数ある缶詰メーカーのなかで、焼き鳥の缶詰で独自の地位を確立しているホテイフーズコーポレーション(静岡市)。発売から50周年を迎え、「酒のつまみになる保存食」というイメージを打ち破るべく新たな取り組みを始めている。2020年3月から料理にも使える新フレーバー「やきとり塩レモン味」を発売。また現在は新型コロナウイルスの影響で停止しているが、19年から一般消費者向けの工場見学も開始していた。国産鶏肉を実際に炭火で焼いている様子を見せることで、新たなファンの獲得につなげる狙いがあった。
缶詰の生産量日本一を誇る静岡県。マグロやカツオを使ったツナ缶が代表的だが、焼き鳥缶詰という一風変わった商品を主力とするのがホテイフーズコーポレーション(静岡市)だ。他社と同様、もともと輸出用のツナ缶を主力としていたが、高度経済成長期に人件費の上昇や原材料であるビンチョウマグロの価格高騰で、別の活路を模索。安定的な供給が見込める鶏肉を使った焼き鳥の缶詰を1970年に発売した。これがヒットし、あっという間に看板商品に。2020年は発売から50年を迎える節目の年となる。
市場に定着した焼き鳥缶詰だが、開けるだけで食べられる手軽さや、長期間常温保存できる点ばかりに注目されてきた。そのため、40~50代の男性が酒のつまみとして購入する商品というイメージが付いている。08年以降、ガーリックペッパー味や柚子(ゆず)こしょう味、うま辛味などのラインアップを増やし、おかずとしても食べられる点を訴求。「おつまみとおかずの比率がようやく半々くらいになってきた」(大木泰人販売部長)。販売数量を伸ばすためにはさらなる食用シーンの開拓が不可欠で、最近は味噌汁の具やタンドリーチキンなど、アレンジレシピの提案にも力を入れているところだ。
20年3月には、6つ目のフレーバーとして「やきとり塩レモン味」を追加。これまでの商品よりもあっさりとした味付けで、パスタとあえるなど料理の具としての利用にも適しているという。
新たなターゲットとして狙うのは女性や若者だが、缶詰には保存食のイメージが強く、味や品質に関心を持つ人は少ない。「缶詰は120度の蒸気で殺菌して密封しているので、実は保存料や防腐剤は一切使っていない。しかしあまり知られていない」とホテイフーズの山本達也社長。しかもやきとり缶詰は中身も本格派。50年前から100%国産鶏肉を用い、しかも本物の炭を使って焼いているという。しかしその特徴を伝えられているとは言えなかった。缶詰は封を開けるまで中身を見ることができないし、パッケージで伝えられる情報量には限界がある。
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