。

 当初、タレント向けに用意した予算は100万円だった。これを数日で使い果たしたことから、4月30日に第2弾として100万円を追加、5月4日に第3弾としてさらに100万円を追加した。約1000人のタレントがツイートし、クーポンを受け取った。こうしたタレントの盛り上がりを見た一般の反響も大きく、当初5000人に配布する予定だったが、これもすぐに配り切ったことから2万人に増やした。タレントと一般ユーザーの合計で1300万円分のクーポンを配布したことになる。

 同社はこのキャンペーンに合わせて、浜田が出演する3本の動画を作成。これを同社のTwitterアカウントなどで告知したところ、テレビ番組などで取り上げられた効果もあり、合計再生回数は340万回に達した。また、今回のキャンペーンに応募したタレントは、それぞれが日ごろからTwitterで情報発信しており、フォロワー数の合計は1000万人以上になる。これらの訴求力は大きかった。

予算の追加に合わせて、浜田CDOが出演する第2弾、第3弾の動画を配信した
予算の追加に合わせて、浜田CDOが出演する第2弾、第3弾の動画を配信した

 では、今回のキャンペーンは実際にどの程度の効果があったのか。出前館とUber Eatsのツイート数を比較してみよう。

キャンペーン効果でツイート数が1日に約2万3000件

 20年1月以降のツイート数は全体として見ると、Uber Eatsが出前館を大きく上回っている。外出が難しくなり、宅配のニーズが広がり始めた3月下旬ごろから出前館のツイート数は伸び始める。キャンペーン期間中の4月27日に1万8610件、5月1日に2万2620件となり、一時的ではあるが出前館のツイート数がUber Eatsを上回った。出前館の名前を多くの人が目にし、ツイートやリツイートを繰り返したことを示している。

出前館とUber Eatsのツイート件数
出前館とUber Eatsのツイート件数
全体のツイート件数は、Uber Eatsが圧倒的に多いものの、キャンペーン期間中には一時、出前館が上回った(「PR Analyzer」のデータを加工した)

 さらに投稿内で使われたキーワード(共起語)を見ると、出前館では、キャンペーンへの関心を示す「浜田」「おごり」「クーポン」などがランクインしていた。有名タレントが割引クーポンのお得感を宣伝することの注目度はやはり大きい。一方、Uber Eatsでは、「配達員」「登録」が上位に入った。配達員そのものへの関心が高いことが伺える。

ツイートに含まれるキーワード(共起語)
ツイートに含まれるキーワード(共起語)
出前館では、キャンペーンへの関心を示す「浜田」「おごり」「クーポン」などがランクインしている。Uber Eatsでは、「配達員」「登録」が上位に入っていることから、配達員そのものへの関心が高いようだ

 「出前館を知らない人にアピールする効果があった。テレビなどでも多く紹介されたが、最近はテレビを見ない人も増えているので、SNSで発信力のあるタレントの力を借りることが重要だった」(末本氏)。有名タレントを起用し、SNSを利用して多額のクーポンを配布するキャンペーンは、サービスの認知度を高め、注文を増やす一定の効果を上げたといえそうだ。

(写真提供/出前館)

■修正履歴
・出前館がサービズを立ち上げた年を修正しました。[2020/6/3 10:30]

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