AI(人工知能)とビッグデータを活用し、自動運転やキャッシュレス、遠隔医療や遠隔教育など、生活全般をスマート化した“丸ごと未来都市”を構築する「スーパーシティ法案」が成立した。スマートシティではなく、スーパーシティと銘打った法案は、日本をどのように変えようとしているのか。また、課題は何なのか。その中身を詳しくひも解いた。

AIやビッグデータを活用した世界最先端の都市を築くプロジェクトがいよいよ動き出す(イメージ/Shutterstock)
AIやビッグデータを活用した世界最先端の都市を築くプロジェクトがいよいよ動き出す(イメージ/Shutterstock)

 新型コロナウイルスの感染拡大が世間の耳目を集める中、政府腹心のプロジェクトが、動き出した。スーパーシティの実現をにらんだ国家戦略特区法の改正案が2020年5月27日、参院本会議で自民、公明、維新などの賛成多数により可決。19年の通常国会で廃案となり、19年秋の臨時国会では法案の提出自体を見送ったが、「3度目の挑戦」で扉が開いた。

 スーパーシティとは何なのか。内閣府が20年3月に公表した構想案によると、「移動、物流、支払い、行政、医療・介護、教育、エネルギー・水、環境・ゴミ、防犯、防災・安全の10領域のうち少なくとも5領域以上をカバーし、生活全般にまたがること」「2030年頃に実現される未来社会での生活を加速実現すること」「住民が参画し、住民目線でより良い未来社会の実現がなされるようネットワークを最大限に利用すること」という3要素を満たす都市と定義されている。

 従来のように個別分野に特化して実証実験を進めるのではなく、自動運転や完全キャッシュレス決済、ドローン配送、行政手続のワンスオンリー化(一度提出した資料は、再提出する必要がない仕組み)、遠隔教育や遠隔医療など、暮らしに直結する複数の分野にまたがってデジタル化を推進することで「2030年の暮らし」を先取りする。技術者や企業目線ではなく、住民目線でよりよい未来を目指す点でも、従来の街づくりとは一線を画する内容となっている。少子高齢化や過疎、空き家問題といった地域が抱える諸課題を、日本の最先端技術と大胆な規制改革を総動員して解決しようという試みだ。

「スーパーシティ」では、移動や支払い、医療・介護、教育などさまざまな分野にまたがってデータ連携を図り、AIを使ってビッグデータを解析。住民の社会的課題を解決する(内閣府資料より抜粋)
「スーパーシティ」では、移動や支払い、医療・介護、教育などさまざまな分野にまたがってデータ連携を図り、AIを使ってビッグデータを解析。住民の社会的課題を解決する(内閣府資料より抜粋)

海外で進む未来都市構想

 AIやビッグデータを駆使して未来都市を築くのは、世界の潮流でもある。とりわけ大きなインパクトを与えたのは、カナダ最大の都市トロントを舞台にした「Sidewalk Toronto(サイドウォークトロント)」プロジェクト。米グーグルの親会社であるアルファベット傘下のSidewalk Labs(サイドウォークラボ)が名乗りを上げ、19年6月に「マスター・イノベーション・アンド・デベロップメント・プラン(MIDP)」と題した基本計画を発表した。

 キーサイド(Quayside)と呼ばれるウォーターフロント地区で、自動運転を前提とした街づくりを進める。歩行者や自転車、公共交通と用途に応じて道路を分け、公共交通やライドシェアなどの移動サービスを定額制で乗り放題とする。クルマを組立てるように規格化されたパーツを組合せて木造住宅を建築するなど、数々の先進的な内容を盛り込んだが、新型コロナの感染拡大が広がる20年5月7日、突如、プロジェクトの中止が発表された。街中にセンサーを配置し、行動データを収集することに対しては、住民から「プライバシーが侵害される」と反発の声が上がったのも事実だ。

 世界最大のEC(電子商取引)企業アリババ集団が本社を置く中国・杭州市では、「シティブレイン」プロジェクトが進行中。アリババグループが行政と連携し、監視カメラで捉えた道路のライブカメラ映像をAIで分析し、違法駐車や信号無視といった交通違反の取り締まりや渋滞対策に役立てている。市内では無人コンビニも展開し、電子決済の「支付宝(アリペイ)」を使った顔認証でのキャッシュレス払いを実現した。

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