2020年3月の発売から6週間で日米欧合わせたセルスルーが1341万本に達した任天堂の『あつまれ どうぶつの森』。この大ヒットゲームの世界に米メトロポリタン美術館などの美術館・博物館、マーク ジェイコブスやヴァレンティノなどのハイブランドが参加。プレーヤーがゲーム内でコレクションを利用できるようにしている。この動きの裏には任天堂が長年築いてきたアート界との関係性がある。
全世界で記録的ヒットとなったNintendo Switch用のゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』(あつ森)に、アート界やファッション業界からのコンテンツ提供が相次いでいる。
まず動いたのはアート界。代表的なのが米メトロポリタン美術館だ。所蔵する40万点を超える美術品を『あつ森』内に登場させるための2次元コードを公式サイト上に用意し、自由にデジタル化したコンテンツをゲーム内にダウンロードできるサービスを開始した。このほか、米J・ポール・ゲティ美術館、英アシュモレアン美術・考古学博物館、台湾・国立故宮博物院、日本の太田記念美術館やポーラ美術館なども同様の仕組みを設けている。
ダウンロードの手順はそれぞれ少しずつ異なるが、基本的にはスマホアプリ「Nintendo Switch Online」をダウンロードし、その中にある「タヌポータル」という機能を使って、各美術館の公式サイトで2次元コードを読み込むだけでいい。ゲーム内に世界的な美術品を飾ったり鑑賞したりということが誰でも気軽にできるのが楽しい。
アートと任天堂の深いつながりとは
アート界がなぜこのようなコラボをしたのか。実はアート界とゲーム産業とには協調の歴史がある。とりわけ任天堂は、美術館などで使用できる音声案内用のソフトをニンテンドー3DSで提供したり、その発展形として『ニンテンドー3DSガイド ルーヴル美術館』(2013年発売)というニンテンドー3DS向けソフトを販売したりと関わりが深い。ニンテンドーDS向けに『絵心教室DS』(10年発売)という絵画技術習得用ソフトも販売し、子どもたちにアートに触れさせる機会もつくってきた。
「どうぶつの森」シリーズでも、古くからゲーム内に美術品を登場させている。「つねきち」という名前の怪しい画商から美術品を購入し、それをゲーム内の博物館に寄贈して美術品コーナーを充実させていくという遊びが盛り込まれているのだ(ただし、偽作をつかまされることもあり、その場合は博物館で引き取ってもらえない)。
「どうぶつの森」というと、自然豊かな世界で「ムシ捕り」や「魚釣り」を楽しむイメージが強いが、それらと並ぶように美術品を集める要素が遊びとして取り入れられ、子どもたちをアートの世界にいざなってきた実績がある。これが今回のコラボを実現させたのだろう。
しかも今は新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に「ステイホーム」が実施されたタイミングだ。世界各国の美術館が閉鎖せざるを得ない中、自宅に居ながら美術品を楽しめる『あつ森』はこの上ない体験を提供できるツールとなった。
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