米国App Storeで2018年に1位を獲得したハイパーカジュアルゲーム「Snowball.io」を制作した芸者東京(東京・文京)。それ以降、広告収入で成り立つハイパーカジュアルゲームでヒットを出し続けている同社の、マーケティングありきのコンテンツ作りの極意とは。

芸者東京が米国App Storeで2018年に1位を獲得したハイパーカジュアルゲーム「Snowball.io」の画面(c)Geisha Tokyo, Inc.
芸者東京が米国App Storeで2018年に1位を獲得したハイパーカジュアルゲーム「Snowball.io」の画面(c)Geisha Tokyo, Inc.

 芸者東京が“主戦場”と見定めているハイパーカジュアルゲームとは、スマートフォンにゲームアプリをダウンロードしてもらい、そこに広告を流す代わりにユーザーは無料で遊べるという、比較的単純な内容のゲームを指す。誰でも簡単にプレーできるものが多く、日本だけでなく、世界各国の市場で勝負しやすい。ひとたびヒットすれば大きな収益をもたらすのが特徴だ。

ネット広告は冒頭の0.3秒が勝負

 ハイパーカジュアルゲームをビジネスとして成立させるためには、そのゲームを好むと思われるユーザーを効果的にターゲティングして、ウェブ上やアプリ上のあちこちにネット広告を出稿。そうして多くのユーザーにそのゲームを認知させ、スマホにダウンロードして遊んでもらい、そこに広告主のネット広告を流して広告収入を得る必要がある。その結果、1ユーザー当たりに換算した広告収入が、1ダウンロード当たりの獲得コスト(CPI:Cost Per Install)を上回れば、ビジネスが成り立つ。この状況を作り上げてゲームのダウンロード数を増やせれば、得られる収益が膨れ上がっていくわけだ。

 だが、ネット上にはゲームはもちろん、さまざまなコンテンツに関わる情報があふれている。芸者東京の田中泰生CEO(最高経営責任者)は、「『Instagram』の場合、ユーザーの多くは自分のホーム画面を上方向にフリックしながら見ており、ある調査によると、目に入った画像が面白いかどうかをユーザーは0.3秒で判断している」という。つまり、自社で制作したゲームのネット広告を出稿するなら、冒頭の0.3秒前後でユーザーに面白さを伝える必要がある。

 また、広告収入を得るためには、自社のゲームの中に、広告主に出稿してもらった広告を表示するスペースや時間帯を設けなければならない。ただ、「広告を見せすぎて、ユーザーのゲーム体験を壊してしまっては、あっという間に離脱されてしまうので本末転倒」(田中CEO)。ネット広告を見せるタイミングや全体のバランスも考える必要がある。

従来の主流のゲームとは作り方が根本的に異なる

 そうなると、有料課金を前提としたり、ゲーム内で購入してもらうアイテムの対価などを収益源としたりする従来の主流のゲームとは、ゲームの作り方が根本的に異なってくる。

 従来ならば、ゲームクリエイターは面白いゲームを作るのが第一で、出来上がったゲームをユーザーに認知させ、遊んでもらって収益に結び付けるのは、いわばマーケターの仕事だった。これがハイパーカジュアルゲームになると、クリエイター自身が、出来上がったゲームをユーザーにどう届けるか、ゲームの中にどう広告を入れるかを考えなくてはならない。「クリエイターの仕事の中身が大きく変わった」(田中CEO)のである。

 例えば、芸者東京が2019年にリリースした中で最もヒットした「Traffic Run!」というゲームが、どのように制作されたか見てみよう。

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