自粛ムードを癒やす“ならでは”の魅力

 加えて、このゲームには、いつ終わるとも分からない外出自粛の日々、それによって増える自宅で過ごす時間に適した“ならでは”の要素がある。それは、ゲームの中で「何でもできること」だ。

 ゲームの舞台は無人島。プレーヤーは移住パッケージツアーに参加して、無人島での生活をスタートする。ここでは釣りに夢中になってもいいし、ムシ捕りに励んでもいい。家具を集めて自宅を飾ってもいいし、自分で服をデザインしてもいい。花を交配させて色とりどりの庭園を造ることも、株の売買でお金を稼ぐことも、川に橋を架けるといった島のインフラ整備にまい進することも自由だ。いずれは島の地形そのものを改変することすら可能になる。

 実際、ネット上ではさまざまな目標に没頭するゲーマーたちがそれぞれの活動を報告している。Twitter Japanによると、『あつまれ どうぶつの森』は日本だけでなく、米国や韓国、フランス、スペインでも話題で、20年2月から4月初旬までに世界で最もツイートされたゲームタイトルになっている。興味のある人は、SNSで「#あつ森」「#AnimalCrossingNewHorizon」と検索してみてほしい。ユニークなゲーム画面をたくさん発見できるはずだ。

筆者は、この無人島に温泉センターを作ることを目標にプレー中。露天風呂が少しずつ形になってきた
筆者は、この無人島に温泉センターを作ることを目標にプレー中。露天風呂が少しずつ形になってきた
自宅は、あえてスラム風背景に。こうした壁紙やじゅうたん、家具なども用意されている
自宅は、あえてスラム風背景に。こうした壁紙やじゅうたん、家具なども用意されている

 「何でもできる」ということは、逆に何もしなくてもいいということでもある。島の住人(どうぶつたち)とただ会話するだけでも楽しいし、島を歩き回って貝殻を拾い集め、それをお店で売るだけでも楽しい。そこには「特に何もしなくとも、島で過ごすだけでワクワクできるようにする」というゲーム設計方針が貫かれているからだ。

 例えるならば、予定を立てずに行った旅先のホテルで目覚め、「さあ、きょうは何をしよう」「○○を体験してみるか」「いや、何もしないでダラダラするのもいいかな」と考えるときの、あの豊かで自由なひとときが永遠に続く。『あつまれ どうぶつの森』はそんなゲームだと説明できるだろう。

 そしてこの無人島では、現実と同じように時間が経過する。日が暮れ、夜になると月が島を照らす。現実世界が夏になればゲームの中も夏になり、夏の虫、夏の魚が島に出現する。島は少しずつ変化を続け、毎日のように新しい発見がある。外出ができず、家に閉じこもる生活を強いられている人たちにとって、それは本来あるべき現実世界のようだ。

ひたすら虫を捕るのも楽しい。捕まえた虫や魚、掘り出した化石などは博物館に寄贈することも可能
ひたすら虫を捕るのも楽しい。捕まえた虫や魚、掘り出した化石などは博物館に寄贈することも可能
島に移住してきたどうぶつたちとの会話も楽しい。移住者が増えると、島での暮らしはさらに充実したものになっていく
島に移住してきたどうぶつたちとの会話も楽しい。移住者が増えると、島での暮らしはさらに充実したものになっていく

ゲームの中で友達と集合

 もう1つ、『あつまれ どうぶつの森』が今の社会情勢にマッチしていたのは、人と接するためのコミュニケーションゲームとして優れていることだ。

 1つの島を家族全員でシェアし、みんなで楽しめる。さらには、インターネットを介してゲーム内で友達と交流することも可能だ。友達の島に遊びに行き、最大8人で一緒に過ごせる。現実世界では会うことが難しい友達とも、ゲームの世界でならわいわいと遊べるのだ。オンラインサービス「Nintendo Switch Online」に加入すれば、スマホを使ったチャットも楽しめる。

家族が2人目以降のプレーヤーとして参加すると、既に開発が進んだ島に合流して新たな住人になれる
家族が2人目以降のプレーヤーとして参加すると、既に開発が進んだ島に合流して新たな住人になれる

 筆者自身、長らく外出を自粛して自宅にこもる生活を送っているが、今のところ不思議なほどストレスを感じていない。それは、もともとインドアの趣味があることに加え、『あつまれ どうぶつの森』を楽しめていることも要因だと感じている。

 このようなソフトが11言語に対応したグローバルなタイトルとして、新型コロナウイルスが猛威を振るう3月に発売された。外出自粛を余儀なくされた世界中の人たちがこのソフトに飛びついたのは、いわば当然かもしれない。この状況がしばらく続き、自宅で過ごす時間が長くなりそうな今後を考えると、ロングヒットにもなるだろう。どのように自宅で過ごそうか悩んでいる人も、『あつまれ どうぶつの森』をぜひ体験してみてほしいところだ。

(c) 2020 Nintendo


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