米グーグルの日本法人グーグル(東京・渋谷)は独自調査により、スマホを操作中に瞬時に買いたい気持ちになり、購入まで完結させる「パルス消費」の動向をつかんだ。そこでカギとなるのが消費者の情報探索行動だ。今回はパルス消費に影響を与える情報探査行動について解説する。
情報探索をかき立てる「8つの動機」とは
スマートフォンが普及した現代では、日々のちょっと気になったことを即座に検索できるようになった。その影響により、スマホを操作しているときに、突発的に「買いたい気持ち(パルス)」が高まって商材を検索し、それを発見した瞬間に購入の意思を固めるといった消費行動、すなわち「パルス消費」が消費者の間で見られるようになってきた。
グーグルはパルス消費の実態をより深くさぐるべく2019年末に調査を実施、その結果を20年1月に公開した。それによると、これまでパルス発生後に即商品を購入すると考えられていたが、実はパルス発生と実際の購買行動との間に“時間差”があることを突き止めた(関連記事「グーグルが提唱『パルス消費』 スマホ世代の消費行動の新事実」)。さらに消費につながる情報探索行動は、目指す商材の購入というゴールに向けた一本道を進んでいくわけではなかった。パルス発生と購入までの期間中、あるいはその前後で、「なぜこのタイミングでまたそれを調べるの?」というように、現れたり消えたりしていたのだ。それどころか、何度も情報探索していた商材と、全くかけ離れた商材を買うことさえあった。どうやらパルス消費は、この「無秩序な情報探索行動」と深く関わっているようだ。
19年末の調査で分かったのは、消費者に情報探索行動をとらせる複数の潜在的な「動機」が存在し、消費者はそれぞれの動機の間を揺れ動いているということだ。グーグル コンシューマーマーケットインサイトチーム リサーチ部門統括(日本/韓国)の小林伸一郎氏は、この潜在的な動機を「気晴らしさせて」「学ばせて」「みんなの教えて」「にんまりさせて」「納得させて」「解決させて」「心づもりさせて」「答え合わせさせて」の8つに分類した。
さらに8つの動機を、気になった商材の情報を集めている状態「さぐる」と、収集した情報を絞り込もうとしている状態「かためる」の大きく2つに分けた。ここで面白いのが、「一般的には『さぐる』」の後で『かためる』に進むと思いがちだが、実際は情報を絞り込んでいる最中に新しく選択肢を増やしたり、気晴らしで検索したりしていたはずなのに、そのとき初めて知った商品を購入したりといった行動パターンが見られた」(小林氏)こと。つまり消費者は「さぐる」と「かためる」という2つのモードの間を、行きつ戻りつするような情報探索行動をとっているのだ。小林氏はこうした行動の構造を、蝶(ちょう)の形に例えて「バタフライ・サーキット」と名付けた。
バタフライ・サーキットの特性
前回、パルス消費の解説で事例として取り上げた新婚旅行でハワイに行った女性の情報探索行動を、このバタフライ・サーキットに照らし合わせてみよう。この女性は約1年半にわたって旅行先の候補として「ギリシャ」「バリ島」「ハワイ」などを検索しているが、実はその時点で既に心の中で「新婚旅行はハワイに行く」と決めて(パルスが発生して)いた。そのため、ギリシャやバリ島に関する検索ワードは「さぐる」が大半で、その中でも「気晴らしさせて」や「学ばせて」の比率が高かった。
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