東急やJR東日本などが静岡県の伊豆エリアで取り組んできた観光MaaS「Izuko(イズコ)」の実証実験第2弾が、2020年3月10日に終了した。2回にわたる実証実験によって見えてきた成功と失敗、そして今後の展開について、当初からIzukoを推進してきた東急の森田創氏に聞いた。

伊豆エリアを舞台にした観光MaaSの成果は?
伊豆エリアを舞台にした観光MaaSの成果は?

 スマートフォンで購入したチケット画面を見せるだけで、伊豆エリアの電車やバスが2日間乗り降り自由。さらにオンデマンド乗り合い交通や観光施設のチケットも割安で購入できる。Izukoは、そんな使い方ができる観光客向けのMaaSだ(関連記事 「観光MaaSの実力は? Izukoを使って分かった3つの鍵)。東急やJR東日本、ジェイアール東日本企画などを核に実証実験を推進しており、2019年4月から6月のフェーズ1に続き、19年12月から20年3月10日までフェーズ2を行った。

 フェーズ2では、フェーズ1で利用していた専用アプリに代わってWebベースのシステムを導入。アプリをダウンロードすることなく、Webブラウザー上でチケットの購入や表示ができるようにした。さらに利用できるエリアや購入できる交通チケットの種類、観光チケットの対応施設数を大幅に拡充。伊豆が最も観光客でにぎわう“シーズン本番”に、満を持して実施した。

 20年1月からの新型コロナショックの影響を多分に受けながらも、フェーズ2では合計5121枚のデジタルチケットを販売。これはフェーズ1で販売した1045枚の約5倍に当たる。フェーズ1とフェーズ2を合わせた合計6166枚のチケット販売は、国内の観光型MaaSでは最多で「圧倒的な利用規模」(東急)だという。

 専用アプリを使ったフェーズ1、そして、そこから学びを得て実施したフェーズ2と、2回にわたるIzukoの実証実験から何が見えてきたのか。Izukoを推進する東急の都市交通戦略企画グループ森田創課長に聞いた。

「スマホの壁」は予想以上に高かった

Izukoの説明をする東急の森田創氏(19年12月のメディア向け体験会時に撮影)
Izukoの説明をする東急の森田創氏(19年12月のメディア向け体験会時に撮影)

――実証実験を通して、どんなことが見えてきましたか。

森田 創氏(以下、森田氏) フェーズ2では、私は伊豆の様々な駅に50回くらい立ってイベントを行い、利用者の方々を見てきました。そこで痛切に感じたのは「スマホの壁」です。伊豆の観光客は特にシニアの方が多くて、その大部分の方がスマホに抵抗感がある。「スマホを使うサービス」という時点で、肌感覚的には3割程度のお客様しかターゲットにできていませんでした。MaaSというとスマホベースの発想しかありませんでしたが、そもそも伊豆においては「スマホ=ニッチ」と認識しておく必要があったのです。

 熱海駅では、JR東日本の販促プロモーションを行い、スタッフがお客様に手取り足取りIzukoの使い方を説明していたのですが、現時点ではかなり手厚くサポートしないとデジタル商品は売れない、と感じました。

 これは(シニア世代の割合が多い)観光型MaaSにとって本質的な問題かもしれません。もし従来の紙のチケットとスマホのデジタルチケットで同じ商品があったら、ほとんどが紙のほうを購入するでしょう。だから、既存の商品をデジタルに置き換えるだけではダメで、価格が安いとかお得な特典があるなど、スマホを使う明確なメリットを用意する必要があると再確認できました。

 そんな中でフェーズ2の最大の失敗は、ターゲットを広げて“全方位外交”でサービスを展開したことかもしれません。専用アプリからWebベースに切り替えたフェーズ2では、ユーザーインタフェース(UI)の改善に力を入れ、操作性を大幅に向上させました。このためチケットの販売数がフェーズ1の約5倍に増えたのに対し、操作性などのコールセンターへの問い合わせは7分の1まで減りました。ただ、いくらUIが改善したといっても、そもそも半数以上の人には関係ない。それ以前の、スマホを使うかどうかというところに壁があったのです。

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