ソフマップはPC販売促進に期待

 では、ソフマップはどうか。同社では、秋葉原の街を盛り上げるため、ライバル関係にあるパソコンショップや電気店など十数社と共に、各社の取締役以上が出場する企業対抗のeスポーツ大会に以前から参加していた。社内eスポーツ部の創設はその流れだった。

 加えて、「若い人にアプローチするとき、“eスポーツ”というキーワードはとても強い。eスポーツに注力していること自体が顧客に店を選んでもらう要因になる」と同社の渡辺武志社長は語った。このため、eSports Studio AKIBAが入るソフマップAKIBA2号店 パソコン総合館は、eスポーツに力を入れた売り場構成にしている。1階、2階を「GAMING ZONE」と名付け、1階にはゲーミングPC売り場を、2階にはeSports Studio AKIBAのほか、ゲーミングPC向けの組み立てパーツ売り場、人気プロeスポーツチームのオリジナルグッズの販売コーナーを設けた。

 また、eSports Studio AKIBAでは『レインボーシックス シージ』や『リーグ・オブ・レジェンド』、『フォートナイト』といったゲームタイトルのコミュニティーイベントを定期的に開催。こうした取り組みも含めて店頭でeスポーツを体験してもらい、購入へとつなげる考えだ。

 さらに、eスポーツというキーワードは、人材確保の面でも効果的だ。「最近はeスポーツが好きという理由でアルバイトに応募してくる若者も多い」(渡辺氏)。

 実際、この日の練習試合に参加したソフマップのeスポーツ部には、アルバイトやこの春に入社する新入社員も部員として含まれていた。同社のeスポーツ部には、希望すれば社員だけでなくアルバイトも参加できるのだ。このほか、外部のプロeスポーツチームに所属し、ソフマップで販売員として働く社員もいるという。

ソフマップチームのメンバーは社員とアルバイトから成る
ソフマップチームのメンバーは社員とアルバイトから成る

企業間でのeスポーツにも隆盛の兆し?

 「部活動を通じてeスポーツに習熟した社員が増えることは、接客を含めたマーケティング面でもプラスになる」と渡辺社長。ソフマップの取り組みは、秋葉原という街に拠点を置く小売店ならではの視点だ。

 一方のレノボ・ジャパンはeスポーツを「社員間の新たなコミュニケーションツール」ととらえ、社長自らが率先して楽しむ部を設立。PCメーカーという自社の強みを生かして社外交流にも拡大し、業種を超えた交流や情報交換にもつなげようとしている。レノボのeスポーツ部支援プロジェクトに参加する企業を中心に、企業間eスポーツ大会の流れが加速しそうだ。

 さらに、そうした流れがeスポーツプレーヤーのあり方にも影響を与える可能性もある。両社とも、企業発のeスポーツ活動が野球などと同様の実業団リーグに育てばと話していた。こうした構想を持つのは両社に限った話ではない。例えば、NTT東日本。同社はeスポーツ分野の新会社「NTTe-Sports」を設立したが、それに先立ち、社内同好会としてeスポーツチーム「TERA HORNs(テラホーンズ)」も発足させている(関連記事「NTT東の技術でeスポーツに本格参入 地方のイベント開催など支援」)。

 TERA HORNsの仕掛け人は、『ストリートファイターⅤ』では「かげっち」のプレーヤーネームで知られるNTTe-Sportsの副社長、影澤潤一氏。同氏によればチーム結成の背景として、「社会人eスポーツ文化の醸成」や「社会人リーグの構想」があったという(関連記事:日経 xTECH「NTT東が社員でeスポーツチームを結成、仕掛け人が語った意外な目標」)。

 日本におけるeスポーツは黎明(れいめい)期をようやく抜け出そうかというところ。プロ選手も本業を別に持った社会人が少なくない。また、「プロ」と「それ以外」というざっくりとしたくくりしか存在しないのも現状だ。野球やバレーボール、ラグビーなどと同じように、実業団としての社会人リーグがあれば、という声はプレーヤーからもファンからもある。企業の部活動がeスポーツ選手の受け皿を生む可能性にも期待したい。

(写真/平野亜矢)