単行本発行部数約315万部から6000万部へとわずか1年で異例の急成長を見せた、漫画『鬼滅の刃』。アニメ、舞台、映画などメディアミックスを展開し、読者を増やしてきた。そのプロセスをTwitterの投稿件数の推移から集英社の“2.5次元”マーケティングの秘密を解き明かす。

漫画『鬼滅の刃』。作品の舞台は大正時代。山に住む炭売りの少年・竈門炭治郎が町から帰ると、家族は鬼に殺されていた。唯一生き残った妹・禰豆子は鬼に変貌してしまう。禰豆子を人間に戻し、家族の敵を討つため炭治郎は鬼への復讐(ふくしゅう)を決意する。2020年5月18発行の「週刊少年ジャンプ」で連載は最終回を迎えた
漫画『鬼滅の刃』。作品の舞台は大正時代。山に住む炭売りの少年・竈門炭治郎が町から帰ると、家族は鬼に殺されていた。唯一生き残った妹・禰豆子は鬼に変貌してしまう。禰豆子を人間に戻し、家族の敵を討つため炭治郎は鬼への復讐(ふくしゅう)を決意する。2020年5月18発行の「週刊少年ジャンプ」で連載は最終回を迎えた

 漫画『鬼滅の刃』(発行:集英社)が2020年5月13日にシリーズ累計6000万部を突破した。オリコン年間コミックランキングによれば、19年の同作の発行部数は約1200万部で、大ヒット漫画『ONE PIECE』の1080万部を上回った。

 漫画を小説化した『鬼滅の刃 しあわせの花』『鬼滅の刃 片羽の蝶』も好調で、累計100万部を達成。映像では、19年に全国20局で放送されたテレビアニメ『鬼滅の刃 竈門炭治郎(かまどたんじろう) 立志編』が大ヒットし、その続編となる映画『無限列車編』を20年10月16日に公開する予定だ。作者の吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)氏にとってこれが初めての連載作品だった。それが異例のスピードで急成長した背景には、これまでにも集英社が漫画『黒子のバスケ』や『ハイキュー!!』などで実践してヒットにつなげてきた“2.5次元”マーケティング戦略がある。『鬼滅の刃』はその最大の成功例といえる。今回はTwitterの投稿件数や投稿者の属性を分析しながら、同作のマーケティング戦略を解明した。

2.5次元マーケティングでヒット連発

 「2.5次元」という言葉を耳にすることが増えてきた。平面(2次元)の表現である漫画やアニメ、ゲームなどを原作とし、立体(3次元)の舞台に展開したコンテンツのことを2.5次元と呼ぶ。男性アイドルが役を演じるため、若い女性を中心に人気があり、10年代に入ってから著しく成長している。ぴあ総研によると、18年には、2.5次元の舞台は197作品が上演され、総動員数は約280万人、市場規模の推計は前年比44.9%増の226億円だった。ここでは漫画連載や単行本、アニメ、映画などを効果的に展開して、女性ファンを増やしながら最終的に2.5次元の舞台につなげる一連のプロセスを2.5次元マーケティングと定義する。

 この2.5次元マーケティングを得意とするのが、集英社(東京・千代田)といえるだろう。『週刊少年ジャンプ』の連載を核に、いくつものヒットを飛ばしてきた。従来のコミック市場では、「少年漫画」「少女漫画」と性別でターゲットを分けてきた。しかし、同社は少年漫画をアニメ、映画、舞台へと広げていく過程で多くの女性ファンを取り込むことで、マーケットを一気に拡大する戦略を確立している。

2.5次元マーケティングの流れ
2.5次元マーケティングの流れ
少年誌の連載と単行本で人気が出たコミックをアニメや映画に展開し、女性ファンを獲得する