単行本発行部数約315万部から6000万部へとわずか1年で異例の急成長を見せた、漫画『鬼滅の刃』。アニメ、舞台、映画などメディアミックスを展開し、読者を増やしてきた。そのプロセスをTwitterの投稿件数の推移から集英社の“2.5次元”マーケティングの秘密を解き明かす。
漫画『鬼滅の刃』(発行:集英社)が2020年5月13日にシリーズ累計6000万部を突破した。オリコン年間コミックランキングによれば、19年の同作の発行部数は約1200万部で、大ヒット漫画『ONE PIECE』の1080万部を上回った。
漫画を小説化した『鬼滅の刃 しあわせの花』『鬼滅の刃 片羽の蝶』も好調で、累計100万部を達成。映像では、19年に全国20局で放送されたテレビアニメ『鬼滅の刃 竈門炭治郎(かまどたんじろう) 立志編』が大ヒットし、その続編となる映画『無限列車編』を20年10月16日に公開する予定だ。作者の吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)氏にとってこれが初めての連載作品だった。それが異例のスピードで急成長した背景には、これまでにも集英社が漫画『黒子のバスケ』や『ハイキュー!!』などで実践してヒットにつなげてきた“2.5次元”マーケティング戦略がある。『鬼滅の刃』はその最大の成功例といえる。今回はTwitterの投稿件数や投稿者の属性を分析しながら、同作のマーケティング戦略を解明した。
2.5次元マーケティングでヒット連発
「2.5次元」という言葉を耳にすることが増えてきた。平面(2次元)の表現である漫画やアニメ、ゲームなどを原作とし、立体(3次元)の舞台に展開したコンテンツのことを2.5次元と呼ぶ。男性アイドルが役を演じるため、若い女性を中心に人気があり、10年代に入ってから著しく成長している。ぴあ総研によると、18年には、2.5次元の舞台は197作品が上演され、総動員数は約280万人、市場規模の推計は前年比44.9%増の226億円だった。ここでは漫画連載や単行本、アニメ、映画などを効果的に展開して、女性ファンを増やしながら最終的に2.5次元の舞台につなげる一連のプロセスを2.5次元マーケティングと定義する。
この2.5次元マーケティングを得意とするのが、集英社(東京・千代田)といえるだろう。『週刊少年ジャンプ』の連載を核に、いくつものヒットを飛ばしてきた。従来のコミック市場では、「少年漫画」「少女漫画」と性別でターゲットを分けてきた。しかし、同社は少年漫画をアニメ、映画、舞台へと広げていく過程で多くの女性ファンを取り込むことで、マーケットを一気に拡大する戦略を確立している。
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