新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐさまざまな取り組みが、デザイン業界からも出てきた。感染症への対策をまとめた「PANDAID」と呼ぶサイトを立ち上げたり、感染症対策を行っている国内外の企業事例をデザインの視点で調査してリポートしたりと、デザインの力が結集している。
デザインファームのNOSINER(横浜市)は「PANDAID」と呼ぶサイトを4月5日に立ち上げた。感染症への対策をまとめており、非営利で自主運営している。誰もが編集に参加できる点が特徴で、さまざまな知恵を結集できるようにしたという。「有志がネットで集まって内容を決めており、世界中の知恵を生かしてパンデミック(世界的な大流行)から人々の生命を守れるようにしたかった。日本語版だけでなく英語版もあり、さまざまな言語にも順次対応していく」(NOSINER代表の太刀川英輔氏)。
コンテンツを見ると、「COVID-19」とは何か、衛生面では何をすればいいか、感染症の知識やセルフチェックの方法などに加え、体力の維持はどうすべきかなどを説明。健康以外の内容も充実しており、例えば「仕事」という項目には国の助成金の動きやリモートワークのノウハウを掲載。「自宅で過ごす」では「文化を楽しむ」「こどもと楽しむ」など生活するうえでの情報についても記述した。感染症への対策については既に多くのサイトがあるが、仕事や生活の面まで含めて見られるサイトは少ない。同社は東日本大震災の際も、非常時の生活の正しい知識を集めたサイト「OLIVE」を開設した経験がある。今回もさまざまなサイトを検索せずに、1カ所だけ見ればすべてが分かるようにしたという。
「CDC(米疾病対策センター)がない国でも正しく有効な情報を集めれば、有効な対策を広げられる。PANDAIDを、世界中の人が使えるサイトに育てたいと考えている」と太刀川氏は期待。まだ開設して間もないが、アクセス数が伸びるなど早くも注目されているようだ。
国内外の事例を収集
デザインコンサルティング会社のトリニティ(東京・千代田)は4月6日、同社のサイトで「新型コロナへの世界の企業・組織のアクション事例と社会に起こりつつある変化の読み解き」と題したリポートを掲載した。感染症への対策を行っている国内外の企業事例をデザインの視点で調査し、デザイナーとして何ができるかを考えるヒントになるようにしたという。
例えば「医療を支える」をテーマにした取り組み事例には、カナダのアイスホッケー用品メーカーが、自社の技術を生かして医療関係者が顔に装着する防護シールドを開発した例を紹介。「感染症の拡大を防ぐ」では、台湾政府が開発したマスクの供給状況を示す情報システムを取り上げた。「くらし・経済を支える」では、米大学が考案した密閉空間用の換気システムについて説明。「きもちに寄り添う」には、英国の菓子メーカーが発生した製品在庫を医療従事者をねぎらうためにプレゼントしたというケースを記述している。さらに今後に起こりえる生活の変化についても解説しており、新たな時代に向けてデザインで何ができるかを対話するために、同リポートを役立ててほしいという。
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