2018年に化粧品事業で主要11ブランドに絞った海外展開を開始し、アジアや欧米での市場攻略を進める花王。19年は海外主要拠点での売り上げが130%伸長した。この勢いに乗り、20年4月に発売する乾燥性敏感肌向けの「キュレル」の新製品を中軸に据え、まずはアジアでの展開を加速させる。

2020年4月11日に発売する「キュレル ディープモイスチャースプレー」(想定価格はすべて税別で、60g 900円、150g 1800円、250g 2500円。編集部調べ)。2歳から使用可能
2020年4月11日に発売する「キュレル ディープモイスチャースプレー」(想定価格はすべて税別で、60g 900円、150g 1800円、250g 2500円。編集部調べ)。2歳から使用可能
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開発7年、念願の保湿スプレーで海外展開を加速

 キュレルは乾燥性敏感肌に悩む人をターゲットに1999年に販売を始め、敏感肌化粧品市場において5年連続で売上首位を維持している(インテージ SRI 化粧品敏感肌市場 2015年1月~19年12月 シリーズ別金額シェア)。新製品の「キュレル ディープモイスチャースプレー」(価格はオープン)は、クリームやローションなどが主流の保湿剤では少数派のスプレータイプで、手が届きにくい背中や腰など全身をくまなくケアできるのが特徴だ。

 開発の狙いは、乾燥・敏感症状に悩む乾燥性敏感肌の人に「いつでも どこでも どこにでも 使える、セラミドケア」を提供すること。その目的に最適な剤型がスプレーだった。花王によると国内での保湿スプレーの使用率はまだ10%と低く、市場自体も約40億円と小規模だが、堅調に伸長しているという。「新しいスキンケア習慣を提案し、保湿スプレーを根付かせていきたい」(花王)。

 皮膚を乾燥から守る保湿剤は、通常、粘度が高い。それをスプレー化するには、高い技術力が必要となる。キュレルもそのハードルを越えるため、研究開始から7年、1000回以上の試作を繰り返しやっと製品化にこぎ着けた。最大の鍵は、セラミド機能成分の微細化(小さくする)と非晶化(柔らかな状態にする)だった。

 高い保湿効果に不可欠なセラミド機能成分は、水に溶けない個体だ。そのため水中に油分を含ませるタイプの乳液への配合が難しい。従来技術では、低粘度剤型に配合しても安定化できなかったという。この課題を解決するため新たな乳化技術の開発に取り組み、世界初のサブミクロン製法による乳化技術を生み出した。サブミクロン製法とは、二重円筒缶の内側に水相、外側に油相が流れ、微小空間のなかで数ミリ秒や1/1000秒という極めて短い時間で水相と油相を混ぜ、その噴流を利用して乳化する。「この技術により、セラミド機能成分の微細化と、非晶化が達成できた」(花王)。

保湿効果と簡便性を備えるスプレータイプ。下向きでもスプレーでき、背中など手が届きにくいところでも手軽に保湿ができる
保湿効果と簡便性を備えるスプレータイプ。下向きでもスプレーでき、背中など手が届きにくいところでも手軽に保湿ができる
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 現在、キュレルブランドの中核商品は顔用の保湿クリーム「キュレル潤浸保湿フェイスクリーム」だ。軽い使い心地と保湿力が支持され敏感肌化粧品では、4年連続売り上げ1位を維持している(インテージSRI化粧品敏感肌市場16年1月~19年12月 アイテム別金額シェア)。アジアのみならず、19年10月から展開を開始した英米でも人気が高いという。この人気商品に加え、花王は新製品もブランドの中核に据え、グローバル展開にも拍車をかける狙いだ。

 グループのカネボウ化粧品を含め約50の化粧品ブランドを展開する花王は、18年にキュレルなど11ブランドをグローバル戦略ブランドに位置づけ、重点的に商品開発や宣伝・広告に資金を投じる戦略をとった。当初は中国などアジアでの展開にとどまったが、前述のとおり英米でも商品数を絞った販売を開始し好調だ。19年は26%だった海外の売上比率を、「継続的な商品提案と配荷・展開エリア拡大によって、25年までに約50%まで高めたい」(花王)という。

(写真提供/花王)