次は劇場からの無観客配信に挑戦

――今は劇場が閉鎖され、公演の中止や延期も続いています。新型コロナウイルスの演劇への影響をどう見ていらっしゃいますか。

近藤氏 当面、公演は難しいだろうなと思っています。感染拡大が収まってもそれが一時的なものなら、稽古したけど本番が迎えられない、本番が途中で中止になるといったことが起こりかねません。だから、今後の演劇の1つの形として、Zoomでの公演もあっていいと思いますね。生の舞台は素晴らしいけれど、それ以外の方法もあっていい。そういう意味で、時代が変わっていくのではと感じます。

 少なくとも打ち合わせはZoomでやることが多くなるんじゃないでしょうか。顔を合わせるのはいいことだけれど、Zoomの良さもありますから。こうしてお互いに違う場所にいながら会えるのはすてきなことだし、わざわざ出かけなくていいとか、自分の落ち着く空間だからこそ話せることがあるとかいう利点もあります。今回Zoomで実感したのは、顔が見えることはコミュニケーションにおいてとても大きいということです。

――若手演劇ユニット・劇団Zooooom!によるZoomを使った公演にも友情出演されました。ご自身の活動の幅も広がりますね。

近藤氏 そうですね。20年6月1~7日には、下北沢の本多劇場の主催で「DISTANCE」という催しをするんです。入江雅人さんや清水宏さんらとともに、それぞれが新作の一人芝居をやり、それを無観客でライブ配信します(※編集部注:近藤氏の公演は6月5日午後8時から)。脚本・演出は、第27班という若い劇団を主宰する深谷晃成さんにお願いました。これがとても面白い脚本で、とても楽しみです。

 僕は今、俳優の津川雅彦さんが生前におっしゃっていた「起きたことが正解」という言葉が頭から離れません。人生はそうやってとらえていくしかないのかもしれないし、後悔はしたくない。この言葉は僕自身にとても響いています。

 そして、今だからこそできることに目が向いています。今は1カ月後、2カ月後はもちろん、明日さえ分からない状態ですが、生きていくって本来こういうことじゃないかとも思い始めているんです。

 昔はみんな何が起きるか分からない中で生活していた。その中で文化を生み出してきました。今こう言うと不謹慎かもしれないけれど、想像もしないことが起きること、そこに楽しさを見つけることが生きていくことの原点のように思うんです。僕自身、「12人の優しい日本人」をZoomで読むなんて少し前まで思ってもみなかったけれど、おかげさまでその楽しさを知りましたから。こんな時だからこそ、いろいろなことにトライしたいと思っています。

近藤芳正(こんどう よしまさ)氏
愛知県出身。1976年「中学生日記」に出演。劇団青年座研究所を経て、劇団七曜日に入団。NHK「真田丸」などの大河ドラマや三谷幸喜作品・映画「THE 有頂天ホテル」、舞台「笑の大学」など多数出演。舞台「歌わせたい男たち」は第16回読売演劇大賞最優秀作品賞、第5回朝日舞台芸術賞グランプリを受賞した。現在はTV、映画の名バイプレーヤーとして活躍すると同時に、若手俳優に対してのワークショップを主宰するなど後進の指導にも力を注いでいる