倉庫や工場内を自律的に走り回り、人間に代わって荷物や部品を運ぶ自動運転の搬送ロボットは、多くの倉庫や工場が直面する人手不足の救世主として注目が集まっている。そんな市場に独自のアプローチで切り込む新顔が登場した。2020年4月に設立されたLexxPluss(神奈川県川崎市)だ。キーワードは「オープンソース化」、その驚きの戦略とは?

LexxPlussが構想しているオープンソース自動搬送ロボットのイメージ
LexxPlussが構想しているオープンソース自動搬送ロボットのイメージ

 「自動搬送ロボットをオープンソース化するのは、おそらく世界で他に例がない」と胸を張るのは、自動搬送ロボットを手がけるスタートアップ、LexxPluss代表取締役の阿蘓将也氏だ。

 阿蘓氏は、独大手自動車部品メーカーのボッシュで自動運転の開発に携わってきた人物。同社では、大規模な駐車場内においてクルマが自動的に空いたスペースに駐車する「自動バレーパーキング」の開発を手がけ、実用化までこぎつけた実績を持つ。

 自動バレーパーキングは、特定のエリアにおいて人間の監視なしにシステムがすべての操作を行う、いわゆる「レベル4」の自動運転に当たる技術。シュトゥットガルトにあるメルセデス・ベンツ博物館の駐車場に設置し、19年7月にドイツの関係当局から承認を得た。また、阿蘓氏はモビリティのオープンイノベーションを目指す有志団体「Deep4Drive」を創立するなど、ボッシュ以外でも自動運転の分野で活躍してきた。

 そんな阿蘓氏が、次なるフィールドとして選んだのが自動搬送ロボットだ。限られたエリア内で低速度の車両が自動運行する自動搬送ロボットは、自動バレーパーキングとの共通点も多く、「ボッシュで経験した自動運転の技術開発から市場投入までの知見が生かせる」(阿蘓氏)と考えた。

ハード、ソフトとも技術を公開

 同社がユニークなのは、自社で開発した自動搬送ロボットをハードウエア、ソフトウエアともにオープンソースとして無償公開する点だ。なぜ、技術を公開することを選んだのだろうか。

 その背景について阿蘓氏は、「(低速の)自動運転技術が成熟してきた」と説明する。特にここ5年で、自動運転技術はかなり充実してきたという。完成度の高いオープンソースのソフトウエアが登場し、ライダーやセンサーの価格が大幅に下がってきたことで、自動運転車両を作るハードルは格段に低くなった。多大なコストをかけて独自技術を開発しなくても、それなりのものが作れる状況になってきたのだ。

 その変化を肌で感じていた阿蘓氏は、独自技術で囲い込むのではなく、技術を開放して広く使ってもらうことで標準化を目指すことにした。LexxPluss自体は、自動搬送ロボットのサポートや運用・管理といったサービスの部分で付加価値を提供する戦略をとる。一般的に1台数百万円する自動搬送ロボットのハードを、LexxPlussは製造原価で提供する。具体的には、1台100万円以下にしたいと阿蘓氏は意気込む。

自動搬送ロボットのプロトタイプイメージ
自動搬送ロボットのプロトタイプイメージ

 オープンソース化は、顧客にとって導入コスト以外のメリットもある。ソフトウエアの中身を見られるので問題が起きても対処しやすく、自社の使い方に応じてカスタマイズも容易だ。オープンソースコミュニティーで開発が進めば、常により安全で性能の高い最新ソフトウエアを使用できる。

 LexxPlussは年内にプロトタイプを作成し、ハードウエア、ソフトウエアを公開。21年に自動搬送ロボットの量産を目指す。当面は物流会社の倉庫や、メーカーの製造工場をターゲットとし、その後、医療分野や教育、スーパーマーケットなどへの展開も視野に入れている。

 現在同社は新型コロナウイルスの影響で人手不足に直面している企業向けに、20年5月31日まで先着15社に「自動搬送ロボットの導入分析サービス」を無償提供している。

倉庫や工場の自動搬送ロボット分析サービスを提供中
倉庫や工場の自動搬送ロボット分析サービスを提供中

(写真・資料提供/LexxPluss)